【ザック・バランスキー】Bリーグ開幕戦で気づいた勝利への強い飢え!
身体を張ったディフェンスや精度の高いアウトサイドシュートで、アルバルク東京の強さを支えるザック・バランスキー。9シーズンめでも違いを見せつけるクラッチシューターが、不退転の決意で臨んだ一戦とは⁉
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- アスリートの分岐点! vol.29
ZACK BARANSKI
TURNING POINT
2016年9月22日
B.LEAGUE開幕戦
VS 琉球ゴールデンキングス
自分がいるべき場所!
Bリーグ屈指の強豪にしてタレント集団でもある、アルバルク東京の主力を担うザック・バランスキー。泥臭いディフェンスや意表をつく3ポイントシュートを武器に、攻守で強豪の強さを支え続けている。そんなバランスキーのバスケ人生における大きな分岐点として脳裏に焼きついている試合は、2016年9月のBリーグ開幕戦。この試合は、それまでNBLとbjリーグに分かれていた日本の男子バスケリーグが統合されて誕生したBリーグの記念すべき初戦。NBLのレギュラーシーズン1位のアルバルク東京は、bjリーグ優勝チームの琉球ゴールデンキングスと対戦。歴史的頂上決戦ということもあり、平日でもチケットは完売。国立代々木競技場第一体育館を、1万人近い観客で埋めつくした。
「Bリーグ発足前のトヨタ自動車アルバルク東京では試合に絡めていたわけではなく、プレイイングタイムも限られていました。ケガをした選手の代わりに試合に出て活躍しても、その選手が復帰するとまた出られないといった状況で、自分はもっとやれるのにという思いが募っていた。Bリーグ初年度となったこの年に試合に絡めなかったら移籍を考えようと思ってもいました。これがアルバルク東京における最後の勝負の年だと考えていました。それくらい強い気持ちを持って入ったシーズンの初戦だったんです」
そんな強い決意を持って挑んだバランスキーは、攻守の両面でまわりを引き立てる現在のスタイルの片鱗を見せた。
「この試合ではたぶん、25分くらいのプレイタイムで出場していたと思います。この試合以降、シーズンを通してローテーションに入って試合に絡むことができるようになっていきました。自分にはそれくらいの実力があるという自信をつけることができましたし、アルバルクに残ってプレイしたいという気持ちがさらに強くなるきっかけにもなった。そういった意味で、大きな分岐点でした」
試合はアルバルク東京が持ち味のディフェンスの強さで琉球ゴールデンキングスに自由を与えず、オフェンスでも主導権を握る展開に。後半は3ポイントシュート攻勢で15点のリードを奪った。終了間際にゴールデンキングスが猛攻を仕掛け、75-78の僅差に迫ったが、冷静に対応したアルバルクがこれを凌ぎ、80-75で勝利。手に汗握る展開となったこの一戦は、“バスケの魅力が詰まった名勝負”として満員御礼の観客席を大いに沸かせた。
「やっぱり1万人近い人たちの前でプレイするという経験はそれまでになかったことで、あのときに見た景色は今でも鮮明に覚えています。代々木競技場第一体育館の客席を埋めつくす人たちの前で自分が活躍して歓声を浴びたときに湧き上がる感情は、それまでの人生で感じたことがなかったもの。そういったものを経験して、今まで努力してやってきてよかったと強く思えました。アスリートとして大きな舞台に立てることはすごく幸せなこと。それはすごく感じましたね。この試合は開幕戦だけど決勝戦みたいな雰囲気で、どちらも負けられない気持ちが前面に出ていました。見にきてくれた人もその熱量を楽しめた試合だったと思います。自分自身のプレイでは、それまで3ポイントシュートが強いイメージを持たれていませんでした。でも、この試合では迷わず打てて13点くらい取っていました。それがきっかけで3ポイントも全然やれるぞって前向きな気持ちを持てるようになりましたし、そのあたりももしかしたら監督が評価してくれたポイントだったのかもしれません」
現在、バランスキーは同じ東海大学出身の田中大貴に次いでチーム在籍期間が長く、9年めのシーズンを戦っている。
「コーチたちに助けてもらいながら、自分にはなにが求められていて、なにが必要なのかを常に考えてプレイし続けてきました。僕の場合は、スタッツに残らない部分が多い。それでも毎試合出られているということは、やはり理由があるし、それは自分の役割をまっとうしていることでもあると思っています。今シーズンから監督が代わったこともあり、コミュニケーションをよく取ります。そこで、自分が安定した活躍をしないとチームが崩れる、くらいのイメージを持ってプレイしてほしいといわれています。それは相手のクセがわかったうえでのディフェンスだったり、仲間を助けるプレイだったり。決して華のあるプレイヤーではないけれど、絶対に必要な選手としてチームの強さを支えていきたいです」
バスケットボール選手
ザック・バランスキー
ZACK BARANSKI
1992年、栃木県生まれ。4歳~10歳まで米国で過ごす。東海大第三高校(現東海大付属諏訪高校)を経て、東海大学では2年次と3年次にインカレ優勝。2015年にトヨタ自動車アルバルク東京(現アルバルク東京)加入。2017-2018シーズンのBリーグ優勝と翌シーズンの2連覇に貢献。
TAMURA'S NEW WORK
ユーピーエス
“ユーピーエス”は、世界220以上の国・地域で物流事業を展開する世界最大の運送業社。ビジネス向けのイメージが強いので今までと違ったアプローチでPRをしたいということで依頼を受けた。イラストを描くためにトラックや従業員の撮影も行われた。
誇り高く働く人や企業も誰かの“英雄”
今回の躍動感あふれる作品は、世界最大の運送業社“ユーピーエス”の日本法人からの依頼を受けて描いたもの。同社の企業カラーの“ブラウン”に彩られたトラック、そして制服をまとった従業員をアスリートと同様の躍動感あふれるタッチで描き下ろした。
「僕のSNSを見てくださっていたマーケティング担当の方からオファーをいただきました。“ユーピーエス”の従業員の方たちは、荷物を届けることの安全性に対する意識が非常に高いと聞きました。高いプロ意識を持って働く人、会社自体をヒーローとして表現しています。僕自身はアスリートを描かせていただくことが多いのですが、実はアスリートを含めた“ヒーロー”を描くことがアーティストとして軸にしているテーマなんです。高いプライドを持って働く人たちはやっぱり格好いいですよね。その気持ちが、誰かにとっての“英雄”でもあると思うんですよね」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは20万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram:@dai.tamura
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雑誌『Safari』3月号 P190~192掲載
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO