〈イゴラ〉の"スパゲッティ"
オープンから1年余りで、すっかり東京を代表する繁盛店の仲間入りをした〈酒井商会〉。都内から全国まで、時間を見つけて気になる店に足を運ぶという酒井英彰シェフが、今、最も注目するイタリア料理店とは!?
- SERIES:
- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.11
スパゲッティ赤ワインソース(3600円、2名分)
国内のイタリアンレストランではあまりお目にかかれない赤ワインのパスタ。ワインの風味が濃厚で、バターがまろやかな隠し味に。ラディッキオを加えるのがヴェネト風なのだとか。写真は2皿に取り分けた1皿分
オススメしてくれたのはこの人!
〈酒井商会〉坂井 英彰シェフ
筋の通った酒とつまみ。渋谷で希少な大人の店
酒井シェフの故郷である福岡県を中心とした九州産の食材を使った和の一品を、ナチュラルワイン、純米酒を軸に選び抜かれたお酒とともに。しつらえから器選びまで、酒井シェフのセンスが光る上質な空間、丁寧な中に遊び心を感じる独創的な味作りに、食通のファンも多い。
住所:東京都渋谷区渋谷3-6-18 荻津ビル2F x16:00~22:00L.O(土曜15:00~21:00L.O)
営業時間:16:00~22:00L.O(土曜15:00~21:00L.O)
休日:日曜、ほか不定休
TEL: 070-4470-7621
酒井シェフ
イタリアの情景が浮かぶ味に感動!
休日に家族とくつろいで、仕事終わりにスタッフとミーティングを兼ねて。外食に対するモチベーションは様々という酒井シェフだが、「オープンしたら、とにかくすぐに駆けつけたかった」と話すのが〈イゴラ〉。
「坂井シェフとは、僕が独立する前からの付き合い。同世代、同じ福岡出身、そして字は違えど"サカイ"同士ということで、不思議な連帯感があります(笑)」
はじめての訪問時、感動したのが"赤ワインのスパゲッティ"だと話す。
「飾り気のない料理ですが、野菜の火入れやバターの効かせ方など、どこか繊細なところが坂井シェフらしい。すすめられた赤ワインとの相性が素晴らしく、一緒に味わうと、イタリアのシンプルで豊かな食卓の情景が浮かぶようでした」
フルフラットのローカウンターを中心とした店内の居心地とセンスのよさも絶賛。"連帯感"抜きに"再訪したい店"リストに追加したという。
坂井シェフ
地味だけれど滋味深いイタリアの味
日本人にはあまり馴染みがないうえに、見た目も地味めなパスタをオンメニューしようと決めたのは、自身がイタリアでこのパスタと出合ったときの驚きを、伝えるため。
「こんなパスタがあるんだと。その後、いろいろと調べたり、先輩料理人に話を聞いたりして、赤ワインを使うパスタにもいろいろあると知りました」
ある州では唐辛子とローズマリーでアクセントを添えて、また別の州では、詰め物パスタのソースとして。
「自分は、やはり修業先のヴェネトのスタイルで。赤ワイン自体でパスタを茹で、バターとチーズで少しコクを加えています。ラディッキオが入るのも北イタリアのヴェネトらしいですよね」
いい食材を生かし、現地の伝統には忠実に。その中で、まだ知られざる料理を通じ、イタリアの食の奥深さを伝えていきたい。〈イゴラ〉という店に懸けるシェフの思いが伝わる一品だ。
Check1 食感豊かなパスタ
パスタはカンパーニャ州を代表する老舗パスタメーカー、ヴィチドーミニ社のもの。無農薬有機栽培のセモリナ粉が原料で、長時間乾燥で作るもちもちの食感と豊かな風味が格別!
Check2 赤ワインで火入れ
お湯で約1分、茹でてしんなりさせて、そのあとは赤ワインでパスタを"茹でる"というプロセスに移る。ソースとして絡める以上に、味がスパゲッティにしっかりと馴染んでいく
igora[イゴラ]
2019年8月、奥沢にオープンしたイタリア料理店。店主の坂井 務シェフは、都内のイタリア料理店で経験を積んだ後、北イタリアで1年半修業し、三軒茶屋〈ブリッカ〉などを経て独立を果たした。料理は6500円~のおまかせコースでも、アラカルトでも楽しめ、前菜からパスタ、メインディッシュまで、日本の旬の良質な食材とイタリアの郷土色が薫る料理がバランスよく用意されている。修業時代から、ナチュラルワイン生産者のもとへ足繁く通っていたという坂井シェフゆえ、料理と合わせたワインの提案も間違いなしだ。
ゆったりとしたカウンターが中心の店内
ワインはイタリアのナチュラルワインのほか、フランス・ジュラ地方のものもラインナップ
アジとジャガイモのテリーヌ3200円
オープンキッチンで腕を振るう坂井シェフ
●igora[イゴラ]
住所:東京都世田谷区奥沢6-22-10 ハルシェール自由が丘1F
営業時間:11:30~13:30L.O(木~日のみ)、18:00~22:00L.O
休日:水曜
TEL:03-5760-6176
雑誌『Safari』2月号 P200・201掲載
“名店メニュー”の記事をもっと読みたい人はコチラ!
photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki