こだわりは“魚の仕立て人”から! 江戸前鮨を楽しめる銀座〈鮨 門わき〉
銀座には数多くの鮨の名店がひしめき合っていて、良店を挙げればキリがない。そんな“銀座の鮨”のなかでも、2021年12月13日にオープンして以来、着実に評価を上げているのが〈鮨 門わき〉。
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- アレが食べたいからこの店へ! vol.71〈鮨 門わき〉
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- アレが食べたいからこの店へ! Gourmet Culture
店内の様子
銀座7丁目のモダンなビル6階に位置し、エレベーターを降りて引戸をくぐると、“つくばい”の水が流れる音に心が洗われる。静謐な調光の石畳の路地を進んで行くと、数寄屋造りの店内が登場。ぬくもりのある檜造りの白木カウンター10席で味わう鮨が、これまた格別。陶芸家である西隆行氏の有田焼や色絵の伊万里焼、趣のある織部焼など焼き物も目を見張る。
大将の門脇賢寿さん
大将を務めるのは門脇賢寿さん。出身地である東京都町田市の鮨屋で17歳から修業を始めて、江戸前寿司の原点を学んだ。親方の引退と共に渡米し、海外で経験を積んでから帰国。博多、対馬、大分、五島列島などの漁師や仲卸を自ら訪問し独自の仕入れルートを確立し、満を持して自身の店をオープンした。
旨味と食感がベストになる温度を見極め、“寝かせ”、“シャリ”、“温度”が一体となった鮨を握る。門脇さんの哲学を堪能できるのが“おまかせコース”(3万5000円)。
季節の前菜にはじまり、小鉢が3品ほど提供されてから、江戸前鮨が登場。15貫前後と味噌汁、玉子で完結する。
珠玉のメニューの中で、是非とも食べておきたいのが津本式究極の血抜きで処理をする“仕立て人”であり、鹿児島をホームとする“ジョ兄(ジョニイ)”さんから仕入れたネタ。全国各地の漁港から、一般流通が難しい規格外サイズのいい魚を選りすぐり、匠の技でしっかりと血抜きするので、びっくりするほど鮮度がよく、食味に優れている。門脇さんがその“神業”に惚れ込み、ジョ兄さんと関係性を築いて安定して仕入れることができるようになった。
そのジョ兄さんの魚を含む取材時のコースを紹介しよう。
“筍”
“鮑”
最初は旬を感じられる野菜を用いた“筍”。歯ざわりのいい筍とさわやかな芹を合わせた。“鮑”は、千葉県の黒鮑を大きく切り分けて、その弾力を存分に楽しむことができる。濃密な肝のソースが美味で、後半にはシャリ玉を入れてもらえるので、肝の佳味を食べ尽くすといい。
“毛蟹 紫雲丹”
“毛蟹 紫雲丹”は、ほぐした毛蟹の身に雲丹のソース、削った唐墨を取り合わせたという贅沢な前菜。毛蟹の潮の香りと雲丹の甘味、唐墨の塩味が渾然一体となり、添えられた木の芽が心地よいアクセント。
“鰹”
“真蛸”
“小肌”
門脇さんが好きなネタは“鰹”。この日の鰹は脂が乗りはじめた千葉県産。軽やかな味わいで、対馬産の塩でシンプルに品よく握った。三浦半島の佐島産“真蛸”はねっとりとしながらも、弾けるようなテクスチャー。豊洲市場で身質にこだわって選別した“小肌”は、注射器のような器具を血管に直に当てて流水で血抜きをしてから、2日間から4日間寝かせた。フレッシュな佳香に満ちていて、味わいにふくらみがある。
“蛤”
“本鮪とろ炙り”
炭を当てて炙る様子
“蛤”はオープン時から継ぎ足している蛤の出汁で丁寧に火入れした。甘いタレではなく、ほんの少しの塩でいただく。蛤の色気が感じられ、塩によって味わいに深みがもたらされている。燻香にうっとりさせられるのが、“本鮪とろ炙り”。有名な鮪仲卸“樋長”から仕入れた勝浦産の本鮪を、丁寧に炙って脂も適度に落ちている。
“車海老”
“目鯛”
“鰯”
“とり貝”
“車海老”はプリッとした仕上がりもさることながら、シュッとした握りで食べやすい。しっとりとした食感の“目鯛”、口溶け感のある“鰯”、コリコリっとして紐も添えられた“とり貝”と握りは続く。
“本鮪の漬け”
“ばふん雲丹”
“干瓢巻きの手巻”
“穴子”
“玉子”
まろやかに締めた“鯖”、三崎産“本鮪の漬け”、小丼にした“ばふん雲丹”の後は、中落ちと“干瓢巻きの手巻”。対馬の“穴子”、カステラのような“玉子”、シジミ出汁の上味が効いた“椀”で幕を閉じる。
門脇さん自身もお酒好きとあって、酒類のラインアップが素晴らしい。鮨にぴったりな日本酒はもちろん、シャンパーニュや各国のワインも充実。“各国のワイン”
最初にオーダーしたいのが“モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル”( 1万円/ハーフボトル、1万8200円/ボトル)。フレッシュでありながらもエレガントで、前菜からデザートまでどんな料理にも調和する。“常山 純米辛口 超”(2300円/グラス、4600円/1合)は青い果実のような、爽やかな香りがあり、奥行きのある味わい。あっさりとした白身魚と相性が抜群。赤ワインのおすすめはニュージーランドの“クラウディ・ベイ ピノ・ノワール”(2800円/グラス、1万2600円/ボトル)。上質でシルクのようなタンニンとジューシーな酸味があるので、どんなネタも寛容に包みこんでくれる。
銀座でますます耳目を集める〈鮨 門わき〉。門脇さんが握ったジョ兄さんのネタを是非とも試してみて!
●鮨 門わき
住所:東京都中央区銀座7-4-6 ACN銀座7ビルディング6F
営業時間:17:00~22:00(20:00LO)
定休日:日曜・祝日
TEL:050-5385-4750
URL:https://sushi-kadowaki.jp/
※サービス料別
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。