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2017.01.27


【Vol.26】『シスターズ・ブラザーズ』×サンフランシスコ

計算高く冷血漢の兄・チャーリーと、普段は心優しい青年だがキレると手がつけられない弟・イーライ。殺し屋を稼業とするシスターズ兄弟は、雇い主の提督からの殺害依頼でSFへと旅立つ。時は1851年。ゴールドラッシュに湧く西海岸で兄弟はなにに出遭い、なにを得て、そしてなにを失…

計算高く冷血漢の兄・チャーリーと、普段は心優しい青年だがキレると手がつけられない弟・イーライ。殺し屋を稼業とするシスターズ兄弟は、雇い主の提督からの殺害依頼でSFへと旅立つ。時は1851年。ゴールドラッシュに湧く西海岸で兄弟はなにに出遭い、なにを得て、そしてなにを失うのか?一攫千金の夢が人を狂わせる。当時のSFの様子にも注目の1冊だ!

一路ゴールドラッシュに湧くSFへ。殺し屋兄弟のアナーキーなロードノベル!

カリフォルニア発展の要因として無視できない事件がゴールドラッシュである。サクラメント北東のアメリカン川流域で1848年に砂金が発見され、およそ30万の人々がカリフォルニアに押し寄せた。特に翌’49年にカリフォルニアに向かった人が多かったため、彼らはフォーティナイナーズと呼ばれたが、その名はサンフランシスコのフットボールチームに残っている。この狂乱の時代を背景にした小説が『シスターズ・ブラザーズ』である。

時は’51年。主人公のイ—ライ・シスターズは兄チャーリーとともに殺し屋を稼業としており、オレゴン準州の提督から“SFにいるウォームという男を殺せ”という命令を受ける。ウォームは砂金採取に便利なあるものを発明したのだが、その秘密を提督に教えなかったために睨まれたのだ(という事情は、作品が進むにつれて明らかになる)。

2人はオレゴン・シティを馬で旅立ち、カリフォルニアに向かう。なにをやっても必ず失敗するという歯医者の診察を受けたり、魔女に呪いをかけられたりと、不思議な冒険をしながらの旅だ。砂金採取に向かう途中で一家離散した少年と出会うこともあれば、砂金で大儲けした横暴なホテル経営者と揉めることもある。この地域の多くの人々がゴールドラッシュの熱に浮かれていたのだろう。そう、この小説は史実と虚構をゴタマゼにした、愉快なエンターテインメントである。

シスターズ兄弟の個性の違いも小説の面白さのひとつだ。乱暴で酒グセの悪いチャ—リーに対し、イーライは女に惚れっぽく、生来のお人好し。鈍重なほうの馬を兄に押しつけられて不満タラタラだが、その馬が傷ついても見捨てずに面倒を見る。そして殺し屋稼業に嫌気がさしてきて、服屋を営もうかと考える。

カリフォルニアに入ると、彼らは空気の中にまで“活気と金儲けの匂い”を感じる。そしてSFに着き、マストが林立する港に興奮しながら、人々を狂わせる毒のようなものにも気づいていく。SFで出会った男はこの街が「すべての人間をだめにするんだ」といい、自殺した男の話をしてから、次のように続ける。「この街には、人間の心を腐らせてしまうなにかが潜んでいるのさ。一攫千金の夢が、狂気に変わってしまうんだ。にたにた笑いながら自殺したあの男は、SFというこの街で生きる全住民の心を、よく表わしていると思うね」(P228-229)

人間の貪欲さはいつの時代も変わらない。カリフォルニアはこのエネルギーで躍進したのである。一攫千金の夢で人々を誘う地は、今ならさしずめシリコンバレーだろうか。その後、兄弟はウォームを追って砂金の採取場に行き、彼と協力して採取に取り組むことになる。彼らもゴールドラッシュの熱に取り憑かれたわけだが、一方では提督の悪徳ぶりに気づき、殺し屋稼業から足を洗おうとしたのだ。2人にも過酷な運命が待っているが、ほのぼのとした結末には救われるはず。

今月の豆知識

夢のカリフォルニアはゴールドラッシュからはじまった!

1848年に砂金が発見されたことに端を発するゴールドラッシュは、メキシコとの領土争いが終わって間もないカリフォルニアを急成長させた。1846年に人口約200人の開拓地だったSFも、’52年には約3万6000人の新興都市に急成長。’50年にはアメリカ31番めの州となり、カリフォルニア中に道路や教会、学校および新たな町が建設された。

NFLの名門49ersの名称は金採掘の入植者が多かった年に由来!

ジョー・モンタナやスティーブ・ヤング、ジェリー・ライスなどの名選手を輩出し、スーパーボウルを5回制覇している名門。チームカラーのひとつであるゴールドは、ゴールドラッシュに由来する。SFから約70km南のサンタクララに新設されたホームスタジアムのリーバイス・スタジアムでは昨年のスーパーボウルが開催され、全米の注目を集めた。

本作で賞レースの主役となった著者のパトリック・デウィット!

1975年、カナダ・バンクーバー出身。皿洗いやバーテンダーなどの職を経て、『みんなバーに帰る』で作家デビューを果たす。2011年に発表した本著は、世界的に有名なイギリスの文学賞・ブッカー賞の最終候補作に選出されたほか、カナダで最も権威があるとされる総督文学賞など四冠を制覇。日本では各種の年末ミステリベスト10入りを果たした。

●『シスターズ・ブラザーズ』

パトリック・デウィット 著
茂木健 訳 東京創元社 1200円


雑誌『Safari』3月号 P199掲載

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文=上岡伸雄 text : Nobuo Kamioka
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