【まとめ】まさかのエンディングに驚愕!
どんでん返し映画70本!
映画の醍醐味といえば先の読めない展開。それを極めた55作品をご紹介。視聴の際は、ラストまでじっくりとお楽しみください!
結末の予測が不能な代表作!
『ユージュアル・サスペクツ』
製作年/1995年 監督/ブライアン・シンガー 出演/ガブリエル・バーン、ケヴィン・スペイシー
密輸船が爆破され、多額の現金と麻薬が消え去る事件が発生。唯一の生存者は、船の襲撃を指示された詐欺師ヴァーバルだった。警察がヴァーバルの尋問を行う中、ヴァーバルが犯罪者仲間4人とともに船を襲撃したこと、その襲撃を命じたのが正体不明のギャング、カイザー・ソゼであることなどが浮かび上がり……。物語は尋問を受けるヴァーバルが、密輸船爆破事件が起こるまでの過程を回想する形で進行。この回想がキーポイントとなっているのだ。
<ここからネタバレ>
話を聞き終えた警察は、ヴァーバルの犯罪者仲間の1人をカイザー・ソゼと断定。しかし、ここからが大ドンデン返し。取調室を後にし、街に消えたヴァーバルこそがカイザー・ソゼだと分かる。なぜならヴァーバルは、取調室にある書類やマグカップに書かれた文字を拝借して、嘘の供述を延々と話していたというわけ。警察は見事にそれを信じ、騙されていたというオチだ。
人間の本質を鋭く斬った物語に唸る!
『ファイト・クラブ』
製作年/1999年 監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/エドワード・ノートン、ブラッド・ピット
不眠症に悩むエリート会社員の“僕”は、出張中の機内で謎の男タイラー・ダーデンと出会う。互いを殴り合うことで自己を解放し、生きる実感を得るようになる。そんな2人のもとにやがて大勢の男たちが集結。秘密組織ファイト・クラブが結成され、地下室でのファイトが展開されるようになるが……。
<ここからネタバレ>
肉体的な痛みやタイラーへの友情を通して“僕”が自分を取り戻していく中、事態は“僕”の思惑からそれた方向へと転がっていく。タイラーは“僕”を蚊帳の外に置きはじめ、ファイト・クラブの面々と何やらよからぬ企みをするようになる。しかし、ある出来事をきっかけに、あれほど憧れていたタイラー・ダーデンは、実は“僕”自身が作り出した産物だと判明。ファイト・クラブを設立したのも、仲間とともに何かを企てていたのも、要はタイラーは自分自身だったのだ。患っていた不眠症も、会社員としての働く以外に、実はタイラーとして“僕”がレストランなどで働いていたせい。さらに、タイラーとの殴り合いも自分で自分を殴っていただけのことだったのだ。
恋路も絡んだドンデン返し!
『鑑定士と顔のない依頼人』
製作年/2013年 監督・脚本/ジュゼッペ・トルナトーレ 出演/ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス
美術鑑定士のヴァージルは友人の画家ビリーと共謀し、オークションで美術品を不正に落札する日々。そうして集めたコレクションを、ヴァージルは隠し部屋に飾って愛でていた。そんな中、ヴァージルは資産家令嬢のクレアから美術品競売の依頼を受ける。女性に接するのが苦手なヴァージルと、広場恐怖症で自室に引きこもるクレア。だから、鑑定士と依頼人でありながら顔を合わせたことのない2人。しかし、満を持して出会うと、たちまち恋に落ちるのだ……。
<ここからネタバレ>
偏屈で、女性に免疫のない男の一世一代のラブストーリー……と思いきや、実は哀しすぎぎる大ドンデン返し映画へと発展。クレアの目当てはヴァージルの秘蔵コレクションで、彼を巧妙に騙していたのだ。しかも、クレアの黒幕はなんとヴァージルの相棒だったビリー。画家としての自分を認めてもらえないビリーは、実はヴァージルに長年の恨みを募らせていたというわけ。
エドワード・ノートンに圧倒される!
『真実の行方』
製作年/1996年 監督/グレゴリー・ホブリット 出演/リチャード・ギア、エドワード・ノートン
カトリックの大司教が惨殺され、現場から血まみれで逃走した聖歌隊の青年アーロンが容疑者として逮捕される。金儲け第一主義で目立ちたがり屋の敏腕弁護士マーティンは、無償でアーロンの弁護を行うことに。無実かどうかは関係ない。裁判に勝てばそれでいい。そう考えていたマーティンだったが、か弱いアーロンの無実を徐々に信じはじめ……。
<ここからネタバレ>
裁判が進む中、大司教がアーロンら聖歌隊員に性的虐待を行っていた事実が発覚。そこにこそ死の真相が隠されていると察知したマーティンは、アーロンを問いただす。追い詰められたアーロンは攻撃的な態度に豹変し、大司教の殺害を告白! アーロンは二重人格障害者で、彼の中には気弱な人格と攻撃的な人格が混在していた…。
無関係な話がつながる快感と終わらないスリルが味わえる!
『アイデンティティー』
製作年/2003年 監督/ジェームズ・マンゴールド 出演/ジョン・キューザック、レイ・リオッタ
ある死刑囚が多重人格障害を疑われ、死刑執行前夜に再審理が行われることに。一方そのころ、とある寂れたモーテルでは、運転手のエド、娼婦のパリスら男女11人が大雨により足止めされていた。しかも、11人が1人、また1人と何者かに殺される事態が起きる……。
<ここからネタバレ>
無関係に思えた物語と物語が、あるシーンを境にドッキング。モーテルの11人は、死刑囚の中にいる“人格たち”だったことが判明。この構成とドンデン返し感が見事で、一緒に観た彼女も口を開けてあんぐりすること必至! しかも、この作品が秀逸なのは、構成の妙が浮き彫りになった後もスリル感が続くこと。死刑囚の刑執行を回避するため、彼の中に多数いる人格たちは「殺人者の人格は誰なのか?」を突き止めなくてはならない。実は、その過程にも第2の大ドンデン返しが潜んでいるわけで……。さすがにオチは伏せておくが、数あるドンデン返し映画の中でも非常に巧妙。
想像すらできない突然の結末にビックリ!
『女は二度決断する』
製作年/2017年 監督・脚本/ファティ・アキン 出演/ダイアン・クルーガー、デニス・モシット
ドイツで平穏な暮らしを送っていたカティヤだが、トルコ系移民の夫と6歳の息子が爆発事件の犠牲になって命を落としてしまう。カティヤは絶望して自殺を図ろうとするも、ネオナチの夫婦が事件の容疑者であることが発覚。やがて彼女の心は、復讐に傾いていくという、背筋が凍るサスペンスだ。ヨーロッパでの移民排斥というリアルな社会問題を背景に、人間の絶望や怒り、復讐の心理に引き込んでいく骨太な作り。
【ここからエンディングのネタバレ】
容疑者夫婦のキャンピングカーに侵入したカティヤは、彼らを道連れに爆発装置を使って自爆! 復讐を果たしたとはいえ、ヒロインが死ぬという結末に呆然としてしまう。
惨劇のプロムパーティの後が衝撃!
『キャリー』
製作年/1976年 原作/スティーヴン・キング 監督/ブライアン・デ・パルマ 出演/シシー・スペイセク
クラスメイトからいじめを受ける女子高生のキャリー。テレキネシス(触れずに物体を動かす念動能力)を自覚した彼女が、自分をバカにした者たちを悲惨な末路へと導いていく。体育館でのプロムパーティの惨劇シーンは、ホラー映画の歴史でも語り草になった。
【ここからエンディングのネタバレ】
母も殺し、自宅を燃やして自らも命を落としたキャリー。生き残ったクラスメイトのスーがキャリーの墓に花を手向けた瞬間、地中から腕が出てきてスーを掴む! スーの夢なのだが、静かな時間が地獄と化す恐ろしさ。
クライマックスに深〜い絶望が待ち受ける!
『ミスト』
製作年/2007年 製作・監督/フランク・ダラボン 出演/トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン
郊外の静かな町を突然、嵐が襲う。その翌日に発生した深く濃い霧が、やがて町全体を覆ってしまう。何も見えない状況になり、パニックになる人々がスーパーマーケットに逃げ込むという物語。どうやら霧の中には、不気味な生物が潜んでいるらしく、スーパーに立てこもった人々の決死のサバイバルが展開する。
【ここからエンディングのネタバレ】
スーパーマーケットから逃げた主人公のデヴィッドは、もう逃げ切るのは無理と判断し、同行の息子や仲間を射殺。自分も怪物の餌食になろうと決心するが、霧がしだいに晴れていく。すると軍隊が怪物を退治したことが発覚! あと少し、決断が遅ければハッピーエンドだったのに……という悲痛な結末に。
殺人ゲームで生き残った後に最大のショックが!
『SAWソウ』
製作年/2004年 原案・監督/ジェームズ・ワン 出演/ケイリー・エルウィズ、ダニー・グローバー
薄汚れたバスルームで目を覚ましたゴードンとアダム。2人は部屋の両端で、足首を鎖で繋がれており、真ん中には拳銃で頭を撃たれた死体が横たわっていた。やがて「6時間以内に目の前の相手を殺すか。2人とも死ぬか」というメッセージが届き、想像を絶するゲームがスタートするのだが……。ありえないシチュエーションで精神的に追い詰められる2人の心理劇に、レコーダーや携帯電話、タバコ、ノコギリといった小道具を使った攻防。つねに予想を裏切って進む状況とタイムリミットが、観ているこちらの心臓をバクバクさせ続ける。
【ここからエンディングのネタバレ】
足の鎖を外したいゴードンが、自分の足をノコギリで切断するシーンでまずショックを与え、その後、横たわっていた死体がゲームを仕掛けたジグソウだと発覚。犯人がずっと現場にいたというオチに誰もがびっくり!
“衝撃のラスト”といえば、こちらが代表作!
『シックス・センス』
製作年/1999年 監督・脚本/M・ナイト・シャマラン 出演/ブルース・ウィリス、ハーレイ・ジョエル・オスメント
ブルース・ウィリスが演じる小児精神科医のマルコムが、ある悩みを抱えたコールという少年と出会う。コールには「死者が見える」能力があり、そのせいで周囲から白い目で見られているという。医師の立場からコールの苦悩を和らげようとするマルコム。そんな彼自身も、妻など身近な人との心のすれ違いを経験していた。本作のオチは今ではあまりに有名だが、そのオチを知ってもう一度観直すと、より作品の魅力が伝わってくるのでオススメ。
【ここからエンディングのネタバレ】
マルコムはすでに死んでいた。だから実生活で妻などに見向きもされず、死者が見えるコール少年とはコミュニケーションが可能だったのだ。地上をさまよっていたマルコムの魂は、少年との出会いにより、ようやく天国へと向かうことに。
突拍子もないトリックに呆然!
『プレステージ』
製作年/2006年 監督・脚本/クリストファー・ノーラン 出演/ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール
主演の2人がヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールというのも、今作の魅力。育ちが良く、実直型のアンジャーがヒューで、奇抜な発想の天才型のボーデンがクリスチャンなのも、これまた適役だ。アンジャーの妻が脱出マジックで命を落とし、その原因がボーデンであったことから、両者の確執と、マジシャンとしてのライバル関係は激化。しかし、アンジャーの瞬間移動マジックを調べていたボーデンの目の前で、なんとアンジャーは水槽で溺死。ボーデンが殺人容疑で逮捕されてしまう。
【ここからオチ&トリック】
アンジャーの瞬間移動には、電気の技術を使って“自分を複製する”という驚きのテクニックが使われていた。さらにボーデンの死刑執行の日に、アンジャーが何者かに銃撃され、その相手がボーデン……と思ったら、双子の弟だった。ボーデンは双子でマジックをやっていたという、突拍子もないトリックが判明。
謎の暗号を、どう読み解く!?
『ダ・ヴィンチ・コード』
製作年/2006年 監督/ロン・ハワード 出演/トム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケラン
パリのルーヴル美術館の中で館長ソニエールが殺害される。その被害者自身が死の間際に、床に暗号らしきメッセージを残していた。宗教象徴学の権威であるラングドン教授が、ソニエールの孫娘ソフィーとともに、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画に隠された秘密や、キリストの聖杯の謎から、事件の核心に迫っていく
【ここからオチ&トリック】
ソニエールはカトリック教会ではタブーである秘密を受け継いできたために犠牲となった。ダ・ヴィンチの名画“最後の晩餐”でキリストの隣にいるのは使徒ヨハネとされてきたが、実はこれが女性で、2人は子供をもうけ、その血を受け継ぐ者がソフィーだった。
騙される快感を味わえる!
『マッチスティック・メン』
製作年/2003年 製作・監督/リドリー・スコット 出演/ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル
主人公は詐欺師のロイ。潔癖症で外出は苦手という変わり者だ。別れた妻との間に生まれ、まだ会ったことのなかった14歳の娘アンジェラと初めて面会したところ、意気投合。アンジェラも父の仕事に興味をもつ。物語のメインとなるのは、ロイと相棒のフランクによる、大金持ちを標的にしたかつてない詐欺計画。しかしロイは何者かに殴られて気を失い、自身の貸金庫から大金が消えてしまう。気がつけば、警察から尋問を受けていた……という急展開。
【ここからオチ&トリック】
すべて相棒のフランクが仕組んだ罠で、アンジェラも彼の仲間。ロイの実娘のフリをしただけで、年齢も14歳ではなく21歳だった。ロイと生活した彼女は、貸金庫の暗証番号も盗み見していた。ロイから悩みを聞いた精神科医もフランクの仲間。
驚愕レベルのオチが待ち受ける!
『オリエント急行殺人事件』
製作年/2017年製作 製作・監督・出演/ケネス・ブラナー 出演/ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー
大雪のため山の中で停車したオリエント急行で、大富豪のラチェットが殺害される。遺体にはいくつもの刺し傷があった。彼は脅迫状を受け取っており、たまたま列車に乗り合わせていた名探偵エルキュール・ポアロに相談をもちかけていた。やがて列車のほかの乗客たちとラチェットの関係が明らかになっていき、ポアロが誰の犯行なのかを推理していく。犯人像にあれこれ想像力がはたらくが、まっさらな知識で観たら、そのオチはかなり驚愕のレベルでは?
【ここからオチ&トリック】
ラチェットは少女誘拐事件の犯人で、その恨みを晴らしたい者たちが集合。乗客12人が“ひと刺し”ずつ復讐を果たした。犯人が逃げたように細工するなど、多くのトリックが仕掛けられたが、列車にポアロが乗ったのは誤算。睡眠薬や声色、ほかの人物の服で廊下を歩くなど追加のトリックも駆使された。
完璧な妻の隠された素顔にびっくり!
『ゴーン・ガール』
製作年/2014年 監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/ベン・アフレック、ロザムンド・パイク
誰もがうらやむような美男美女の夫婦だが、妻が突然の失踪。室内には何者かと争った形跡があり、大量の血が拭き取られたことも発覚。殺人事件として捜査が始まり、世間の疑惑の目は夫に向いていく。ギリアン・フリンの小説(実話もヒントにされている)を、『セブン』などの鬼才、デヴィッド・フィンチャー監督が映画化。基本は妻失踪の謎を探るサスペンスなのだが、結婚生活を巡る人間ドラマ、さらにブラックコメディのテイストも濃厚で、心を激しくざわめかせる作品だ。
【ここから驚愕のラスト】
夫を殺人容疑者に仕立て、嘘を塗り固めて戻ってきたエイミーを、結局、ニックは受け入れる。エイミーが自分との子供を身ごもったとはいえ、食虫植物に自ら捕まる昆虫のように、悪女との生活に身を委ねるニック。これも男の本能か!?
音楽祭のステージでまさかの展開!
『セッション』
製作年/2014年 監督・脚本/デイミアン・チャゼル 出演/マイルズ・テラー、J・K・シモンズ
一流のジャズドラマーをめざし、名門の音楽学校へ入学したアンドリューが、生徒から恐れられる教師のフレッチャーに目をつけられ、厳しい指導を受けて精神的にも追い詰められていく。鬼教師と有望な生徒の関係が、まるでスポ根ドラマのような熱さで展開。
【ここから驚愕のラスト】
音楽祭のステージで、指揮者のフレッチャーに予定外の曲を無茶ぶりされ、アンドリューは観客の前で失態。しかし再び舞台へと引き返し、魂のこもった名演奏を披露。フレッチャーも平伏させる。
機内で娘が行方不明、けど誰も見ていない!?
『フライトプラン』
製作年/2005年 監督/ロベルト・シュヴェンケ 出演/ジョディ・フォスター、ピーター・サースガード
主人公は航空機の設計士であるカイル。事故で亡くした夫の棺、そして6歳の娘とともに、ベルリンからNYへの飛行機に乗った。しかし離陸して3時間。隣に座っていたはずの娘が姿を消す。パニックになるカイルに対し、乗客・乗員とも「娘なんて見ていない」と話し、搭乗記録にも娘の名前が存在していないと報告される。
【ここから驚愕のラスト】
カイルが眠っている間に娘は機内の機械室に連れ込まれていた。その犯人は、カイルの夫を殺したうえ、棺に爆弾の起爆装置を仕掛け、カイルをハイジャック犯に仕立てようと、周囲に策略をめぐらせていたのだ。乗客が空港に避難した後、主犯は機内で爆死させられる。
不可解エピソードの連続で先が読めない!
『ドニー・ダーコ』
製作年/2001年 監督・脚本/リチャード・ケリー 出演/ジェイク・ギレンホール、ドリュー・バリモア
精神カウンセリングを受ける高校生のドニーの前に、10月2日の夜、銀色のウサギが現れ、世界の終わりを予告する。翌朝、ドニーはゴルフ場で目を覚ますが、自宅に戻ると彼の部屋は、なんと墜落した飛行機のエンジンの一部で破壊されていた……。銀色のウサギの被り物をした男の正体や、放火などドニーが起こす数々の事件、そして周囲の人の死など、とにかく衝撃で不可解なエピソードが連続し、なかなか真相が見えない。飛行機のエンジンは未来から来たもの。その飛行機にはドニーの母と妹が乗っていた。ドニーは時間をコントロールして、その危機を回避させようとするのだが……。この作品の解釈は人それぞれ。ゲームのように楽しむのも、ひとつの手だ。
【ここから驚愕のラスト】
自分が10月2日を生き延びると、まわりの人が死んでしまうと知ったドニーは、時を戻し、自分が死ぬことを受け入れてベッドに横たわる。しかも笑い転げながら……。
繰り返し鑑賞して伏線を回収してみて!
『シャッター アイランド』
製作・監督/マーティン・スコセッシ 出演/レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングズレー
孤島のアッシュクリフ精神病院から、収容患者の女性が姿を消すという事件が発生。連邦捜査官のテディが相棒のチャックと捜査を始めると、病院全体が密かに進める実験など危うい事実が明らかになっていく。激しい嵐が不安感を高めるなか、病院の院長をはじめ登場人物の言動がいちいち謎めいていたり、テディの隠れた目的が発覚したりと、観る側の意識をどんどん混乱に導く。
【ここから驚愕のラスト】
じつはテディは、妻を殺害し、アッシュクリフ精神病院に収容された患者だった。その現実を受け止めきれない彼は、自分は捜査官という妄想の世界を創造していたのだ。病院側も治療の実験でテディの“捜査官役”を認めていた。
時代を超えた電話が過去を変える!
『ザ・コール』
製作年/2020年 監督・脚本/イ・チュンヒョン 出演/パク・シネ、チョン・ジョンソ 配信/ネットフリックス
物語の始まりは、2019年。20年前に父親を火事で亡くした女性ソヨン(パク・シネ)が、いまや無人となった実家を訪れることに。スマホを失くしたソヨンは仕方なく、家の物置にあったコードレス電話を使おうとする。すると、電話の向こうからは見知らぬ女性の声が。その女性が生きている時代は1999年で、ソヨンが今いる家で暮らしているらしい。不可思議な現象に戸惑いながらも、電話の女性ヨンスク(チョン・ジョンソ)とソヨンは、時を超えた会話を通して距離を縮めていく。
【ここからネタバレ!】
そもそも、過去と未来を結ぶ物語では、ままならない現実が意地悪く突きつけられがちだ。『ザ・コール』も例外ではなく、過去にいるヨンスクは当初こそ未来にいるソヨンのため、しだいに自分のため“歴史の改変”に手を染めていくのだが、本作が恐ろしく、またユニークなのは改変するヨンスクが狂気の殺人鬼であるところ。敏感に一転二転する事態が悪夢のように、暴走するヨンスクと彼女を食い止めようとするソヨンの戦いへと変化していく展開が見事だ。
事件が解決したと思ったら、その先があった!
『ワイルドシングス』
製作年/1998年 監督/ジョン・マクノートン 出演/ケヴィン・ベーコン、デニス・リチャーズ、マット・ディロン
ハイスクールで心理カウンセラーを務めるイケメンの教師サムが、裕福な家の女生徒ケリーにレイプされたと告発される。追い打ちをかけるように、ほかの女生徒スージーも、彼にレイプされたことがあると証言。だが、法廷でそれらが狂言であったことが判明。サムはケリーの母から莫大な示談金を得て街を去る。ところが、これは彼とケリー、スージーが組んだ大芝居だった。彼らの結託を疑っていた刑事レイは、真相を追って奔走する。
【ココからネタバレ】
3者の結託が判明するのはホンの小手調べで、どんでん返しはさらに続く。レイが動いていることに動揺したスージーは口封じのために殺され、その犯人と見られたケリーもレイに射殺される。これもすべて仕組まれたことで、サムとレイは手を組んでいた……と思いきや、真の黒幕が後に発覚! これぞ正しい二転三転で、マット・ディロンやケビン・ベーコンらクセ者俳優たちの妙演も相まって、最後の最後まで目が離せない!
美女の救出劇は現実?
『未来世紀ブラジル』
製作年/1985年 監督・脚本/テリー・ギリアム 出演/ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ
舞台は体制が人々の情報を掌握している管理社会。情報省の小役人サムは、このところ自身が騎士となり、美女を助ける不思議な夢を頻繁に見るようになっていた。そんなある日、夢の美女とそっくりの女性ジルと遭遇。犯罪者となり当局に追われている彼女を、サムは情報改ざんにより助けようとする。
【ココからネタバレ】
ジルを無罪にして一度は結ばれるも、情報省に逮捕され、拷問されるサム。そのとき、彼と旧知の非合法の配管修理人が省を襲撃。救出されたサムはジルとともに逃げ切ってハッピーエンド……と思いきや、物語は拷問室に戻り、救出劇は廃人と化したサムの妄想であったことが判明する。救いのないエンディングだが、この衝撃こそがギリアムの目指した痛烈な社会風刺。アメリカではテレビ放映時、拷問室に戻る前で終わるハッピーエンド・バージョンも作られたが不評だったという。
少女エスターの本性とは!?
『エスター』
製作年/2009年 監督/ジャウム・コレット=セラ 出演/ベラ・ファーミガ、ピーター・サースガード
3人めの子供を流産したことから情緒不安定に陥った妻ケイトのために、夫のジョンは新たに養子を迎える。孤児院から引き取られた、その子供、エスターは聡明で礼儀正しい9歳の女の子だった。しかし、首と手首に巻かれたリボンを決して外そうとしない。やがてケイトは彼女の挑発的な態度を気にしはじめるが、夫は気のせいと取り合おうとしない。さらにエスターの不審な行動はエスカレートし、ジョンとケイトのふたりの実子を脅迫。さらには孤児院から様子を見に来たシスターを殺害してしまう……。
<ココからネタバレ>
その後、エスターはあろうことか、ジョンを誘惑するという9歳の少女とは思えない驚くべき行動に出る。ここで明らかになるのは、難病のために身体の成長が止まってしまったエスターが、実は33歳であったこと!あどけない顔をしながら、手段を選ばずほしいものを手に入れようとする彼女の狂気に、戦慄を覚えずにいられない。ちなみにエスターを演じたイザベル・ファーマンは本作の撮影時は11歳の子役だったか、その怪演は鮮烈!
若き富豪が手術中に知った事実とは!?
『アウェイク』
製作年/2007年 監督・脚本/ジョビー・ハロルド 出演/ヘイデン・クリステンセン、ジェシカ・アルバ
実業家だった亡き父から大企業を継ぎ、前途洋々と思われている青年クレイトンの悩みは、恋人サムとの結婚を、厳格な母が許してくれそうにないこと。そして心臓に疾患があり、移植手術が必要なことだった。ある日、ドナーが見つかり、母に内緒で挙式した新妻サムに付き添われて、クレイトンは緊急入院。ところが、全身麻酔が完全には効かず、彼は全身がまったく動かないまま意識だけははっきりする“術中覚醒”の状態に。手術の激痛に苦しみつつ、彼は医師たちの会話から、驚くべき事実を知ってしまう。
<ココからネタバレ>
実は手術の担当医は、仲間の医師や看護師とともに、手術の失敗を装ってクレイトンを殺害する計画を立てていた。しかも、この計画にはサムも加担していた! すべてはクレイトンの莫大な遺産を狙っての犯罪計画だったのだ。絶体絶命のクレイトンの運命は!? 一見、悪役とは思えないジェシカ・アルバをサムに配役したのは、まさにキャスティングの妙!
詐欺師と資産家、どちらが騙せる?
『グッドライアー 偽りのゲーム』
製作年/2019年 原作/ニコラス・サール 監督/ビル・コンドン 出演/ヘレン・ミレン、イアン・マッケラン
舞台は現代のロンドン。腕利きの老詐欺師ロイは、投資話を持ちかけては標的の財産を根こそぎ奪う達人。資産家の未亡人ベティに接近した彼は、紳士的な態度で彼女の信用を勝ち得て、恋の相手を演じ続けることに。警戒心の強いベティの孫はロイを信用せず、その存在はロイの計画の邪魔になる。しかし彼に惚れていたベティは全財産を、ロイの仲間の投資コンサルタントに預けることに同意した。しかし、その後事態は予期せぬ方向へ……。
<ココからネタバレ>
ロイが実は英国人ではなく、第二次大戦で戦死した英国兵になりすまして渡英したドイツ人であったことが判明。それでもベティは彼を受け入れるが、彼女も実はナチス政権下を生き抜いたドイツ人だった。若き日の彼女は自分をレイプし、一家を破滅に導いたロイへの復讐の機会をうかがっていたのだ……。
監禁された衝撃の理由とは!?
『オールド・ボーイ』
製作年/2003年 監督・脚本/パク・チャヌク 出演/チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・へジョン
ある日突然、何者に誘拐され、15年にわたり監禁された、平凡な会社員デス。解放された後、犯人への復讐を誓った彼はその正体を探る一方で、偶然知り合った若い女性ミドと恋に落ちていく。犯人は意外にあっさり判明したが、この男はミドを盾に取り、監禁した理由を突き止めることを要求。やがてデスが行き着く、衝撃の真実とは!?
【ココからネタバレ】
タイトルの“オールド・ボーイ”とは同窓生の意味。犯人は高校時代のデスの同窓生で、高校の頃に実の姉と愛し合っていたことをデスに知られ、それが言いふらされたことにより、姉は自殺していた。15年に渡るデスの監禁は、これに対する復讐。しかし、それははじまりに過ぎなかった。デスとミドが出会ったのも、実は犯人の差し金。デスもミドも知る由もなかったが、彼らは実の親子だったのだ……。
失踪事件の結末に震える!
『search /サーチ』
製作年/2018年 監督・脚本/アニーシュ・チャガンティ 出演/ジョン・チョウ
すべての映像がPCの画面上で展開するユニークなスリラー。16歳の少女マーゴットが突然、失踪した。シングルファーザーである父デビッドは彼女のPCにログインして何が起きたのかを探る。SNSをたどって明らかになる、朗らかだった娘の、孤独を募らせていた裏の顔。彼女は犯罪に巻き込まれたのか? 捜査に当たる女性刑事はシングルマザーで、似た境遇のデビッドに同情しつつ奔走。やがてマーゴットを殺したという男が罪を告白した後、みずから命を断ち……。
【ココからネタバレ】
マーゴットはハンナと名乗る女性とネットを通じて親しくなっていた。しかし、ハンナはある人物がなりすましていたキャラクター。その正体は、なんと女刑事の息子だった! この青年はマーゴットが失踪した当日、彼女と会っており、正体を偽っていたことや金銭のやりとりの件で揉めたあげく、彼女を渓谷に突き落とす。女刑事はそんな息子をかばうため、デビッドに嘘を報告し、別の犯人をでっちあげていた……。我が子を思うデビッドの真相追及の旅は、我が子を思う女刑事の悪事を明らかにすることになる……という構図。
二転三転する結末は予想不可能!
『閉ざされた森』
製作年/2003年 監督/ジョン・マクティアナン 出演/ジョン・トラボルタ、コニー・ニールセン、サミュエル・L・ジャクソン
米軍パナマ基地近くの密林で特殊訓練を行なっていたレンジャー部隊7名が消息を絶ち、2名が捜索隊に発見された。隊を率いていた軍曹に加え、ほかのメンバーは行方不明。真相究明のために陸軍大佐が白羽の矢が立てたのは、尋問を得意とする元軍人で、現在は謹慎中の麻薬捜査官トム。正義感の強い基地の女性捜査官ジュリーとともに生存者2名の尋問に当たった彼は、証言の食い違いを調べるうちに、部隊が麻薬の密売に関わっていたことを突き止める……。
【ココからネタバレ】
第8特殊班と呼ばれる麻薬密輸チームの黒幕をめぐり、物語は二転三転。最初は基地内の医師がそうかと思われたが、トムを雇った大佐こそが黒幕と判明。トムを殺そうとした大佐をジュリーが射殺して一件落着……のはずだったが、裏にはさらなるからくりが。大佐は基地内の麻薬密輸網を暴くために特殊訓練を命じ、その一員らしき軍曹の殺害を隊員に命じたに過ぎなかった。黒幕の正体は、実はトム! 捜査を装い、第8特殊班を守っていたのだ。このオチは、さすがに予想できない。
どんでん返し映画の不朽の名作!
『猿の惑星』
製作年/1968年 原作/ピエール・プール 監督/フランクリン・J・シャフナー 出演/チャールトン・ヘストン、キム・ハンター、モーリス・エバンス
多くの観客に愛され、シリーズ化やリメイク、リブートがなされてきたSF映画の名作中の名作。はるか未来、宇宙でのミッションを終えたテイラー大佐は機の故障により未知の惑星に不時着。そこは言葉を話し、高度な知能を持つサルが人間を支配する世界。サルたちは言葉を話すテイラーを脅威とみて拘束し、虐げる。しかし、サルの科学者夫妻と心を通わせたテイラーは、彼らの協力を得て脱走を画策し……。
【ココからネタバレ】
本作のドンデン返しは、あまりに有名なラストシーンに尽きる。サルの社会から脱走し、言葉を話せない人間の女性ノバとともに海岸線にたどり着いたテイラーは、そこで信じられない光景を目にする。崩れ落ちた自由の女神像――そう、ここは未知の星ではなく、未来のNY、つまり地球だったのだ。文明を滅ぼしかねないほど暴走する、そんな人間の愚かさを痛烈に風刺した名シーンでもある。
飲まされていた薬の正体とは!?
『RUN /ラン』
製作年/2020年 監督・脚本/アニーシュ・チャガンティ 出演/サラ・ポールソン、キーラ・アレン
主人公のクロエは慢性の病気で車椅子生活を余儀なくされているハイティーンの少女。学校に通っていないが勉強熱心で、大学生活に夢を馳せている。唯一の家族である母親ダイアンは、彼女に惜しみない愛情を注いでいた。そんなある日、クロエは母があたえる薬に疑念を抱き、調べてみると、それは人間に処方してはいけない薬品だった。日増しに深まる母への疑惑。そんな娘の異変に、ダイアンは気づき……。
【ココからネタバレ】
ダイアンは実はクロエの実母ではない。出産時に赤子を死なせた彼女は絶望の中で、院内の赤子をすり替え、自分の子=クロエとして育てていた。しかも、完全に自分の保護下に置くために、病弱であると言い聞かせながら体によくない薬をあたえ続けていたのだ。大学に進学させる気も、さらさらない。毒母と呼ぶにふさわしい、母親の壮絶な独占欲に戦慄!
屋敷に暮らす家族の秘密とは?
『アザーズ』
製作年/2001年 監督・脚本/アレハンドロ・アメナーバル 出演/ニコール・キッドマン
物語の舞台は、第2次世界大戦直後のジャージー島。出征した夫の帰りを待ちながら、広い洋館で娘と息子とともに3人で暮らすグレース(キッドマン)。子供たちは光にアレルギーがあるため、カーテンは日中も閉め切られたまま。そんな屋敷に3人の使用人が現れるが、その日を境に不可解な現象が起きはじめ……。
<ここからネタバレ>
光から子供たちを守ろうとする神経質な母グレース、どこか怪しげな使用人たち、帰って来る気配のない夫……。直接的なホラー描写はなく、ただただ充満する不穏な空気がスリルとなって押し寄せてくる作品だが、ラストではグレースと子供たちがすでに死者であると判明。
月に派遣された男の正体とは?
『月に囚われた男』
製作年/2009年 原案・監督/ダンカン・ジョーンズ 出演/サム・ロックウェル、ケビン・スペイシー
時代設定は、地球の資源が枯渇した近未来。月に派遣されたサム(サム・ロックウェル)は、採掘した燃料を地球へ送り続ける単調な毎日を過ごしていた。3年の業務契約が満了し、家族と再会できるまであと2週間。孤独な生活に耐えるサムだったが、自分と瓜二つの男が現れ……。
<ここからネタバレ>
突如現れた瓜二つの男は、サムを派遣した企業が秘密裏に作り出していたクローン。月での採掘計画が失敗しないよう、サムすら知らされていない事態が進行していたと分かる。……というのがどんでん返しではなく、実はサム自身もプロジェクトのために作られたクローンだと判明し……。切ない雰囲気を湛えたSF映画ゆえ、ここで主人公が絶望して終了~となりそうなものだが、そうは終わらないのが本作の魅力。奮起したサムたちの大逆転劇が、最後に爽快感をもたらしてくれる。
事件の裏に隠された衝撃の真実!
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』
製作年/2003年 製作・監督/アラン・パーカー 出演/ケヴィン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット
名匠アラン・パーカーが監督を務め、死刑制度に疑問を投げかけるサスペンスドラマ。同僚女性をレイプし、殺害した罪で死刑判決を下された元大学教授のデビッド・ゲイル(ケヴィン・スペイシー)。彼の手記を作るため呼び出された記者ビッツィー(ケイト・ウィンスレット)は、彼の話を聞くうちに冤罪の可能性を感じはじめ……。
<ここからネタバレ>
物語の鍵となるのは、デビッド・ゲイルも、死去した同僚女性も死刑廃止論者であること。ビッツィーの懸命な調査により、同僚女性はデビッドに殺害されたのではなく、自ら死を選択したのだと分かる。目的は、デビッドに罪を着せて死刑へと導き、冤罪と死刑制度の関係性に疑問を呈すること。しかも、デビッド自身もその思惑を承知していたことがラストのラストで発覚! どんでん返しのオチが作品の放つメッセージに直結する秀作。
耳からの情報だけで事件を解決しようとするのだが……!
『THE GUILTY ギルティ』(2018)
製作年/2018年 監督・脚本/グスタフ・モーラー 出演/ヤコブ・セーダーグレン
緊急通報司令室のオペレーターが、電話の声と音を頼りに誘拐事件を解決しようと奮闘するデンマーク製スリラー。緊急通報司令室勤務のアスガーは、今まさに誘拐されているという女性から通報を受ける。女性の声、クルマの発信音など、耳からの情報を頼りに事件を解決しようとするアスガーだったが……。
<ここからネタバレ>
わずかな情報で事件を解決できるかどうか? というサスペンスが物語の軸になっていたはずが、実は誘拐された女性は精神を病んでおり、我が子を殺した彼女を元夫が病院へ連れていくところだったことが判明。“誘拐”も“誘拐犯”も存在していなかったと分かる。得られた情報により何を想像するかは人それぞれ。人間の想像力に警鐘を鳴らす1作。
棺の中に閉じこめられたオトコの運命は!?
『[リミット]』
製作年/2010年 製作総指揮・監督/ロドリゴ・コルテス 出演/ライアン・レイノルズ
イラクで働いていたアメリカ人トラック運転手のポール(レイノルズ)は、ある日突然何者かに襲われ、地中に埋められた棺桶の中で目を覚ます。手元にあるのは充電切れ間近の携帯電話とライター。残り90分の酸素しかない密閉された場所で、ポールは決死の脱出を試みようとするが……。
<ここからネタバレ>
彼は地中から脱出できるのか? 彼が埋められた理由は何なのか? 電話越しにSOSを送りながら死闘を繰り広げるポールだが、恐ろしい大どんでん返しが待ち受けるのはラスト。SOSをたらい回しにされたあげく、ようやく最後に外の世界からの救助が来た! と思いきや、救助隊が見つけたのは別の棺桶で……。90分奮闘した後、悲劇の結末を迎えるポールの運命がただただ空しく、バッドな方向へのどんでん返しに絶望させられる。
AIチップで最強の肉体に!
『アップグレード』
製作年/2018年 製作総指揮・監督・脚本/リー・ワネル 出演/ローガン・マーシャル=グリーン
愛する妻と平和な日々を送っていたグレイ(ローガン・マーシャル=グリーン)は、謎の組織に妻を殺され、自身も全身麻痺の状態に。しかし、埋め込まれた最先端AIチップ“STEM”の力で並外れた身体能力を手に入れ、妻の復讐に乗り出すが……。
<ここからネタバレ>
脳内に語り掛けてくる“STEM”のアドバイスを頼りに、真相へと近づいていくグレイ。ところが、一連の事件を画策した黒幕は、どんなに望んでも自分の力では手に入れられない“肉体”を乗っ取ろうとしていた“STEM”だったと判明する。このままグレイは“STEM”に体を支配されてしまうのか? ビターな味わいのラストが余韻を残す。
全編に漂う違和感の正体とは!?
『アンテベラム』
製作年/2020年 監督・脚本/ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ 出演/ジャネール・モネイ
シンガーとしても人気のジャネール・モネイが、1人2役を演じた異色スリラー。リベラル派の作家ヴェロニカ(モネイ)は、講演会に登壇するためニューオーリンズへ。しかし、同地で何者かに誘拐されてしまい……。一方、アメリカ南部のプランテーションで過酷な重労働を強いられる奴隷のエデン(モネイ)は、屈辱と恐怖の日々に耐えかねて脱走を計画していたが…...。
<ここからネタバレ>
異なる時代に生きる女性2人の物語が進行する構成かと思いきや、なんとエデンは誘拐されたヴェロニカであることが判明! エデンの生きる場所はかつての南部ではなく、白人至上主義者たちが作り上げた現代の某所だと明かされる。もちろん、モネイの“1人2役”もミスリード。ヴェロニカ=エデンが迎える結末に、メッセージが詰まっている。
ノーラン監督の出世作!
『メメント』
製作年/2000年 原案/ジョナサン・ノーラン 監督・脚本/クリストファー・ノーラン 出演/ガイ・ピアース、キャリー=アン・モス
新しい記憶を数分以上保つことができなくなってしまった男レナード(ガイ・ピアース)を主人公に、時系列を逆行させながら物語を映し出していくサスペンス。クリストファー・ノーラン監督の出世作としても知られている。妻を強姦、殺害されたレナードが自らの肉体に施したタトゥーやポラロイド写真を手掛かりに、真犯人を見つけようと奮闘するが……。
<ここからネタバレ>
徐々に真実へと近づいていくレナードだったが、実は強姦犯と殺害犯は別々の人物で、糖尿病だった妻をインスリン注射の誤投薬でレナード自身が殺してしまったことが判明。強姦魔への復讐はすでに遂げていたものの、その事実を記録しておかなかったのはなぜか……? 物語の全体像が見えた時、復讐に取りつかれた男の悲哀が浮かび上がってくる。
交渉人VS交渉人の結末は!?
『交渉人』
製作年/1998年 監督/F・ゲイリー・グレイ 脚本/ジェームズ・デモナコ 出演/サミュエル・L・ジャクソン、ケヴィン・スペイシー
シカゴ警察東分署の敏腕人質交渉人ダニー・ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)が、相棒の殺害と警察年金基金横領の濡れ衣を着せられる。潔白の証明を目指すローマンは事件関係者らを人質に取って籠城。自らに並ぶ交渉術で名を馳せる西分署のクリス・セイビアン(ケヴィン・スペイシー)を指名し、駆け引きを進めていくが……。
<ここからネタバレ>
交渉人対交渉人の息詰まるやり取りがスリリングに続く中、セイビアンは徐々にローマンの潔白を確信。クライマックスではセイビアンがローマンを撃ち殺したように見せかけ、黒幕をあぶり出していく。
驚愕のラスト15分!
『ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ』
製作年/2005年 監督/ジョン・ポルソン 出演/ロバート・デ・ニーロ、ダコタ・ファニング
母の自殺にショックを受け、心を閉ざした9歳のエミリー(ダコタ・ファニング)。心理学者の父デイビッド(ロバート・デ・ニーロ)は娘の心の傷を癒そうと、湖に程近い静かな町へ移り住む。だが、エミリーは“見えない友達”のチャーリーと遊ぶようになったうえに、次々と怪事件が起こり……。
<ここからネタバレ>
チャーリーはデイビッドの別人格で、妻の浮気を知った彼が自殺に見せかけて殺したことが発覚。自分の中のチャーリーを自覚したデイビッドの暴走により、周りの人間やエミリーまでもが命を脅かされていく。ハリウッドきっての名優デ・ニーロと天才子役として名を馳せていたファニングの鬼気迫る競演が、衝撃のラストに拍車をかけた。
人種問題をテーマに据えた前代未聞ホラー!
『ゲット・アウト』
製作年/2017年 監督/ジョーダン・ピール 出演/ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ
コメディアン出身のジョーダン・ピールがその才覚をホラー領域へ逆噴射させた、なんとも奇妙で、社会派な初監督作。ブルックリン在住のアフリカ系のクリスは、白人の恋人ローズの実家へ初めて挨拶に向かう。そこで出会ったアーミテージ家の面々は、リベラルを自称しつつ、屋敷内で見かける使用人はなぜかアフリカ系ばかり。その上、ガーデンパーティに集う地元の名士たちの言動もどこか変だ。この違和感にクリスは戸惑い、今すぐここを逃げ出したい思いに駆られるが……。
<ここからがネタバレ>
見るからに善良そうな彼らは、拉致したアフリカ系の若者のカラダに自らの脳を移植することで若さを取り戻そうとする狂気的な人々だった。クリスは立ちはだかる恋人やその家族を倒し、なんとか屋敷から逃げ延びる・・・という筋書きがありつつ、この物語の根幹にはアメリカ社会ならではの人種や差別の問題が沁み渡っているのも重要なポイント。誰もが経験のあるコミュニケーション上の居心地の悪さを巧妙に活かした、映画史的に見ても極めてリアルで稀有なホラー作品なのだ。
写真は主演のヴィディヤ・バラン
巧みな伏線と衝撃のラストに思わず唸る!
『女神は二度微笑む』
製作年/2012年 監督/スジョイ・ゴーシュ、出演/ヴィディヤ・バラン、パランブラタ・チャテルジー
滞在先で連絡を絶った夫を探すため、妊娠中の大きなお腹を抱えたヴィディヤは、ロンドンからインド西部の大都市コルカタへやってくる。地元警察の助けを借りながら行方を追ううちに、夫はミラン・ダムジという人物と瓜二つであることが判明。2年前の地下鉄毒ガステロの容疑者でもあるらしいミランとは一体何者なのか。関係者が次々と他殺体となって発見される中、ヴィディヤは恐怖に屈することなく真相に手を伸ばすのだが・・・。
<ここからがネタバレ>
ついにヴィディヤは謎の人物ミランと対峙する。しかし、銃口を向けられたそのとき、驚愕の展開が。彼女はこれまで妊娠を装っていたお腹まわりの装着物をサッと剥ぎ取り、俊敏な動きで相手を瞬殺した後、人混みの中へと消えていったのだ。実は、ヴィディヤは毒ガステロで夫を亡くし、心痛のためお腹の子供も喪っており、現地を訪れたのも最初からミランへの復讐が目的だった。ラストになって初めてヴィデヤのあらゆる言動が周到な伏線にだったと、観る側が気づく。すぐさまもう一度、すべてを最初から見直したくなること必至だ。
無限ループを駆使して爆破テロを防げ!
『ミッション: 8ミニッツ』
製作年/2011年 監督/ダンカン・ジョーンズ 出演/ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン
通勤客で混み合うシカゴ行きの列車内で爆破テロが発生。さらなる犯行を防ぐべく、スティーヴィンス大尉は量子力学によってバーチャル復元された“犯行当時の8分間”に飛び込み、事件解明の手がかりを探し求める。爆弾の場所を見つけ、怪しい人物を追いかけるも、8分経つとタイムオーバー。また最初からミッションをやり直し。この無限ループを繰り返しながら、大尉は徐々に真相へと近づいていくのだが……。
<ここからがネタバレ>
スティーヴンス大尉の活躍によって、現実世界のテロ事件は無事解決。しかし肝心なのは最新テクノロジーを駆使したプログラムそのもので、これに繋がれた大尉は実は、戦地での任務中に重傷を負い、生命維持装置に繋がれている状態だった。最後にもう一度だけ“8分間”へ向かうことを望んだ彼は、爆破を食い止めた末、これが単なるバーチャルな復元ではなく、無限の広がりを持った世界であることを知る。すなわち、いま脚光を浴びる“マルチバース”的な発想をいち早く取り入れた画期的なSFなのだ。
複雑な筋書きを明快に描く映像感覚が見もの!
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』
製作年/1998年 監督 監督/ガイ・リッチー 出演/ニック・モラン、ジェイソン・ステイサム
マシュー・ヴォーンが製作し、兄貴分のガイ・リッチーが監督、脚本を務めた伝説の群像劇。ある日、一攫千金を夢見る4人組は、裏社会の元締めの罠にハマってギャンブルで大敗を喫する。抱えこんだこの借金、一体どうやって返せばいいのか!? そんな矢先、とあるギャングが大麻の取引所を強襲しようとする動きを察知した4人は、ギャングが奪った現金を後からごっそりいただいて、借金返済に充てようとするが・・・。
<ここからがネタバレ!>
4人は崖っぷちのところで”悪運の強さ”を発揮。追ってきたギャングは他のギャングと相討ちとなり、彼らに借金返済を迫っていた元締めもなんやかんやで憤死を遂げる。結局、自由の身になった4人組の元には2挺のヴィンテージ銃だけが残り、その真の価値を知らぬまま、銃を投げ捨てようとするところで物語は暗転---。とまあ、言葉だけだと何一つ伝わらない複雑すぎる相関図を、ガイ・リッチーならではの映像センスでまるで因数分解を解くようにスッキリ描いた快作である。
重厚感を増した奇才の語り口を堪能!
『ジェントルメン』
製作年/2019年 監督/ガイ・リッチー 出演/マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム
奇才ガイ・リッチーが、自身の原点ともいえる『ロック、ストック〜』的な群像劇へ回帰したクライム・ムービー。イギリス随一の大麻密売ルートを築いたピアソン(マシュー・マコノヒー)は、将来性のある人物にビジネスを売却したいと考えていた。そんな矢先、なぜか経営を揺るがすトラブルが続発。これはきっと誰かが裏で糸を引いてるに違いない。次から次へ登場するz曲者揃いの狂騒劇を征し、最後に笑うのは一体誰なのか!?
<ここからがネタバレ>
すべての元凶は、ピアソンがビジネスの売却先に決めていたアメリカ人企業家だった。トラブルによって買値を下げようと悪知恵を働かせる彼に対し、ピアソンは先手を打って、王者の貫禄でこの混乱を収拾。さらにゴタゴタの中で息子を失ったロシア系マフィアが復讐の手を伸ばすも、ピアソンに借りのある格闘技&ヒップホップ集団”トドラーズ”がこれを撃退して、事なきを得る---。かくも複雑な筋書きを、キャラの面白さと映像の力で活き活きと成立させる手腕は相変わらず。その上、語りの重厚感すら加わったガイ・リッチー節の成熟ぶりが光る。
『ホワット・ライズ・ビニース』
製作年/2000年 監督/ロバート・ゼメキス 出演:ハリソン・フォード、ミシェル・ファイファー
超常現象? それとも人間の仕業!?
ロバート・ゼメキスが得意のCG技術をふんだんに用いたヒッチ・コック風サスペンス。研究者ノーマンと妻のクレアは、誰もが羨むような夫婦。しかし妻は、湖のほとりに建つ自宅でおかしな現象が相次いでいることに気づく。浴室の鏡に文字が浮かんだり、写真盾が倒れたりーーー。盾の裏にはマディソンという名の女性が失踪した記事が。ふと超常現象との繋がりを感じたクレアは、儀式によって霊を呼び寄せてみることに。その結果、記憶の奥に封じられていた、ノーマンとマディソンが浮気関係にあった過去が呼び起こされる。
<ここからがネタバレ>
クレアが夫を問い詰めると、彼はかつて浮気を暴露すると脅してきたマディソンを殺害し、遺体を湖に沈めたことを告白する。彼は真実を知ったクレアをも殺そうと襲い掛かるが、揉み合う二人を乗せたクルマは方向性を失い、湖の中へ。すると水底からマディソンの霊が現れ、ノーマンが息絶えるまで掴んで放さない。そうやって彼女は復讐を遂げ、再び水底へ戻っていくのだった……。“ノーマン”という名や“バスタブ”も『サイコ』のオマージュであるのを意識して楽しみたい一作。
『女神の見えざる手』
製作年/2016年 監督/ジョン・マッデン 出演/ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング
手段を選ばぬ頭脳戦に唸る!
主人公エリザベス・スローンは、ロビー活動のスペシャリスト。そのキャリアを見こんで銃規制に対する反対キャンペーンを依頼されるが、彼女はこれを断り、銃規制を推進するライバル会社へと移籍。結局、彼女の古巣の会社が銃規制反対キャンペーンを請け負い、両者は真っ向対決を繰り広げることに。常に相手の先を読むスローンは快進撃を続ける。しかし勝つためなら手段を選ばぬやり方には仲間内からも批判が噴出。さらに重要法案の投票が近づく中、敵側はスローンの個人攻撃を展開し、彼女は公聴会で倫理規定違反を問われることに……。
<ここからネタバレ>
公聴会の最終発言で彼女は“切り札”を放つ。実は彼女は、古巣を退社する際に信頼できる部下を密偵に残していて、この最終局面で自身が矢面に立たされるのも筋書き通り。注目が集まるこの場で改めて銃規制法案への指示を呼びかけ、さらにネット公開した映像によって、公聴会議長と銃規制反対派の癒着を暴露してみせる。騒動の甲斐あって法案は可決。自分は倫理規定違反で収監されながらも、彼女は身を切る形で結果を取ったのだ。
『アス』
製作年/2019年 監督/ジョーダン・ピール 出演/ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク
自分によく似た恐怖の訪問者がやってくる!?
『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールが、またも奇想天外な発想で観客を驚愕、震撼、熱狂させたサスペンス・ホラー。主人公アデレードら4人家族がバカンスを過ごすべく水辺の家で過ごしていると、その晩、彼らとそっくりの顔をした”テザード”という訪問者が現れ、襲いかかってくる。なんとかこれを撃退し逃げ延びる彼らだったが、TVのニュースによると同様の事件が全米中で発生中らしい。彼らは一体何者なのか? そしてこの凶行の目的は何なのか?
<ここからネタバレ>
かつて秘密裏に人間のクローンとして生み出されたテザードたち。しかしこの研究やがては忘れ去られ、その後もずっと地下で生き続けたテザードたちは、何年もかけて復讐の時を待ち構えていた……。死闘の末、自分そっくりのテザードにとどめをさしたアデレードだったが、ふと記憶の蓋が開く。かつて二人は幼少期、遊園地で遭遇したことがあり、その時気絶したアデリーンとテザードは入れ替わっていた。つまり生き残ったのはテザードの方。こうして人間が持つ二元性を浮かび上がらせながら映画は幕を下ろす。人の不幸は決して他人事ではない。すべては表裏一体で繋がっているのだ。
『ソードフィッシュ』
製作年/2001年 監督/ドミニク・セナ 出演/ジョン・トラヴォルタ、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー
斬新な筋書きと映像表現に大興奮のアクション!
いきなりクライマックスから幕を開けるトリッキーな構成と、そこで生じる爆発の衝撃波をバレットタイム撮影で捉えた映像表現が話題となった新感覚アクション。そもそもの事のはじまりは、謎の男ガブリエル(ジョン・トラヴォルタ)が天才ハッカーのスタンリー(ヒュー・ジャックマン)をスカウトしたことに遡る。一味の狙いは政府の裏金を盗み出すこと。多額の報酬と引き換えに特殊ワームの開発を命じられたスタンリーだったが、作業を進める中でガブリエルの正体が、合衆国の脅威となるテロリストに制裁攻撃を仕掛ける狂信的な愛国者だと知る。その資金力を拡充するため裏金を手に入れる必要があったのだ。
<ここからがネタバレ>
娘を人質に取られたスタンリーは、一味の銀行襲撃に付き従わせられ、システムにワームを仕掛け、金の奪取に成功。だがその後、ガブリエルが逃げ去る間際、スタンリーは一瞬の隙をついてロケットランチャーを発射し、一味の乗ったヘリを爆破する。ガブリエルは死んだーーーかと思いきや、彼は死を偽装し、まんまとモンテカルロへ逃亡。スタンリーの反撃も最初から織り込み済みで、すべて彼の手のひらの上で踊らされていたのだ。
『サイド・エフェクト』
製作年/2013年 監督/スティーヴン・ソダーバーグ 出演:ルーニー・マーラ、ジュード・ロウ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタム
予測不能な”副作用”ミステリー!
名匠ソダーバーグが4人の豪華俳優を配して贈る濃密なサスペンス。夫が逮捕されて以来、精神の不調を感じるようになった妻エミリー(ルーニー・マーラ)は、自ら運転するクルマで自殺未遂を起こす。担当医ジョナサン(ジュード・ロウ)は、エミリーの前主治医シーバート(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)から「新薬を使ってみては?」とアドバイスをもらい、さっそく処方。これが激しい副作用を引き起こし、エミリーは夢遊病のまま夫(チャニング・テイタム)を刺殺してしまう。心神喪失につき罪には問われず、精神科病棟へ収容される彼女。一方でジョナサンは、エミリーが症状を装っているのではないかと疑いはじめる。
<ここからネタバレ>
実は、エミリーはシーバートと結託し、夫殺しで罪に問われないために病気を装いつつ、さらに新薬の信用失墜に伴う株価の乱高下で大金を手に入れていた。ただし、彼女が外の世界へ出るには、主治医ジョナサンの承認が必要だ。彼はそれを逆手に取り、エミリーに盗聴器をつけさせシーバートの自白を引き出す。さらに主治医の指示に従わなかったという理由で、エミリーを精神科病棟へと強制入院。一連の事件で医師としての信頼を貶められた復讐を果たすのだった。
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』
製作年/2019年 監督/ライアン・ジョンソン 出演/ダニエル・クレイグ、クリス・エヴァンス、アナ・デ・アルマス
こんな展開あり!? 奇想天外な推理劇の幕が上がる!
一風変わった語り口で観る者を心酔させる”アガサ・クリスティ風”のサスペンス。一代で富を築いた推理作家ハーラン・スロンビーが、家族を交えた誕生日パーティの翌朝に死体で発見される。捜査を託された探偵ブノワ・ブランは、聞き取りの結果、家族の誰もがハーランとの間に問題を抱えていたことを知る。その後、公表された遺言書には「全財産を(看護師の)マルタに与える」とあり、当のマルタは、事件当夜、いつも注射する鎮痛剤の瓶と間違えて多量のモルヒネをハーランへ投与し、それをかばって彼が自殺した事実に思い悩んでいた……。
【ここからネタバレ】
事件にはハーランの孫ランサムが絡んでいた。彼はハーランから遺言内容を聞かされ、ならばマルタに医療ミスを起こさせ相続を阻止しようと、こっそり薬品の中身をモルヒネとすり替えていた。が、いつも親身にハーランを看護していたマルタは、自ずと液体の色や質感で薬品を見分けて投与する癖がついており、瓶は違っても投与した中身は鎮痛剤だったことが判明する。ランサムは別の殺人容疑でも逮捕さて、晴れてマルタは、移民の娘から億万長者へと思いがけない変貌を遂げるのであった。
『バタフライ・エフェクト』
製作年/2004年 監督/エリック・ブレス&J・マッキー・グルーバー 出演/アシュトン・カッチャー、エイミー・スマート
タイムリープの傑作、ここにあり!
“バタフライ・エフェクト”という言葉をいち早く広め、なおかつタイムリープを駆使した独創的なストーリーで観客を唸らせたヒット作。主人公のエヴァンは幼い頃からしょっちゅう記憶喪失に見舞われていた。そんな彼に医師は「日記を書くように」と勧め、やがて大学生になったエヴァンはふと日記を読み返すうち、自分がその記述を介してタイムリープできることを発見。かつて思いを寄せていた少女ケイリーが自殺したのを機に、過去へ戻って、彼女の人生を狂わせた父親の虐待をやめさせるようとする。が、ひとつ過去を変えると別の悲劇が巻き起こり、事態は思いがけない方向へと転がっていき……。
【ここからネタバレ】
クライマックス、彼は終わりのないジレンマの連鎖を断ち切るべく、幼少期のケイリーとの出会いの瞬間へとタイムリープし「彼女を拒絶する」という行為に打って出る。こうして二人がずっと他人のままであり続けることで、未来の悲劇は抑止され、大人になった二人はニューヨークですれ違うも、一瞬振り返るだけで各々の道を歩いていく。ちなみにDVDには別エンディングも収録されており、作り手の側にも幾つもの世界線の試行錯誤があったことが窺える。
『スプリット』
製作年/2016年 監督/M・ナイト・シャマラン 出演/ジェームズ・マカヴォイ、アーニャ・テイラー=ジョイ
謎が謎を呼ぶ、シャマラン・ワールドの魅力が全開!
お馴染みシャマラン監督が「映画を作りはじめた頃の純粋な気持ちに戻って撮った」と語る異色作。ある日、フィラデルフィア郊外で3人の女子高生が謎の男に連れ去らわれる事件が発生。地下室に閉じ込められた彼女らを前に、この男はコロコロと人格を豹変させながら「君たちは”人間を超越した存在”のための聖なる食料だ」と告げる。果たしてその真意は何なのか? そして彼女たちは生き残れるのか?
【ここからネタバレ】
やがて時が来て、彼の肉体には24番目の人格”ザ・ビースト”が降臨。強靭な肉体、壁を軽々とよじ登る身軽さで少女たちに次々と襲い掛かる。いざ最後まで生き残った少女ケイシーの身に飛びかかろうとするビーストだったが、彼女の体に無数の傷跡があるのを見てハッと動きを止める。自分と同じく、虐待による心の痛みを抱えた仲間だと認識したのだ。その後、ケイシーは無事保護されるが、最後のワンシーンで本作が『アンブレイカブル』(2000年)の16年ぶりの続編であることが判明。この物語は3人の超人たちが集う『ミスター・ガラス』(2019年)へと受け継がれていく。
『透明人間』
製作年/2020年 監督/リー・ワネル 出演/エリザベス・モス、オリバー・ジャクソン=コーエン
目に見えない恐怖から逃げられるか!?
これまで幾度も映画化されてきた古典的題材を、見事な手腕で現代に蘇らせた怪作。物語は主人公セシリアが、彼女をがんじがらめに束縛する光学研究家の恋人エイドリアンのもとから逃げ出すシーンで幕を開ける。その後、彼が自殺したとの報が届くも、同時期にセシリアの身の回りでは不可解な現象が起こりはじめ、彼女はかつて怯え続けた恋人がまだ生きているのではと睨む。その予感は当たっていた。ある日、ついに姿を現したのは、特殊開発された透明スーツに身を包んだエイドリアンだった……。
【ここからネタバレ】
姿を消し、あの手この手でセシリアを追い詰めるエイドリアン。彼の兄トムもその仲間で、透明スーツを着て彼女らを襲撃するが、返り討ちに遭って命を落とす。終盤、意を決したセシリアはエイドリアンと対峙。会話の途中でセシリアが席を外し、部屋に一人残った彼はやがて、監視カメラが見つめる中、ナイフで自らの首をかき切って絶命してしまう。どうやらセシリアが透明スーツを使って忍びより、自殺に見せかけて復讐を遂げたらしい。こうして彼女は恋人の束縛と暴力から解放され、ついに念願の自由を手に入れるのだった。
『母なる証明』
製作年/2009年 監督/ポン・ジュノ 出演:キム・へジャ、ウォンビン
光と闇をさらけ出す重厚さに心底圧倒される
『パラサイト〜』のポン・ジュノ監督が、母なる存在が放つ強烈な”光と闇”に迫ったサスペンス。とある小さな街で女子高校生の殺人事件が発生し、現場周辺で所有物が見つかったことからトジュンが容疑者として逮捕される。この子に限ってそんなことは絶対にないと信じる母は、息子のために駆け回る中、殺された少女が多くの男と関係を結び、その全員の写真を携帯電話に保存していたことを知る。ならば事実を知られたくない誰かが、少女を殺したのだろうか……?
【ここからネタバレ】
事件解決まであと一歩かという中、トジュンの母は、犯行場面を目撃したという廃品回収業の男を見つけ出す。だが、彼が口にしたのは「犯人はトジュンで間違いない」という最初の入り口に戻ったかのような真実だった。母は激情と混乱のあまり男を殺し、その場に火を放つ。全ての真相は闇に葬られ、やがてトジュンは釈放。だが真犯人は紛れもなくトジュンであり、母もまた殺人を犯した事実は消えない。ここまでして息子を守るのは愛か、それとも狂気か。心のつかえを無くすツボに自ら針を打ち、母は狂ったように踊り続けるのだった。
『バニー・レークは行方不明』
製作年/1965年 原作/イヴリン・パイパー 監督/オットー・プレミンジャー 脚本/ジョン・モーティマー、ペネロープ・モーティマー 出演/キャロル・リンレー、キア・デュリア、ノエル・カワード、ローレンス・オリヴィエ
予想が根こそぎ覆される!
『帰らざる河』『悲しみよこんにちは』の名匠オットー・プレミンジャーが手がけたサスペンス・ミステリー。アメリカからロンドンに引っ越してきたシングルマザー、アン(キャロル・リンレー)が、保育園に預けていた幼い娘バニーを迎えに行く。しかしバニーは忽然と消失してしまい、ロンドン警視庁のニューハウス警部(ローレンス・オリヴィエ)が捜査に乗り出す。しかし保育園の職員をはじめ、誰もバニーを目撃しておらず、ニューハウスはアンの主張に疑念を抱きはじめる……。
〈ここからネタバレ〉
人間の失踪を題材にしたミステリー劇は『フライトプラン』『ブレーキ・ダウン』など数多くあるが、本作はそれらのどれとも違う真相が待ち受ける異色作。観る者は“消えた少女”バニーは最初から存在しておらず、情緒不安定なアンの妄想の産物ではないかと思わされるが、その予想は根こそぎ覆される。キーパーソンはアンの唯一の理解者である兄スティーヴン(ケア・デュリア)。彼がサイコな本性を露わにし、アンとの歪んだ兄妹愛が明かされる結末に唖然呆然とさせられる。
『瞳の奥の秘密』
製作年/2009年 製作総指揮/ヘラルド・エレーロ、バネッサ・ラゴーネ 監督・脚本/フアン・ホセ・カンパネラ 脚本/エドゥアルド・サチェリ 出演/リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル、パブロ・ラゴ
サスペンス・ミステリーとしても一級品!
第82回米アカデミー賞外国語映画賞を受賞したアルゼンチン映画。ブエノスアイレスの刑事裁判所を定年退職した初老の男性ベンハミン(リカルド・ダリン)が、25年前に自分が捜査に携わった未解決事件を題材にした小説を書きはじめる。それはリカルドという銀行員の美しい新妻が被害者となった残虐な暴行殺人事件だった。かつての同僚で、今は検事として活躍するイレーネと再会したベンハミンは、容疑者のゴメスを取り逃がした当時の記憶をたどっていく……。
〈ここからネタバレ〉
現在と過去のふたつのパートから成る本作は、主人公ベンハミンと彼の憧れの女性イレーネが織りなすメロドラマでもある。しかし軍事政権下で闇に葬られた殺人事件のおぞましい成り行きと、終盤に描かれる真相の衝撃性は、サスペンス・ミステリーとしても一級品。最愛の妻の命を奪った憎き犯人をただならぬ執念で追い続けていたリカルドは、法では裁かれなかったゴメスを自らの手で“終身刑”に処していたのだ。人間という生き物の情念の深さに驚嘆せずにいられない一作だ。
『灼熱の魂』
製作年/2010年 原作/ワジディ・ムアワッド 監督・脚本/ドゥニ・ビルヌーブ 出演/ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー=プーラン、マキシム・ゴーデット
奇妙な数式の答えに驚愕!
『ブレードランナー 2049』(2017年)、『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の出世作。カナダ在住の若い姉弟ジャンヌとシモンが、母親ナワル(ルブナ・アザバル)の死後、公証人のもとを訪れる。そこで姉弟に手渡されたのは、彼らの“父”と“兄”に宛てられた2通の手紙だった。父親が誰なのかわからずに育ち、兄が存在していることも知らなかったジャンヌとシモンは、中東レバノンからカナダに移住してきたナワルの過去を探っていくのだが……。
〈ここからネタバレ〉
レバノン生まれの劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲を原作にした本作は、いわゆるジャンル映画ではなく、ひとりの母親の波瀾万丈の人生をめぐる物語。祖国レバノンで宗教対立に巻き込まれた主人公ナワルのあまりにも過酷な運命は、ギリシャ神話さえも想起させる。そんな母親の軌跡をたどった姉弟は、劇中で提示される“1+1=1”という奇妙な数式の答えにたどり着く。それはナワルの遺言である手紙を渡すべき“父”と“兄”が、同じ人物だったという禁断の真実である。
『フレイルティー 妄執』
製作年/2001年 監督・出演/ビル・パクストン 脚本/ブレント・ハイレン 出演/マシュー・マコノヒー、パワーズ・ブース、マット・オリアリー
観る者の善悪の価値観をひっくり返す!
俳優ビル・パクストンの監督デビュー作。とある夜、テキサス州のFBI支局にフェントン(マシュー・マコノヒー)という男がやってくる。彼は全米を震撼させる“神の手殺人事件”の真犯人を知っているという。同事件の捜査担当者ドイル(パワーズ・ブース)は、不審を抱きながらもフェントンの告白に耳を傾ける。それは少年時代のフェントンと幼い弟アダムが、天使から「悪魔を滅ぼせ」という使命を授かったと主張する父親(パクストン)に導かれ、殺人に加担した恐ろしい過去だった……。
〈ここからネタバレ〉
フェントンの告白を映像化した過去のパートでは、父子3人が力を合わせて“人間の姿をした悪魔”を次々と抹殺していく様を描出。純真な子供の視点で描かれるその異様なストーリーからして戦慄ものだが、終盤の展開はさらにすごい。フェントンが語るオカルトじみた“神と悪魔の闘い”は本当にあった出来事で、彼こそが悪魔退治にいそしむ“神の手殺人事件”の犯人だったという驚愕の真実が明かされる。観る者の善悪の価値観をひっくり返す、斬新なミステリー・スリラーだ。
『プリデスティネーション』
製作年/2014年 原作/ロバート・A・ハインライン 製作・監督・脚本/マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ 出演/イーサン・ホーク、サラ・スヌーク、ノア・テイラー
タイムパラドックスが生んだ真実はまさに予測不能!
1970年、ニューヨークのバーでライターの青年ジョン(セーラ・スヌーク)が、バーテンダー(イーサン・ホーク)に数奇な生い立ちを語りはじめる。ジェーンという女の子としてこの世に生まれた“彼”は、18歳の時に悲しい恋を経験し、性転換手術によって男性になった。その身の上話を聞いたバーテンダー(イーサン・ホーク)は、ジョンをタイムトラベルに誘う。実はバーテンダーは、凶悪爆弾魔のフィズル・ボマーを追って未来からやってきた時空警察の捜査官だった……。
〈ここからネタバレ〉
ロバート・A・ハインラインの短編小説に基づくこのSFサスペンスは、まさに予測不能のひねりの連続。バーテンダーが携帯型タイムマシンでジョンを1963年へ連れ出す中盤以降、めまぐるしく時制を移動し、ジェーンを妊娠させた謎の男、ジェーンが出産した赤ん坊、そしてバーテンダーと彼が異常な執念を燃やして追跡するフィズル・ボマーのあっと驚く関係性を明かしていく。タイムパラドックスが生んだ世にも複雑怪奇な真実、何と上記のキャラクター全員が“同一人物”だったのだ!
『推定無罪』
製作年/1990年 監督/アラン・J・パクラ 出演/ハリソン・フォード、ブライアン・デネヒー、ボニー・べデリア
米司法制度に切り込んだ硬派なサスペンス!
著者スコット・トゥーロが検事補時代の通勤電車の中で8年がかりで書き上げたというベストセラー小説を『大統領の陰謀』で知られる名匠パクラが監督し、その硬質な筆致により高評価を博した司法サスペンス。検事補ラスティは仕事も家庭生活も順調なはずだった。しかし、かつて不倫関係にあった同僚のキャロリンが何者かに殺害されたことで風向きが変わりはじめる。殺害現場に残された物的証拠はなぜかラスティにとって不利となるものばかり。彼は検察側から一転して容疑者の立場へ叩き落とされ、裁判で容赦ない追求を受けることに……。
【ここからネタバレ】
法廷での駆け引きの末、証拠不十分となり自由の身になるラスティ。その後、彼は自宅の工具箱から血のついた鈍器を見つけてハッとする。真犯人は最も身近なところにいた。すべてはキャロリンへの未練を捨てられずにいる夫の本心に気づいた妻が、復讐や嫉妬などの感情が相まって後先考えずに及んだことだったのだ。正義や真実を最も重んじるべき立場のラスティが、結局、真相を闇に葬ってしまう結末が重くのしかかる。
『グランド・イリュージョン』
製作年/2013年 監督/ルイ・リテリエ 出演/ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、モーガン・フリーマン
あなたはこのトリックを見破れるか!?
謎の人物によって引き合わせられた腕利きのマジシャン4人。やがて「フォー・ホースメン」としてラスベガスで巨大なマジックショーを開催した彼らは、パリの銀行から多額の現金を忽然と消し去り、大反響を呼び起こす。次なるショーで彼らは保険会社のオーナー、トレスラーの口座から多額の金を災害被災者たちへと分配。FBI捜査官のディランは血眼になって彼らの狙いやトリックを解明しようとするが、ことごとく裏をかかれてしまう。トリック破り動画で人気を博すタデウスも動き出す中、やがてホースメン最大のショーの幕が上がり……。
【ここからネタバレ】
一連のショーにはすべて繋がりがあった。核にあるのは、かつてマジック中に命を落とした奇術師、ライオネル・シュライク。彼の遺族に補償料を支払わなかったパリの銀行とトレスラーの保険会社、その他、不良品を提供した金庫会社も復讐の標的だった。さらに最後のショーで奪われた現金は、トリック破りでシュライクを没落させたタデウスのクルマから見つかり……。実は、ホースメンを追っていたFBI捜査官ディランこそすべての首謀者で、奇術師シュライクの息子なのだった。
『インサイド・マン』
製作年/2006年 監督/スパイク・リー 出演/デンゼル・ワシントン、クライヴ・オーウェン、ジョディ・フォスター、ウィレム・デフォー、キウェテル・イジョフォー
タイトルが示す意外な真相とは!?
『狼たちの午後』を彷彿とさせる内容に惹かれた名匠スパイク・リーが珍しくエンタテインメントど真ん中の路線に挑んだ一作。舞台はウォール街。ラッセル率いる犯人グループは塗装業者を装って銀行内へ侵入し、50人を人質に立てこもる。その練り抜かれた犯行にフレイジャー刑事は「彼らの真の狙いは何なのか?」と疑問を募らせ、一方、敏腕弁護士ホワイトは銀行会長の「知られたくない秘密」が世に出ないよう犯人グループと接触を試みる。実はここの会長は、かつてナチスと組んで富を築いたいわくつきの人物だった……。
【ここからネタバレ】
鍵を握るのは貸金庫392番。そこにはナチスとの関係を示すファイルと、数々のダイヤが眠っていた。それらを奪ったラッセルは、そのまま備品室の壁の奥に築いた空間に潜伏し続け、事件収束から1週間後、這い出して逃げ去る。貸金庫に「指輪を追え」のメモを残して。それを見つけたフレイジャー刑事は本能的に、戦争犯罪を明るみにしようと動き出す。彼の正義感と行動力を予測していたかのように、ポケットからは、ラッセルがすれ違った際にそっと忍ばせた一粒のダイヤが見つかる。
『殺人者の記憶法』
製作年/2017年 原作/キム・ヨンハ 監督/ウォン・シニョン 出演/ソル・ギョング、キム・ナムギル、キム・ソリョン、オ・ダルス
殺人者VS殺人者、その死闘から目が離せない!
認知症のため記憶が抜け落ちていく連続殺人犯を主人公にした衝撃作。彼の名はビョンス。獣医として娘と共に暮らしているが、かつては自らの線引きで悪とみなした者を次々と殺害する殺人者だった。しかし17年前、最後の殺人を犯したあと事故で脳に損傷を受け、それが引き金となって認知症を発症してしまう。記憶が曖昧になる中、娘からもらったボイスレコーダーだけが唯一の頼り。そんな中、街では新たな殺人事件が相次ぎ、ある日、血の滴る謎の車輌を見つけたビョンスは、乗車していた若者テジュの瞳を見た瞬間、自分と同じ殺人者であると直感する。テジュもまた然り。徐々にビョンスの彼の娘へと近づきはじめ……。
【ここからネタバレ】
テジュとの対決に備えるビョンスだったが、記憶が一向に持たず、新たな連続殺人もすべて自分の手によるものではないかと疑いはじめる。が、この時、助けとなるのがボイスレコーダー。そこには犯行を告白するテジュの声がはっきりと刻まれていた。さらわれた娘を奪還すべく、テジュの隠れ家へ乗り込む彼。格闘の末、自分の手でテジュを殺す。が、果たして本当に死んだのだろうか。謎を残したまま物語は幕を閉じる。
『エターナル・サンシャイン』
製作年/2004年 監督/ミシェル・ゴンドリー 出演/ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンスト、マーク・ラファロ、イライジャ・ウッド
奇想天外な発想で”記憶の本質”に迫る!
奇才チャーリー・カウフマンの脚本を、ミシェル・ゴンドリーが鮮やかに具現化した秀作。バレンタインデーの朝、ジョエルは通勤途中、ふと衝動に駆られて逆方向の電車へ乗る。着いた先は海辺の街。そこで青髪のクレメンタインと出会い、惹かれ合い……。かと思えば、場面は二人の愛の終焉へと飛ぶ。ある日、ジョエルが話しかけてもクレメンタインは全くの他人顔。どうやら彼女は施術を受けて彼に関する記憶を消したらしい。傷心のジョエルもまた同施術を受けて彼女の記憶を消そうとするが、施術中、どうしても忘れたくない気持ちが高じて、意識が脳内記憶内をあちこち逃げ回りはじめる。
【ここからネタバレ】
施術を受けて彼女の記憶を失ったジョエル。しかし翌朝、なぜか衝動に駆られて海へ向かう(冒頭シーン)。まっさらな記憶で新たに出会った二人は、一本のカセットテープによって両者とも施術を受けた事実を知る。と同時に、かつての破局の原因に互いへの不満や苛立ちがあったことを認め合い、今度は別れではなく、共に乗り越えていくことを選ぶーーー。公開から約20年、優しく繊細なラストの余韻は今なお一向に色褪せない。
『ヴィジット』
製作年/2015年 製作・監督・脚本/M・ナイト・シャマラン 出演/オリヴィア・デヨング、エド・オクセンボウルド
孫たちを襲う超絶ホラー体験に震撼!!
ご存知、シャマラン監督が手持ちカメラ風のドキュメンタリータッチで織りなす本作の主人公は、シングルマザーのもとで育ったティーンの姉弟たち。母は若かりし頃、家出同然で故郷を飛び出しており、子供らは生まれてからこのかた祖父母と会ったことがない。そんな矢先、SNS経由で祖父母から「是非孫たちと一緒の時間を過ごさせてほしい」との連絡が。母の承諾を得て、姉弟だけで祖父母の家で楽しい日々を過ごすのだが、しかし9時半以降、就寝したはずの祖父母は常軌を逸した奇怪な行動を取りはじめ……。
【ここからネタバレ】
「私たちは老人だから、調子が悪くなることも多いんだよ」との言い訳を信じた姉弟だが、度重なる奇行と恐怖体験に我慢できず、オンラインで母に祖父母の姿を見せると「その人たち一体誰なの!?」との返事が。彼らは祖父母になりすました別人だったのだ。地下室から殺された(本当の)祖父母の遺体が見つかる中、姉弟は生き残りをかけて必死の抵抗と反撃を繰り広げ、ようやく母と警察が駆けつけ無事保護されるーーー。シャマラン自身が”原点回帰”と呼び、まさに本作がきっかけで、この時期に低迷していたシャマランの評価が再び急浮上することに繋がった救世主的な一作である。
タイッサ・ファーミガ
『記憶探偵と鍵のかかった少女』
製作年/2013年 監督/ホルヘ・ドラド 脚本/ガイ・ホームズ 出演/マーク・ストロング、タイッサ・ファーミガ
記憶描写の秀逸さに唸りまくりのサイコミステリー!
記憶探偵のジョンは、人の記憶の細部へ入り込み、数々の謎や事件を解決へと導く特殊能力の持ち主。かつて妻を失ったトラウマを抱える彼のもとへ舞い込んだ新たな依頼、それは家族に反抗して食事を摂ることさえ拒否する少女アナの心を探ること。ジョンにとってはごく簡単な仕事のはずだった。しかしアナは飛び抜けたIQの持ち主で、彼女が言うには継父がこの一族の資産を独り占めすべく、娘を施設へ追いやろうと画策しているのだとか。記憶を探るうちにアナを心から信用し、いつしか自身のトラウマも薄まっていくのを感じるジョン。その時、真夜中に緊急連絡が入り……。
【ここからネタバレ】
ジョンが屋敷へ駆けつけると、アナは彼の掌に自分の血を付着させて、行方をくらましてしまう。それが状況証拠となってジョンは依然として行方不明のアナを殺害した容疑で逮捕されることに。ずっと自由を渇望していた彼女は、自らの記憶を改竄してジョンを信用させ、家族の束縛から逃れるため彼を利用したのだ。その後、別の記憶探偵の尽力によって潔白が証明されたジョン。この顛末も含めてすべてが緻密な計画の一部で、我々は彼女の手のひらですっかり踊らされていたのかもしれない。
トム・シリング
『ピエロがお前を嘲笑う』
製作年/2014年 監督・脚本/バラン・ボー・オダー 出演/トム・シリング、エリアス・ムバレク
逃げ場なき天才ハッカーが繰り出す究極の一手とは?
幼くして世界を繋ぐ情報網の魅力に取り憑かれた主人公ベンヤミンは、やがて腕を磨き、超絶ハッカーとして知られる存在に。個々の能力に秀でたシュテファン、パウル、マックスらとグループを組み次々と愉快犯的なサイバー犯罪を繰り広げるのだが、ネット空間のカリスマ、MRXが仕掛けた罠にはまり、とある死亡事件の容疑者として追われ、さらに顔写真や位置情報までもが筒抜けとなる事態に。逃げ場がないと観念したベンヤミンは出頭し、捜査官の前で経緯を洗いざらい告白しはじめるのだがーーー。
【ここからネタバレ】
証人保護プログラムと引き換えに、国際手配されたMRXを罠にはめて逮捕へと追い込んだベンヤミンだが、その後、捜査官は彼が多重人格者であり、シュテファン、パウル、マックスはすべて彼が作り出した別人格だと特定。しかし実は、そう思い込ませることこそが、ベンヤミンの仕組んだ計画だったという周到な二段構え。デジタル世界の攻防や取引を、あえて仮面を被った怪しげな者たちの集いとしてアナログ風に描くなど、映画ならではの趣向を駆使してドラマ性を際立たせた秀作だ。
『スリープレス・ナイト』
製作年/2017年 監督/バラン・ボー・オダー 出演/ジェイミー・フォックス、ミシェル・モナハン
眠らない夜をワケあり刑事が傷だらけで駆け抜ける!
2011年のフランス映画のリメイクにあたる本作は、ラスベガスで起こった輸送車の襲撃シーンで幕を開ける。それを企てた刑事コンビのヴィンセント&ショーンは積まれていたコカインを手に入れるも、やがてヴィンセントは息子を人質に取られ「コカインを返さなければ殺す」と脅される。だが、取引場所へ向かう前にコカインをトイレの天井に隠したのが運の尽き。前々から彼を汚職刑事としてマークしていた内務調査課のジェニファーによって発見されてしまう。その追って追われての複雑な相関図に凶暴なギャング組織までもが絡まり、事態はますます予測不能の渦へ……。
【ここからネタバレ】
やがて対峙したジェニファーにヴィンセントが明かしたこと。それは彼自身が潜入捜査官として2年もの間、汚職刑事になりすまし、全容解明のため命がけで奔走してきたという事実だった。ヴィンセントは執拗に追いかけてくる敵を倒して息子を救出し、一方、相棒のダグがギャングと内通していることに気づいたジェニファーも激しく横転する車の中で生き延び、なんとか彼を逮捕する。出世作『ピエロがお前を嘲笑う』の監督らしい二転三転する展開が魅力を放つ一作だ。
『シークレット ウインドウ』
製作年/2004年 原作/スティーヴン・キング 監督/デヴィッド・コープ 脚本/デヴィッド・コープ 出演/ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロ、マリア・ベロ、ティモシー・ハットン
人気作家に付きまとう謎の男の正体とは!?
人気作家のレイニーは半年前に妻の浮気現場を目撃したショックがいまだ癒えないまま、今では別居して湖のほとりの山荘で暮らしている。ある日、そこに帽子姿の謎の男が訪れ「俺の小説を盗みやがったな!」と言いがかりをつけてくる。突きつけられたその原稿に目を通すと、確かにレイニーが発表した短編と内容が瓜二つ。ただし結末だけが異なっており、男はそれが我慢できず、書き直して再出版することを要求し、レイニーが拒否するとその行動はますます過激になり、妻と恋人が暮らす住居が放火され、挙げ句の果てには関わった人たちが次々と殺され……。
【ここからネタバレ】
謎の男に怯えるレイニーの頭の中で、いつしか響きはじめる別の声。まるで自問自答でもするかのように対話を続けつつ、その瞬間、彼はハッと我に返り、謎の男を作り出していたのは自分自身だと気づく。そこへ偶然にも離婚を望む妻がやってきて、レイニーは自分を不安定な精神状態をもたらしたきっかけでもある妻を殺して家庭菜園に埋める。奇しくもそれは、謎の男が執拗に書き直しを要望したエンディングそのものだった。ちなみに原作は1990年発表のスティーヴン・キングの中編小説。
photo by AFLO