〈マクラーレン〉アジア太平洋地域ディレクターに聞いた、ブランドの今とこれから!
昨年創立60周年を迎えた〈マクラーレン〉。そして今年は伝説のドライバー、アイルトン・セナがこの世を去って30年。「〈マクラーレン〉はこれからも、レーシングDNAに基づくブランドイメージを維持していきます。昨今、スーパーカーマーケットはテクノロジーの進化ばかりが注目されがちですが、〈マクラーレン〉ブランドの根幹をなす、軽量化、高性能化、そしてドライビング・エンゲージメントへの飽くなき追求を推し進めてゆきます」と語るのは、今年アジア太平洋地域ディレクターに就任したシャーロット・ディクソン氏。今回インタビューは日本で初だそうだ。
〈マクラーレン〉初となる女性のアジア太平洋地域ディレクター、シャーロット・ディクソン氏
ラグジュアリーなスポーツカーでありながら、他のブランドに比べてどこか控えめで品がある。そんな言葉がまさにピッタリなのが英国ブランド〈マクラーレン〉。レジェンドであるF1ドライバー、アイルトン・セナの名前は日本でも広く認識されており、〈マクラーレン〉は彼が最後に所属していたチームでもある。現在でもアイルトン・セナの甥であるブルーノ・セナは〈マクラーレン〉のテストドライバーだ。
そんな風にラグジュアリースポーツカー業界において、日本でも知名度はもちろん人気も圧倒的な〈マクラーレン〉。そこに、日本を含むアジア太平洋地域ディレクターに女性が就任したというニュースが飛び込んできたのが今年6月。その人こそがシャーロット・ディクソンだ。シンガポールを拠点にしている彼女は日本が好きで、たびたび来日しているそうだが、本格的なインタビューを受けるのは今回がはじめてだという。〈マクラーレン〉の実質アジアのトップに就任したシャーロット。今の思いや日本のマーケットに関して聞いてみた。
ベージュのパンツスーツで颯爽とショールームに現れたシャーロット。笑顔を絶やさない柔らかな雰囲気で気さくに話し出した。まず女性として、今の地位にのぼりついたモチベーションはどこにあったのだろうか。
「まず私は〈マクラーレン〉というクルマが大好きだということかしら(笑)。それは父の影響も強いです。父はずっとクルマ関係の仕事に就いていて、スーパーラグジュアリーカーに関しての情熱を持っていました。それが私に受け継がれ、大きなパッションになっていると思います。もともとイリギスはレースの発祥の地であるとともに、カーレースを家族で楽しむというカルチャーがあります。そのうえ、父がそういった仕事をしていたので、自然にのめり込んで今に至ったという感じです。血筋なんでしょうね。父に連れられて子供の頃はよくF1にも行きましたよ。また〈マクラーレン〉では商品やブランド、お客様に対して情熱を持って働いているので、そういった人たちと働くのが好きだし、とても仕事もしやすいということも理由のひとつです。〈マクラーレン〉に来て6年になりますが、デザイナーやエンジニアでも女性が活躍していますよ。それは過去の会社では残念ながら少なかったことです」
歴史ある〈ベントレー〉、〈ロールスロイス〉でマーケティングやセールス、コマーシャル等を経験し、その後〈マクラーレン〉に移り本国に2年、シンガポールでは現在4年目。
「もともとアジアは大好きなのです。シンガポールで仕事ができて、日本と行き来できるのはラッキーです」
マクラーレン横浜ショールーム
今回のインタビューは2025年の新型アルトゥーラとアルトゥーラ・スパイダーが並ぶ“マクラーレン横浜”のショールームで行われた。新型アルトゥーラは、3.0ℓV6エンジンとEモーターを搭載。トランスミッションのキャリブレーションを見直し、新しいプリフィル機能によりギアシフトを25%高速化。よりダイナミックなパフォーマンスを得るとともに、爽快感がさらに向上した。
「新型アルトゥーラに乗る前、最も女性にも運転しやすい〈マクラーレン〉は、圧倒的にGTだと思っていました。私自身もGTに乗るときは緊張せずに快適に走れました。でも、今一番気に入っているのはアルトゥーラです。このクルマはサーキットを走るスーパーカーでありながら日常を楽しくしてくれるクルマでもあります。日常運転するときは、たとえば早朝に出かけるときや深夜に帰宅するときに、スポーツカーの音は騒音になってしまうこともありますよね。そんなときでもこのアルトゥーラはEモードを使って静かなモーター走行になります。もちろんサーキットや高速ではトラックモードでパワフルに走れます。先日南仏で運転しましたが、とてもスペシャルでユニークな体験をしました。アルトゥーラ・スパイダーはもちろん、アルトゥーラ・クーペ(手前の黄色い車)は、男性はもちろん、是非女性にも運転してほしいクルマです」
アルトウーラ・スパイダー
アルトゥーラ・クーペを運転する機会に恵まれ、東京都内の飯倉から大黒埠頭まで運転してみたところ、まず驚いたのは室内の静けさだ。とはいえトラックモードで窓を開けてみると、再設計されたエグゾーストからのクレッシェンド・サウンドに包まれる。さらに以前のアルトゥーラより加速が格段によくなっており、高速での合流や追い越しなどがよりスムース。オープンエアになるスパイダーは、より爽快だろうなと想像がつく。
2025年新型アルトゥーラ
最後にシャーロットに今後の日本での戦略を聞いてみた。
「女性はもちろん、さらに多くの人に〈マクラーレン〉を広げてゆきたいです。ブランドそのものがこういったターゲットということではなく、プロダクトレンジが広いので、誰とでも関係が作れるというというブランドを目指しています。特にアルトゥーラに関しては、とても扱いやすいクルマなので、一度乗ってもらえれば好きになってもらえると思いますよ。ギルモアというフォーミュラーEの女性ドライバーもいますし、MTC(マクラーレン テクノロジー センター)でも女性のエンジニアが働いています。そういう人たちが顔を出し日本のメディアで取り上げられることは、他のブランドではないことなので、そこは大きく差別化できると思います。男性ならアジアではよくインフルエンサーを使っていますが、それは誰でも知っている超セレブリティではなく、会社と一緒にこれから成長してゆくような人たち。セレブではない理由は、対価を支払って使ってもらっているという印象を与えたくないし、本当に〈マクラーレン〉を好んで乗ってくれる人だけを選んでいます。日本でもそういった人にごく自然体で乗ってもらえることを目指しています」
●マクラーレン・オートモーティブ
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