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2024.11.11


〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!

1890年に開業した、ホテル御三家のひとつとして知られる〈帝国ホテル 東京〉。ミシュランガイドで3つ星に輝き続ける〈神楽坂 石かわ〉や〈虎白〉を擁する石かわグループとタッグを組み、2021年11月1日にオープンしたのが〈帝国ホテル 寅黒〉。ミシュランガイドで1つ星として掲載され続け、人気を博しており、2024年7月29日に同じ地階の別の場所に移転オープンした。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!ゆったりと座れる10mのカウンター席

ファサードは凛とした落ち着いた佇まいで、気品が感じられる。エントランスを入ると、金魚が泳ぐ“つくばい”があったり、掛け軸や生花があったりと、日本料理店らしい余白の空間があって心が和む。10mのカウンターは、ゆったりとした14席。落ち着きのある照明で、適度に活気がある。3つの個室が設けられているから、特別な集いにもちょうどいい。

オープン時から引き続き、鷹見将志さんが調理長を務めている。1991年栃木県鹿沼市で生まれ、料理人だった父親の背中を見て育つ。子どもの頃の夢であった日本料理の料理人になることを目指し、専門学校を卒業すると石かわグループに入社。そして、若手の実力派であった鷹見さんが〈帝国ホテル 寅黒〉調理長として抜擢された。

鷹見さんが提供するのは、旬の食材をふんだんに用いた“おまかせコース”(4万2000円)。10品前後のコースで、先付、揚物、椀物、造り、中皿、焼物、冷物、煮物、食事、甘味という流れになっている。

1カ月半くらいでメニューは新しくなるので、秋の一例を紹介しよう。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“松茸すり流し 茶碗蒸し 銀杏 木耳 酢橘”

先付は“松茸すり流し 茶碗蒸し 銀杏 木耳 酢橘”。すり流しにした松茸はのどごしがよくて香り高い。上にのせられたコリコリっとしたキクラゲ、下の茶碗蒸しにしのばされた銀杏がよいアクセント。途中で酢橘を搾って味変も楽しめる。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“秋刀魚の春巻き 昆布塩 梅おろし”

“秋刀魚の春巻き 昆布塩 梅おろし”は、味わいがしっかりとした秋刀魚を肝ごと揚げ、マイルドな味わい、かつ、パリパリっとした食感に仕上げた。梅風味の大根おろしで、さっぱりとさせている。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“鱧真丈 松茸 黄菊 三つ葉”

椀物は“鱧真丈 松茸 黄菊 三つ葉”。先に繊細な出汁を飲んでから、上味あふれる鱧の真丈を合わせて食べると、より美味が増す。上にあしらわれた菊の花と糸三つ葉は、色合いが鮮やか。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“真鯛 生海苔 醤油 蒸し鮑 肝ソース 芽葱”

“真鯛 生海苔 醤油 蒸し鮑 肝ソース 芽葱”は、品よく脂がのった真鯛に、生海苔のフレッシュな香りがよく合う。蒸し鮑は出汁の餡が出色で、添えられた肝のソースが乙な味わい。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“塩すっぽん 黄韮 柚子胡椒味噌”

焼物の“塩すっぽん 黄韮 柚子胡椒味噌”は、骨を取ってあって食べやすいので、ホテルの雰囲気を損なわず、品よく慎ましやかに食べられる。すっぽんの繊細な妙味が感じられ、黄韮や柚子胡椒味噌が心地よいパンチ。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“穴子 飯蒸し 海苔 赤山椒”

中皿の“穴子 飯蒸し 海苔 赤山椒”は、趣向を凝らした飯蒸し。蒸した米の上には衣をつけて揚げた穴子がのせられ、自分で海苔を巻いて巻物にする。穴子のエネルギッシュな至味が、米と海苔に寛容に包まれ、山椒を半年間熟成させた“赤山椒”の異香によって、華やかさをまとう。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“伊勢海老 焼き茄子 鰹クリーム”

冷物の“伊勢海老 焼き茄子 鰹クリーム”で一休み。表面をそっと炙った伊勢海老と焼き茄子は、冷たいグラスの中でも香りが立ち、旨味も十分。花穂紫蘇や柑橘のジュレが、口の中を落ち着かせてくれる。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“牛ほほ 椎茸 醤油餡 和辛子 白髪葱 七味”

“牛ほほ 椎茸 醤油餡 和辛子 白髪葱 七味”は、黒毛和牛の頬肉のとろけるような食味と椎茸の滋味が互いを引き立てあっている。濃厚な醤油餡は、味のしっかりとした頬肉と椎茸の食味を深めてくれる。岩手県の白髪葱は、シャキシャキ感とフレッシュ感が出色。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“鹿沼蕎麦 雲丹 塩昆布 紫蘇胡瓜”

鷹見さんの地元の特産品を用いたのが、“鹿沼蕎麦 雲丹 塩昆布 紫蘇胡瓜”。豊かな香りをもち、歯切れのよい鹿沼蕎麦に、口溶けのいい雲丹や食感のいい胡瓜を合わせた。塩昆布のさりげない塩味も素晴らしい。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!食事は土鍋で供される

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“天然舞茸と秋鮭のご飯 いくら”

食事は、土鍋で供される“天然舞茸と秋鮭のご飯 いくら”。天然舞茸の閑雅な味わいと、秋鮭の俊味が存分に感じられ、仕上げにかけられた、たっぷりのいくらが非常に贅沢。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“ぶどうアイス 巨峰 ジンゼリー 松の実”

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!“椰子の白わらび餅”

甘味は“ぶどうアイス 巨峰 ジンゼリー 松の実”と“椰子の白わらび餅”。前者はぶどうアイスがさわやかで、炒った松の実の香りが秀逸。ジンのゼリーが大人の香味をもたらす。

鷹見さんの珠玉の料理に合わせて、ワインや日本酒もプレミアムなものが取り揃えられている。

純米大吟醸2種類、季節酒1種類、プレミアム日本酒2種類の“寅黒 日本酒セット”(1万7000円)と、シャンパーニュ2種類と白ワイン3種類の“寅黒 ワインセット”(1万9000円)がおすすめ。

〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!左から、“マイィグランクリュ エクストラ ブリュ”、“シャトーヌフ デュ パブ ブラン”、“ビルカール サルモン ブリュ ロゼ”、 “来福 純米大吟醸 超精米八%”

“マイィグランクリュ エクストラ ブリュ”は超辛口のシャンパーニュ。柑橘類やトーストを思わせる香りが心地よく、こまやかな泡立ちで輝きが際立つ。熟成感もあるので、どんな料理にもぴったり合う。“シャトーヌフ デュ パブ ブラン”は、珍しいシャトーヌフ・デュ・パプの白ワイン。スパイスが複雑に溶け込んでいて、南国果実の風味も感じられる。後半の方で提供されるもうひとつのシャンパーニュが、“ビルカール サルモン ブリュ ロゼ”。“少量逸品主義”を貫く家族経営のメゾンで、サーモンピンクの外観が華麗でエレガントな味わい。滋味のある伊勢海老との相性も抜群。

アラカルトで飲んでみたいのが、“来福 純米大吟醸 超精米八%”(180㎖ 1万3000円、720㎖ 5万1800円)。究極まで米を磨いたお酒で、驚くほどにフルーティー。1合でオーダーできるところは、なかなか少ない。

移転してから、ますますアップグレードした〈帝国ホテル 寅黒〉。数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる! 

 

 
Information

●〈帝国ホテル 東京〉帝国ホテル 寅黒
住所:東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル 東京 本館B1
営業時間:火~金曜17:00~23:00(最終入店20:30)
土曜12:00~14:30(最終入店13:30)、17:00~23:00(最終入店20:30)
定休日:日・月曜、祝日 ※月曜が祝日の場合は、土・日曜の営業時間が変更、月・火曜休み
TEL:03-3539-8224
URL:https://www.imperialhotel.co.jp/tokyo/restaurant/imperialhotel-torakuro
※サービス料込み

●グルメジャーナリスト 東龍さんの連載、記事はこちら!
グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!
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文=東龍 text:Toryu
1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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