『ボディガード』
製作年/1992年 監督/ミック・ジャクソン 脚本/ローレンス・カスダン 出演/ケヴィン・コスナー、ホイットニー・ヒューストン、ゲイリー・ケンプ
ボディガード映画の金字塔!
どんな犠牲を払っても、その相手を守る。陰のヒーローの側面を持つ仕事がボディガードだが、これ以上ないほどドラマティックに描いた映画といえば、タイトルもそのものの『ボディガード』だろう。殺害予告の脅迫を受ける人気女性シンガーのレイチェル・マロンを、レーガン大統領のシークレットサービスを務めた経験もあるフランク・ファーマーが警護することになる。トップスターらしく傲慢で自己中心的な面もあるレイチェルは、最初こそフランクの過剰な警護に辟易するも、すんでのところで命を救われ、彼への信頼は一気に加速。2人の関係も接近し、途中からは感動のラヴストーリーへと化していく。
レイチェル役で本作が映画初出演となったのが、すでに歌手として絶大な人気を誇っていたホイットニー・ヒューストン。彼女の主題歌『オールウェイズ・ラヴ・ユー』は映画とともに大ヒットした。ケヴィン・コスナーも、誠実でストイック、いざという時に最高に頼りになるフランク役を、これ以上ないほどカッコよく演じ、代表作のひとつになった。その後、舞台ミュージカル化され、2025年の時点でテイラー・スウィフトを主演候補にリメイク企画が進むなど、多くの人に愛され続けた一作。
『マイ・ボディガード』
製作年/2004年 原作/A・J・クィネル 監督/トニー・スコット 脚本/ブライアン・ヘルゲランド 出演/デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、クリストファー・ウォーケン
デンゼルなら絶対安心!
守られる側の存在が、か弱ければか弱いほど、ボディガードの使命感も強くなる。そんな事実を教えてくれるのが本作。誘拐事件が多発するメキシコシティ。富豪の9歳の娘ルピタを警護する仕事を引き受けたのは、元CIA特殊部隊のジョン・クリーシーだった。これまで暗殺任務を請け負ってきた彼にとって、少女のボディガードのような仕事は初めて。しかもクリーシーはアルコール中毒という問題も抱えていた。仕事と割り切り、ルピタに冷淡な態度もとるクリーシーだが、日常生活を共にするうちに2人の心は近づく。しかし、ルピタが誘拐され、クリーシーも重傷を負うという最悪のシナリオが待ち受けていた……。
現在のハリウッドスターの中でも“この人が守ってくれるなら安心!”という点で、おそらく最高位に挙げていいデンゼル・ワシントン。こうしたボディガード役はぴったりだと本作で実感。監督のトニー・スコットは本作を含め5本でデンゼルと組んでいる。ルピタ役は、『I am Sam アイ・アム・サム』で天才子役として有名になったダコタ・ファニングなので、デンゼルとの演技のケミストリーも見どころだ。後半は、誘拐犯に対する壮絶な復讐劇が展開。原作のタイトルが『燃える男』というのも納得するクライマックスが用意される。
『エンド・オブ・ステイツ』
製作年/2019年 監督/リック・ローマン・ウォー 出演/ジェラルド・バトラー、モーガン・フリーマン、ジェイダ・ピンケット=スミス、ニック
“満身創痍”のアクション&試練!
ボディガードの“究極’と言ってもいいのが、シークレットサービス。アメリカ大統領を警護する仕事なので、当然のごとく人並外れたスキルと精神力が要求される。クリント・イーストウッド主演による、タイトルもそのものの『ザ・シークレット・サービス』など映画の題材にもぴったりだが、その過酷さと有能さを伝えるのは、3本も作られた「エンド・オブ」シリーズだろう。主人公はシークレットサービスのリーダーとして大統領一家を見守っていたマイク・バニング。ある事故をきっかけに一線を退いていた彼が、未曾有の危機で現場に呼ばれ、1作目『エンド・オブ・ホワイトハウス』ではテロリスト集団に一人で立ち向かい、2作目『エンド・オブ・キングダム』では非常事態宣言のロンドンで大統領を護る。
そして3作目『エンド・オブ・ステイツ』は、長年の任務による後遺症に悩まされながら、大統領暗殺の濡れ衣を着せられるという、シリーズでも最大のピンチを迎えるマイク。巨大な陰謀と闘うという意味でもシリーズの集大成と言っていい。『300<スリー・ハンドレッド>』など、つねに不屈のヒーローを演じてきたジェラルド・バトラーにしても、本シリーズで強いられるのは“満身創痍”のアクション&試練。観ているこちらも、つねに歯を食いしばり、アドレナリンが上昇していく感覚を味わうことに。この3作目ではマイクが肉体と心に強いダメージを負っているので、ドラマとしての緊迫感も高い。4作目のプロジェクトも進行中だ。
『ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-』
製作年/2011年 監督・脚本/ウィリアム・モナハン 出演/コリン・ファレル、キーラ・ナイトレイ、デヴィッド・シューリス
痛快でロマンティック、それでいてシビア!
ギャングの仕事を続け、3年の刑期を終えたハリー・ミッチェルが、裏社会から足を洗おうと決意。パパラッチなどに悩む元トップ女優シャーロットのボディガードとして新たな人生をスタートする。しかし、あるきっかけでギャングのボスに気に入られ、仲間入りの誘いを断ったことから、ハリーの周囲が不穏になっていく。ハリー役にコリン・ファレル、シャーロット役にキーラ・ナイトレイというキャスティングから、痛快でロマンティックなムードも予感させつつ、かなりシビアな展開で、その意味でサプライズも多い一作だ。
『ディパーテッド』でアカデミー賞脚色賞を受賞したウィリアム・モナハンが脚本を手がけ、監督も務めた。元ギャングと女優という、別世界で生きてきた2人のもどかしい関係や、命の危険を感じた後の絆、ほのかな未来の夢を、うまくストーリーに盛り込み、アクション場面は非情に徹する。ブリティッシュ・ロックなど音楽の使い方がクールだし、コリン・ファレルのレザージェケットやスーツの着こなしがさりげなく粋(いき)だったりと、ハリウッド作品とは一線を画し、イギリス映画っぽさが濃厚なのも本作の持ち味だ。
『ヒットマンズ・ボディガード』
製作年/2017年 監督/パトリック・ヒューズ 脚本/トム・オコナー 出演/ライアン・レイノルズ、サミュエル・L・ジャクソン、ゲイリー・オールドマン、サルマ・ハエック
殺し屋を守るボディガード!?
基本的にボディガードは、政治家や有名人、弱者を身を呈して護ることが仕事。しかし本作で主人公のマイケルが護衛するのはプロの殺し屋・キンケイド。しかも過去に因縁のある仲。そしてシリアス系が多いボディガード映画にあって、コメディ色もたっぷりの点で異彩を放っており、“攻めた”一本として楽しませてくれる。ベラルーシの独裁者の裁判で、重要な証人となるキンケイドを、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所へ送り届けるマイケル。予想どおり、いくつもの難関が待ち構え、オランダの水路まで駆使したカーチェイス、ド派手な銃撃戦など、アクションがテンコ盛りの内容になっている。
本作を成功に導いたのは、メイン2人のキャスティング。ボディガードとしては有能だが、実直な性格が災いするマイケル役に、『デッドプール』のキャラも重なるライアン・レイノルズ。宿敵だったマイケルに護られるという微妙な立場のキンケイドで、サミュエル・L・ジャクソンは相手を食った怪演をみせる。そこにキンケイドの妻を怪しさたっぷりに演じるサルマ・ハエックも加わり、やりたい放題の大暴走、噛み合わない会話、おバカなノリで映画のテンポは最後まで快調。同じメンバーが再結集した続編『ヒットマンズ・ワイブズ・ボディガード』で、さらに過激度はアップした。
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