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CULTURE カルチャー

2025.10.11


【追悼】ロバート・レッドフォード 名作と理念が紡いだ軌跡【Vol.2】


『候補者ビル・マッケイ』(1972年)

レッドフォードは自由を抑圧する政治権力や社会構造、組織的不正に対して厳しい視線を投げかける人でもあった。彼が遺した映画にはその随所に問題提起が刻まれている。

なぜ、こういった意識が培われたのか。彼がよく口にするのは、子供の頃の忘れ難い記憶だ。周囲の大人たちは「大事なのは勝ち負けなんかじゃない」と言い続けた。しかし現実はどうか。世の中の全てが勝ち負けによって決定づけられているではないか。とりわけレッドフォードは幼い頃からスポーツを通じてこういった不条理に触れてきたこともあり、「社会の表と裏」「現実とまやかし」といったものに対する怒りが人一倍強いのだろう。

また、大学を中退してヨーロッパへ飛び出し、1年半ものあいだ自らをアウトサイダーの身に置き、俯瞰した位置からアメリカを見つめたことも非常に大きかった。とりわけパリに滞在した頃には、同世代の多くが政治や思想に興味を持ち、「君はどう思う?」と問いかけてきた。彼には返す言葉もなかった。そこで初めて己の無知を自覚し、アメリカの民主主義や政治体制に関する本を紐解きはじめたという。
 

  

 
傑作『大統領の陰謀』へ至る過程
『候補者ビル・マッケイ』(1972年)は、一人の精悍な若手弁護士が上院議員選挙の民主党候補に祭り上げられるシニカルな政治ドラマだ。選挙スペシャリストたちの指示や助言に従ううち、高く掲げていた理想や信念は徐々に打ち砕かれ、ついに当選結果が発表されたその時、主人公は「これから一体どうすればいいんだ?」と頭を抱える。ちなみに数十年後に続編が企画されたのだが、実現されることはなかった。再びシドニー・ポラックと組んだ『コンドル』(1975年)は政府の末端機関で分析業務に携わる主人公が組織の闇に呑まれ、孤独な戦いを余儀なくされるスパイ・サスペンス。息詰まる設定と語り口が話題を呼んだ。



『大統領の陰謀』(1976年)

そして何よりも重要な一作として映画史に名を刻むのが『大統領の陰謀』(1976年)である。この映画では、のちにニクソン大統領を権力の座から引き摺り下ろすことになるウォーターゲート事件の顛末が、真相を明るみにしたワシントン・ポスト紙の二人の記者の目線で描かれていく。

実はレッドフォードは、記者たちがポスト紙で一連のスクープを連発している頃から経緯を注意深く見守っていたという。そして、原作本が書かれる前の段階で彼らと接触し、映画化の可能性も含めて言葉を交わすことに。この時、本の執筆にあたって「事件に立ち向かった記者たちの取材目線」を活かした構成にした方が絶対いいとアドバイスしたのはレッドフォードらしい。「事件の経緯」だけを綴ろうとしていた記者たちにとって、これはまさに目から鱗の発想だった。

なるほど、二人の記者たちは、片方がユダヤ系、もう片方はワスプ。さらに彼らの政治的信条は正反対。全く相容れない二人が抜群のコンビネーションで真相に迫るところにこそ観客や読者を沸き立たせる面白さがあるのだと、生粋の映画人レッドフォードは早い段階から気づいていたのかもしれない。
 

  

 
時代を超えて輝き続けるアイコン

『スパイ・ゲーム』(2001年)


その後も史上最悪の刑務所を改革しようとする社会派映画『ブルベイカー』(1980年)では変わり者だが一切妥協しない所長役を熱演。監督作『クイズ・ショウ』(1994年)では彼自身が若い頃にリアルタイムで視聴していたクイズ番組をめぐるメディアの組織的不正を描いた。『スパイ・ゲーム』(2001年)ではシビアなCIAの諜報世界に生きる引退間際の男を体現して見せた。さらに監督作『大いなる陰謀』(2007年)は、上院議員、ジャーナリスト、大学教授という三者の視点でアメリカの対外政策の実態を炙り出そうとする意欲作である。

興味深いのは、70代後半になってからのマーベル作品、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)への出演だ。これまで無縁だったアメコミというジャンルではあるものの、しかしそこで描かれるのは、巨大な組織内で進行する陰謀であり、それを暴こうとするキャプテン・アメリカの孤独な戦いである。『コンドル』や『大統領の陰謀』を彷彿とさせるモチーフが本作には脈々と息づいている。

かくなる作品に、従来の「真実を追いかける側」とは真逆の、追い詰められる悪役で出演するところが極めて粋だ。これもまた、幾つになっても颯爽と挑戦を続ける「レッドフォードらしさ」と言えるのではないだろうか。
Vol.3に続く

参考資料:
「アクターズスタジオ・インタビュー」
『大統領の陰謀』ブルーレイ収録ドキュメンタリー映像
https://www.theguardian.com/film/2025/sep/17/robert-redford-sundance-american-independent-cinema
https://variety.com/2025/film/news/robert-redford-dead-all-the-presidents-men-1236520246/
 

  

 

 
文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
Photo by AFLO
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