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CULTURE カルチャー

2026.01.10


【追悼】ロブ・ライナー監督/名匠が紡いだ鋭い社会派作品たち Vol.3

 

 

『ア・フュー・グッドメン』(1992年)

生涯にわたって貫いた社会派としての一面
 
ロブ・ライナーを定義づけるもう一つ特徴が『社会派』としての側面だ。リベラルな政治思想の持ち主だった父カールの影響もあって、彼自身、生涯にわたって様々な問題に対して率直な発言を行い、とりわけLGBTQの人々の権利擁護、教育問題、環境問題、貧困対策などへのコミットメントは、彼の社会活動家としての表情を鮮明に映し出した。また、トランプ政権下では報道番組などへの出演のほか、ポッドキャスト番組などを介して政策への反対意見を展開し続けた。

そうやってアメリカ社会を揺るぎない視点で見つめ続ける姿勢は、監督作にも一貫して現れている。例えば90年代を代表するヒット作となった『ア・フュー・グッドメン』(1992年)は、米海兵隊内での暴力的制裁が引き起こした一人の兵士の死をめぐって、それが上官からの命令だったか否かを法廷で解き明かしていくスリリングな一作だ。トム・クルーズ演じる中尉とジャック・ニコルソン演じる司令官との”正義”をめぐる直接対決は歴史的名場面として人々の記憶に刻まれている。

 
  

 

『ア・フュー・グッドメン』(1992年)撮影中のロブ・ライナー監督

脚本を手掛けたのはアーロン・ソーキン。今でこそ『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)などの名脚本家として知られる彼だが、もともと戯曲として書かれた本作が草稿段階で注目され、ライナーが監督を引き受けたことで映画化が本格始動。ソーキンの映画界進出の道が開かれた。

その後、ソーキンは『アメリカン・プレジデント』(1995年)で再びライナーと組み、妻を亡くした大統領(マイケル・ダグラス)と一人のロビイスト(アネット・ベニング)が紡ぐラヴストーリーと、銃規制や環境対策などをめぐる政界内での駆け引きとを絡ませた巧みなストーリー展開が高評価を受けた。

差別や権力の横暴を許さない、断固たるまなざし
ロブ・ライナーの社会派映画はまだまだ続く。『ゴースト・オブ・ミシシッピー』(1996年)では、公民権運動家の暗殺をめぐって、被害者の妻と地方検事が30年がかりで犯人の白人至上主義者を訴求していく力強い物語だ。アカデミー賞でジェームズ・ウッズが助演男優賞にノミネートされるなどの評価を集めた力作であり、差別主義や人権迫害にNOを突きつけるライナーのリベラルな心情が強くあふれた名作と言えるだろう。

さらに2010年代には、ケネディ大統領暗殺を受けて副大統領の座から大統領への昇格就任という運命がもたらされたジョンソンを主人公に据えた『LBJ』(2016年)や、アメリカ政府がイラク戦争に舵を切った背景を明るみにしようとするメディアの孤独な戦いを描いた『記者たち』(2017年)など、鋭いメッセージ性を秘めた作品が顕著となった。いずれも第一期トランプ政権の誕生前後に公開された作品だ。

亡くなったいま改めて鑑賞すると、これらの作品がライナーからアメリカ国民へ向けての「歴史を忘れるな」という遺言のようにすら感じられる節がある。
 

  

 


ライナーの死去に際して思い起こされるヒューマニズムあふれる一作
彼のフィルモグラフィーを俯瞰するとき、ヒット作は主に80年、90年代に集中していることに気づく。だが、筆者の個人的な印象で言わせていただくなら、誰もが「もはやロブ・ライナーにヒット作は作れない」と感じていた00年代に『最高の人生の見つけ方』(2007年)で予想外のヒットを叩き出したことは非常に忘れがたい一場面だ。

ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンという重鎮たちへの演出も、コミュニケーション力豊かなライナーに任せればお手のもの。病室で出会った主人公たちは、癌を宣告されながらも『バケット・リスト(やりたいことリスト)』をこしらえ、共に励ましあって、やり残したことを一つずつ達成していく。そうしているうちに彼らは死に向かって歩むのではなく、生きるために全力で生き、あらゆる瞬間を惜しみなく存分に楽しもうとする人へと変貌していく。

かつて10代の少年たちの友情と冒険を描いた『スタンド・バイ・ミー』から約20年の月日を経て、ライナーがこの映画で人生の最晩年における友情と冒険をヒューマニズムたっぷりに描いてみせた点に、私はとても爽やかな感動を覚えた。

この手がける分野の幅広さ。率直さ。登場人物へ注ぐ愛情と温もり。深刻な題材の中に香る絶妙なユーモア。観る人を前向きな気持ちにさせてくれる作品としての佇まいーーー。これぞ我々が心から愛した「ロブ・ライナー節」と呼べるものだろう。

彼がバケット・リストを作る暇すら与えられぬまま、運命をもぎ取られるようにこの世を去ったことはあまりにも悲しい。第二期トランプ政権が勢いを強める今、人々に向けて話したいこと、伝えたいこと、表現したいことはまだまだたくさんあったはず。

彼の遺した珠玉の作品たちが、彼に成り代わって多くの感情や感動、そして人と人とが尊厳を持って互いに思いやる気持ちを、これからもずっと伝え続けていってくれますように。そう強く願わずにいられない。

【参考資料】
https://variety.com/2025/tv/news/rob-reiner-san-francisco-improv-smothers-all-in-family-1236611384/

https://www.theguardian.com/film/2025/dec/15/rob-reiner-obituary

https://www.nytimes.com/2025/12/16/opinion/culture/stephen-king-rob-reiner-stand-by-me.html

https://nypost.com/2025/12/17/entertainment/stephen-king-recalls-hugging-rob-reiner-after-watching-stand-by-me-in-tribute-to-director/

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文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
photo by AFLO
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