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CULTURE カルチャー

2026.01.10


【追悼】ロブ・ライナー監督/名匠が描いた伝説的ラヴロマンスの裏側 Vol.2

 

 

『恋人たちの予感』(1989年)

『恋人たちの予感』でラヴロマンスの新境地を切り開く
ロブ・ライナーの演出術には一つの特徴がある。自身がコメディ俳優出身ということもあり、まずは大部分を役者に任せる。その上で、作品の随所にユーモアをまぶし、常に淀みなくリズミカルであることを心がける。そして、もしも出演者が演技の方向性に悩むことがあったなら、ライナー自らが演じてみてヒントを与えることもしばしばあったという。

『スタンド・バイ・ミー』に続くロマンス・アドベンチャー映画『プリンセス・ブライド・ストーリー』(1987年)は、昔ながらの御伽噺を題材にしながらも、斬新な展開、突飛なキャラクター、語り継がれる名セリフ、お姫様役のロビン・ライトの疾風のごとく突き進む存在感が鮮烈な印象をもたらした。

そして、ライナーをさらなる高みへ導いた作品こそ『恋人たちの予感』(1989年)である。1977年、シカゴの大学を卒業した友人どうし(ハリー&サリー)が一台の車に同乗してニューヨークへと向かう。二人はお互いに何ら恋心を動かされることもなく、むしろ恋愛に関して価値観を衝突させたまま別れを告げるのだが、しかし運命はこれで終わらない。偶然の再会を幾度も繰り返しながらたどる12年は、彼らの関係をどのように変えていくのかーーー?

従来のラヴコメと大きく異なるのは、ロブ・ライナーの実体験がダイレクトに反映されている点だ。当時、彼は離婚のショックを引きずるあまり、新たな出会いや関係性を長続きさせることができずにいた。これを題材に何か映画が作れないだろうか。そんなアイデアに客観的かつ鮮烈な視点をもたらしたのが脚本家ノーラ・エフロンだった。

企画開発の過程でエフロンとライナーは、男女の友情、恋愛、結婚、セックスに関する考え方の違いを忌憚なく論じ合い、まるでハリー(ビリー・クリスタル)というキャラクターがライナーの心情を代弁し、サリー(メグ・ライアン)がエフロンの意見を代弁して対話を成すかのように脚本が織り成されていったという。
 

  

 

『恋人たちの予感』(1989年)撮影中のロブ・ライナー監督

80年代の壁を突き破った伝説の名場面
この映画で面白いのは、二人の主人公が恋人関係ではないからこそ、異性の本音をストレートにぶつけ合えている点だ。

とりわけ、伝説的な名場面として知られるのがカッツ・デリカテッセンでのワンシーン。セックスの際に少なからぬ女性が「オーガニズムに達したフリをしたことがある」という命題に関してハリーは「そんなの信じられない!」と返し、サリーは「だったらこの場で証明してみせるわよ」と言わんばかりに、他の食事客の面前で大胆にも喘ぎ声を上げ始める。結局、絶頂に達するマネを最後まで堂々とやり遂げてみせた彼女を、周囲の女性たちは変人扱いするどころか賞賛と共感のまなざしで見つめ、一人のレディにおいては「あの人(サリー)と同じ飲み物を(I'll have what she's having.)」と注文するほどーーー。

いま振り返ってもこの描写は、当時の社会文化や、映画描写の壁を大きく突き破った瞬間だった。と同時に、これが全く下品に見えないのも作り手たちの腕の見せどころ。セリフの秀逸さもさることながら、メグ・ライアンの颯爽とした存在感がなんとも素晴らしい。ちなみに「同じ飲み物を」と注文するのはロブ・ライナーの実のお母上のエステルだというのが、これまた粋だ。

新たな出会いが結末を変えた……!?
本作には最終段階で大きなミラクルが巻き起こった。離婚してこの方、なかなか真剣交際したいと思える相手と巡り会えなかったライナーは、本作の製作中に、初めて運命的なものを感じる女性と出会うことができた。それが後に妻となる写真家のミシェル・シンガーだった。

自身の身に起こったハッピーエンドもあって、本来ならハリーとサリーが再び街で出会って、そのまま言葉を交わして別方向へ歩いていくはずだったラストは大幅に修正。大晦日のダンスパーティーを舞台にした、誰もが拍手を送りたくなるほど心温まる名場面へと結実したのである。

それから4年後、今度はノーラ・エフロンが監督した大ヒット作『めぐり逢えたら』(1993年)に、主人公の友人役として出演する、ずんぐりむっくりなロブ・ライナーの姿があった。

これ以降にも、ライナーが監督作として手掛けたラヴストーリーは数知れず。『アメリカン・プレジデント』(1995年)、『ストーリー・オブ・ラブ』(1999年)、『あなたにも書ける恋愛小説』(2003年)、『迷い婚』(2005年)、『最高の人生のつくり方』(2014年)など、様々な世代、境遇、テーマに及ぶ。

生涯にわたって愛についてこだわりを持ち、その本質について率直に問い続けてきた人。それもまたロブ・ライナーの重要な一面と言えるだろう。

Vol.3に続く

【参考資料】
https://variety.com/2025/tv/news/rob-reiner-san-francisco-improv-smothers-all-in-family-1236611384/

https://www.theguardian.com/film/2025/dec/15/rob-reiner-obituary

https://www.nytimes.com/2025/12/16/opinion/culture/stephen-king-rob-reiner-stand-by-me.html

https://nypost.com/2025/12/17/entertainment/stephen-king-recalls-hugging-rob-reiner-after-watching-stand-by-me-in-tribute-to-director/

『恋人たちの予感』DVD収録映像
『ア・フュー・グッドメン』ブルーレイ収録映像

 
文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
photo by AFLO
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