歴史と自然が織りなす日本の原風景、島根&広島を旅する!
日本の原風景が息づく島根県と広島県は、神話の時代から現代に至るまで、多くの物語を刻み続けてきた。そんな歴史的名所を巡る旅は、多くの人に特別な体験や気づきを与えてくれる。さあ、日本文化の深奥へと足を踏み入れてみよう。
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広島県尾道市に位置する千光寺(せんこうじ)は、歴史ある寺院であるとともに美しい景色が楽しめる観光名所として知られている。千光寺の創立は平安時代初期の大同元年(806年)と伝えられていて、弘法大師(空海)によって開かれた寺院だという。
千光寺の本堂は、山の急斜面に立つ“懸造り(かけづくり)”という建築様式であり、崖の上に建てられた本堂からは尾道水道や市街地を一望できる。「尾道を見守る寺院」として地元の信仰を集めているのはもちろんのこと、千光寺頂上展望台から瀬戸内海を一望できるそのロケーションは多くの観光客が訪れる名所ともなっている。風光明媚な千光寺には、今も昔も多くの文人墨客(ぶんじんぼっかく)が訪れているそうだ。
また、千光寺の名前の由来とされる“玉の岩”の天頂部に存在したという光る玉、“玉の岩伝説”や、多くの文学者や詩人たちの作品が刻まれた石碑が点在する“文学のこみち”、“日本の音風景百選”に選ばれた鐘楼(しょうろう)といった文化的名所も見どころとなっている。
尾道の街並みや瀬戸内海、点在する島々を一望できる絶景
その昔、存在したという“玉の岩伝説”の光る玉
日本文学の世界に触れることができる“文学のこみち”
“時の鐘”千光寺の鐘楼
●尾道大宝山 千光寺
広島県尾道市東土堂町15-1
・ひろしま公式観光サイト「Dive!Hiroshima」
(https://dive-hiroshima.com/)
・ひろしま観光アプリKINSAI
(https://dive-hiroshima.com/news/news-41431/)
広島県福山市の天心山神勝寺は禅の教えをより多くの人に開かれたものとして体験できるように構想された寺院。一歩足を踏み入れると、四季折々の自然が織りなす美しい庭園が迎え入れてくれる。
神勝寺 禅と庭のミュージアム“庭園”
禅の修行僧の食事作法を体験できるのも、禅寺ならではの魅力のひとつだ。僧侶が修行を行う七堂伽藍のひとつが庫裏(くり)であり、食事を調える建物である。この五観堂では修行僧の作法で食事を体験することができる。
修行僧にとってご馳走とされる神勝寺うどんは、持鉢(じはつ)と呼ばれる五枚組の器と太くて長い“雲水箸”を使っていただく湯だめうどんだ。
食事は黙食とし、咀嚼音すらも立てずに静かに頂く。それが修行僧にとっての食事であり、目前の馳走をありがたく味わうものなのだ。味に派手さはないものの、ひと口ひと口を丁寧に味わうことで、食事そのものへの感謝が生まれ、心が浄化されるように感じられる。
神勝寺では坐禅を体験して、心の静けさと内なる自己に向き合う時間を過ごすことができる。しかし、そうはいってもはじめての人には不安があるだろう。でも、大丈夫。僧侶がちゃんと坐禅の基本的な姿勢や呼吸法について説明してくれる。足の組み方や背筋の伸ばし方、目線の位置など細かいことを教わるため、はじめてでも問題なく取り組むことができる。
まず足を組むときは両足をもう片方の太腿に乗せる結跏趺坐(けっかふざ)または片足のみを同じく太腿に乗せる半跏趺坐(はんかふざ)の姿勢をとる。そうすることで自然と背筋が真っ直ぐに伸び、呼吸のしやすい姿勢になる。きちんと理にかなっているのだ。
また、目は“半眼”と呼ばれるいわば半開きの目の状態で心を乱さず一点を見つめる。如来や菩薩などの仏像を想像するとわかりやすいだろう。短い鐘の音で坐禅がスタートする。教わった呼吸法を意識して、雑念を取り払うことで内なる自己と向き合う時間となる。静かな空間で自然の気配を感じながら余計な思考を手放し心が整えられると、無の心という柔らかな心を養うことができる。
ちなみに坐禅というと誰もが頭に浮かべる、僧侶が修行者の肩や背中を叩く棒“警策(けいさく)”は本プログラムでも使用されるが、もし叩かれることを希望する場合は、僧侶が近くを通るときに手を合わせ、お辞儀をすることで体験できる。坐禅中に急に叩かれるわけではないので安心してほしい。
●神勝寺 禅と庭のミュージアム
広島県福山市沼隈町大字上山南91
・ひろしま公式観光サイト「Dive!Hiroshima」
(https://dive-hiroshima.com/)
・ひろしま観光アプリKINSAI
(https://dive-hiroshima.com/news/news-41431/)
奥出雲の割烹〈すぎ原〉は、鉄の歴史村である島根県雲南市吉田町に店舗を構える本格京割烹料理店。長年京都で修業を積んだ主人による、地産品を豊富に用いた料理が魅力だ。雲南市は立地的に中国山地の山の幸と、日本海にも近く海の幸にも恵まれているのが特徴。
〈すぎ原〉がプロデュースする松花堂ランチは、地産品を使った季節を感じられる美食を味わえる。
雲南の四季を感じながら、まるで磨き上げられた宝石のような美しさを秘める松花堂ランチで、自然豊かな雲南の山と海の幸を満喫してほしい。
●割烹 すぎ原
島根県雲南市吉田町吉田2611-1
TEL:0854-74-0118
現代の名匠・久保善博による日本刀。そこにはユニークなストーリーがある。
大学院にてバイオ研究で成果を収め、日本古来の日本刀を現代に再現したいという思いから、大学院修了と同時に刀匠・吉原義人に入門したという異例の経歴を持つ。以後、刀匠として数々の賞を受賞し、現在は日本に十数名しかいないとされる確かな技量と実績を持つ刀匠しか選ばれることのない、“無鑑査刀匠※”の有資格者である。
※“無鑑査刀匠”とは作者の過去の実績に照らして、公益財団法人日本美術刀剣保存協会が主催する“新作名刀展”において主催者側の審査・鑑査なしで出品が可能となる。
今回は、特別に久保氏が作刀した本物の日本刀を実際に手に持って久保氏の解説を聞きながら鑑賞させていただいた。光にかざして日本刀独特の美しい“刃文(はもん)”や、名匠の手により現代に復活させた技術である“映り”を見るなど、日本刀の魅力をしっかりと味わう。
久保氏がはじめて作刀した作品。師匠の作風をそのまま忠実に再現して、とても華やかな刃文に仕上げたそうだ
そして、刀には鑑賞の3つの要素があるという。それは“姿”“刃文”“地鉄(じがね)”の3つだ。
まずは日本刀そのものの幅や厚み、全体の姿を見る。そして次に、刃文※1と地鉄※2を見る。
※1 刃文とは刀を鍛える際の焼き入れによって生じる模様。
※2 地鉄とは刀身の地肌部分の鋼。日本刀の原材料である玉鋼(たまはがね)の鍛錬によって生じる独特の模様や質感。
刃文は刀を光に反射させると、一番眩しいところの前後に刃文がよく見える。日本刀には作品ごとに全く違う刃文が存在する。それはふたつと同じ刀が存在しないといわれる所以ともされる特徴のひとつである。
地鉄の肌の模様は、玉鋼の質や鍛錬の回数などによって、一振りごとに異なる個性が存在するのだという。
“映り”とは刃文の影のように、峰側に白い霞のように見えるもののことをいう。鎌倉時代以前の備前刀によく見られる特徴のひとつで、幕末以降“映り”というのはなかなか再現ができなかった。
“映り”がある刀のほうが見たときにはるかに刀の色気や鉄の質感が、そうでない刀と全く異なるといわれていて、はじめて日本刀を鑑賞した人ですら、“映り”がある刀とない刀を見たときに「映りがあるほうが色っぽい」、「なんか妖艶な感じがする」と感想をいうほど、それだけ刀の価値が大きく変わる特徴のひとつなのだという。
日本刀の作刀技術は一子相伝に近く、わざわざ技術書など残すこともない。刀匠によっては弟子にも教えない場合もあるのだという。つまり刀匠が亡くなったら、その技術も失われる。そうして“映り”は日本刀の歴史から徐々に姿を消していき、幕末以降ずっと技術が途絶えていた。
そして時は流れ、戦後に刀鍛冶たちはなんとしても“映り”を再現させるべく研究を重ね、ようやく出せるようになっていったのだ。“映り”の種類は何種類もあり、久保氏は「たぶん6種類ぐらいのやり方があると私は思ってますが、そのうちの4種類はやろうと思えばできる」と教えてくれた。
久保氏は「私が刀を見てもらって感じてほしいことは、 刀とは最強の武器でありながら、宝石のように美しいという点。強さと美しさを兼ね備え、世界最高の切れ味と世界で最も美しい刃物、それが日本刀なのです。それを実際に見て、感じてほしいと思います」と語った。
現代最高峰の刀匠が作り出す、日本が世界に誇れる日本刀という美術品。是非とも一度手にとり鑑賞してほしいと思う。
・「日本刀体験(出雲鉄師の聖地×現代最高峰の名刀匠による至高の日本刀体験)」
●問い合わせ:エクスペリサス株式会社(担当:増田)
TEL:03-4405-5456
島根県・出雲の湯の川温泉は、川中温泉(群馬)・龍神温泉(和歌山)と並び“日本三大美人の湯”と称されている温泉だ。
草菴(そうあん)では源泉掛け流しで、加温や加水・循環等はいっさい行っていない。ナトリウム・カルシウム硫酸塩泉・塩化物温泉・ホウ酸が多く含まれたアルカリ性泉質で、肌がツルツルになると評判が高いほか、神経痛・筋肉痛・関節痛への効能も謳われている。
草菴では、出雲の四季が織りなす地元産の野菜をはじめ、新鮮な日本海の幸を使った料理を提供している。草菴でしかできない体験をぜひ味わってみてほしい。
“日本三大美人の湯”個室露天風呂
新鮮な日本海の幸を使ったコース料理
●出雲・湯の川温泉 湯宿 草菴
島根県出雲市斐川町学頭1491
・島根県観光公式観光情報サイト「しまね観光ナビ」
(https://www.kankou-shimane.com/)
島根県出雲市にある出雲大社は、縁結びの聖地として知られる神社。
国津神(くにつかみ)である大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が御祭神として祀られており、天津神(あまつかみ)である天照大神との“国譲り神話”で知られる、島根県屈指の観光名所だ。
全国的にも珍しい約900mの下り参道では、祓社(はらえのやしろ)で穢れなどをお祓いし、本殿へと向かう。
出雲大社の御本殿は、大社造という日本最古の神社建築様式で建立されている。
拝殿の西側に位置する神楽殿には、有名な“大しめ縄”がある。全長13.6m、重さは5.2tと日本最大級のしめ縄で、出雲大社に訪れた際には必ず見たいスポットのひとつだ。
ところで、旧暦で10月を意味する神無月は、全国の神々が出雲大社に集い会議を行うため“神が留守の月”という意味で呼ばれるようになった。しかし、逆に出雲では神が集うため神在月(かみありづき)と呼ばれている。
出雲大社は縁結びの聖地であることは上述したが、その理由は神在月に八百万の神々が集い、縁結びの会議を行うことに由来する。
縁結びとは、何も男女の関係だけではない。友人同士、企業と企業の関係といったあらゆる人々を取り巻く縁のことを指している。それらを集まった八百万の神々が大国主大神の前で縁結びについて会議を行ったことから、大国主大神は縁結びの神として、出雲大社は縁結びの聖地として広く広まっていくことになった。
「因幡のしろうさぎ神話」で有名な、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)
・島根県観光公式観光情報サイト「しまね観光ナビ」
(https://www.kankou-shimane.com/)