〈オメガ〉のパリ2024 アンバサダーが語ってくれた、 宇宙を目指すパラアスリートと “スピードマスター”の運命的な関係とは?
パリ2024 パラリンピックにて、男子400m自由形と男子100mバタフライの視覚障害クラスで銅メダルを獲得した富田宇宙選手。〈オメガ〉のパリ2024 アンバサダーとして2大会連続のメダリストとなった富田選手は、世界的なトップスイマーである一方、物心ついた頃から宇宙飛行士として宇宙に行くことを夢見て、現在は一度は諦めかけたその夢に向かって再び走り続けている。そして、だからこそ常に誇り高く身に纏っている“スピードマスター ムーンウォッチ”がよく似合う。そんな富田選手に“スピードマスター”という時計に対する特別な思い、そして胸に抱いている夢について語ってもらった。
幼い頃からずっと憧れてきた
宇宙という存在に対する思い
〈オメガ〉のパリ2024 アンバサダーの一人であるパラアスリートとして、2大会連続のメダリストの称号を獲得した富田宇宙選手。16歳で徐々に視野が狭くなって失明に至る難病であることが発覚して徐々に視力が失われていったが、スポーツでも仕事でも健常者の中で人並み以上の成果を出そうと努力を続け、パラアスリートとしての競技活動を通じて多様性理解や共生社会実現を推進する活動に力を注いできた。その一方で、2022年には幼少期からの夢であった宇宙飛行士になる挑戦も再会し、日本人の視覚障がい者として初の無重力飛行実験にも参加している。まずは、そんな富田選手にとって“宇宙”とはどんな存在なのかを聞いてみた。
「小さい頃から好奇心や探究心が強かったんです。宇宙飛行士という仕事に憧れたのも、宇宙を目指す人たちは、技術者の方々も含めてそういった好奇心や探究心に突き動かされてそこに至る方が多いんだろうなって思っていて。もちろん、宇宙開発はそれ自体が人の役に立つ目的もありますが、宇宙って結局はそこが大好きな人たちが集まる場所なんだと思うんです。だからこそ、僕も自分の好奇心や探求心の赴くままにそこに集まるみなさんと一緒に宇宙を目指せたら、最高に楽しいだろうなって思うんですよね。宇宙については、これまでの研究でわかってきていることもありますが、まだまだわからないことがたくさんありますよね。そこにあるであろう、人類がまだ辿り着いていない真理を知りたい、という探究心が宇宙に向かう人たちを突き動かしているのではないでしょうか。だからこそその挑戦自体が、他には代え難いパワーというか、魅力なんだろうと思います」
運命的なものを感じてしまった
“スピードマスター”の存在
そんな富田選手がに身につけている“スピードマスター ムーンウォッチ”は、人類と宇宙の歴史において重要な役割を果たしてきた時計。アンバサダーとして自分自身が手にするまで“絶対的な憧れの時計“だったという。
「宇宙好きからすると、“スピードマスター ムーンウォッチ”は宇宙飛行士のユニフォームみたいなものというか、言うまでもなく当然欲しい時計なんです(笑)。小さい頃から、宇宙飛行士たちが身につけてきたことも知っていましたし、大人になってからお会いした宇宙飛行士の方も、この時計とともに宇宙に行ってきた方でした。その結びつきの強さはずっと感じてきましたね。性能の面でもNASAの耐久試験に耐えたということで、単なる高級時計とは一線を画す本質的な信頼性があり、その品質の部分、時計としての強さも魅力の一つだと思います」
そんな憧れの時計を〈オメガ〉が託してくれたことに対し、運命的なものを感じたという。
「僕は目が見えなくなったことで宇宙に行くことを諦めました。どうせ見えないからということで時計を身につけることもなくなっていました。その後しばらくは、一歩も踏み出せないような時期が続いたのですが、徐々にパラリンピックという道を歩むようになり、今は選手として第一線を走り続けています。そんな自分を、〈オメガ〉さんが見つけてアンバサダーに指名して下さった。全く別の道を走っていたのに、ずっと憧れていた時計にたどり着くことができた、という感覚でしょうか。自分で買うことはいつでもできるけれど、〈オメガ〉さんが僕のことを知ってくれて、直接託していただけたことに運命を感じて感動しましたし、同時に頑張らなくてはという勇気もいただきました」
実際、自分自身で購入を考えたこともあるが、思いとどまったことに今は意味を感じているのだという。
「時計を購入する機会があって、『僕が欲しい時計ってなんだろう』と考えたときに、やっぱり〈オメガ〉の“スピードマスター ムーンウォッチ”だなって真っ先に浮かんだんです。だけどふと“今の自分が買う時計じゃないな”って、その時は思ったんです。もっと本気で宇宙に行こうとしている自分でなきゃふさわしくない。もっと本気になってから手に入れて、それをつけて宇宙に行きたい。そのときは競泳選手としてパラリンピックを目指していて、宇宙への再チャレンジはまだ始めていなかったので、そう思ったのかもしれません。そんな出来事を経て、このような形で〈オメガ〉さんから、その時計をいただく日がくるなんて夢にも思いませんでした。なんだか逆に、宇宙を目指しなさいと言われたような気がして、運命的なものを余計に感じてしまいました」
宇宙という場所に対して
思い描いている夢とは?
オメガブティック 銀座本店を訪れ、ウォッチ グループ ジャパン 株式会社 オメガ事業本部長 パンソン麻理さんからメダル獲得を祝う花束を受け取った富田選手。火星を視野に登場した“スピードマスター X-33 マーズタイマー”があることも知り、「〈オメガ〉が未来を見せてくれている」と嬉しそうに語っていた。
そんな富田選手は、宇宙という場所でどんなことを成し遂げたいと考えているのだろうか。
「水泳をやっていて思うのは、水泳ってすごくバリアフリーな世界だということなんですよね。目が見えない人も手足が使えない人も、同じ場所でみんなで泳いで練習を一緒に楽しめるというのが、パラ水泳の世界に入って一番すごいと感じたことなんですよね。そこから考えると、実は宇宙もバリアフリーなんじゃないかなって思ってるんです。水の中がなんでバリアフリーかというと、浮力の中で漂えるからですよね。そう考えると宇宙の無重力空間は、もっと バリアフリーな世界なのかなって。
最近になってヨーロッパの宇宙機関も障害のあるアスリートを宇宙飛行士として認定しましたが、宇宙空間ではいろんな人が義足や車椅子などを使わず、障害に関係なく活動できる。そういう可能性を宇宙は内包しているんだと僕は考えています。そしてそういったことを宇宙から伝えていくことによって、地球上におけるダイバーシティ理解の必要性についてより鮮烈に問題提起し、考える機会を作る力に繋がっていくのではないかと思っています。
実際のところ宇宙開発には、ダイバーシティ理解の実現をリードしてきた歴史的側面があり、地球上では紛争が絶えない中でも、国際宇宙ステーションでは多様な属性のクルーたちが互いの違いを受け入れ合って協力して活動してきました。そういった共生社会をリードしていくアイコンとしての意義も、宇宙に対して感じているんです。宇宙ステーションのような狭い空間でいろんな人が一緒に協力しあって生活している。それを地球に置き換えて考えれば、みんなが協力して生きていけるのではないか。そういったメッセージを伝えられる大きなインパクトを秘めているのではないかと思っています。
僕がパラリンピックを通して伝えたかったことも、そういった色々な人が共に生きられる社会の可能性を示したいという部分ですので、僕の中では宇宙で成し遂げたいと思っていることも、一貫したチャレンジの道の先にあるものなんです。僕自身にできることは本当に小さなことですが、それがもっと大きな波になっていくことを思い描きながら活動を続けていきます。そして今は宇宙にまだ行っていない人として“スピードマスター ムーンウォッチ”を身につけていますが、ゆくゆくは宇宙に行った人としてこの時計を見つけたい。それもまた大きな夢の一つです」
富田選手が愛用している
“スピードマスター”はこれ!
月面で着用された第4世代のスピードマスターのデザインからインスピレーションを得た、“スピードマスター ムーンウォッチ”。文字盤の外周と内周で段差が設けたステップダイアルが特徴的で、“ドットオーバー90(90の数字の上に刻印されたドット)“など時計愛好家に親しまれているディテールも満載。ケース径42㎜、手巻き、SSケース&ブレス、50m防水。107万8000円(オメガ)
富田 宇宙
1989年、熊本県生まれ。宇宙飛行士を目指して九州の名門・済々黌高等学校に進学するも、16歳のときに失明に至る難病であることが発覚。徐々に視力を失いながらも障害を強みに変える生き方を追い求め、メーカー系のソフトウェアエンジニアだった2013年にパラリンピック東京大会の招致をきっかけに、パラアスリートの競技の道へ。2017年に体育大の大学院へ進学し、体系的なパラスポーツの知識を習得し、東京2020大会でパラリンピックで400m自由形及び100mバタフライで銀メダル、200m個人メドレーで銅メダルを獲得。2024年には2度目のパラリンピックとなるパリ大会で、男子400m自由形と男子100mバタフライで銅メダルを獲得した。
●オメガ
TEL:0570-000087
URL:https://www.omegawatches.jp
photo : Takashi Ikemura compisition&text : Takumi Endo