140周年を迎えたスイスの高級時計ブランド!
〈エドックス〉は“高防水”のパイオニアであり続ける
1884年にスイスのビール/ビエンヌで創業した〈エドックス〉。品質の優れた懐中時計で名を馳せた後、1950年代より腕時計製造に軸足を移してからは過酷な環境下でも計時機能の精度を保てる高性能な時計づくりに注力。特筆すべきは秀でた防水性を持つ時計だ。世界初の特許を取得した防水機構を開発するなどの技術力を有し、クロノオフショア1、ネプチュニアン、デルフィンといったダイバーズウォッチを生み出してきた。2006年からは海のF1と称されるパワーボートレースのオフィシャルタイムキーパーを務め、優れた機能性や信頼を世界へと発信している。そうした異業種とのコラボレーションなど、〈エドックス〉のブランド戦略を構築してきた当事者であるクリスチャン・オッツ氏が来日したとの報を聞き、話を伺った。
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「〈エドックス〉は今年で140周年という節目を迎えることができました。二度にわたる大戦やクォーツショックといった激動をくぐり抜け、今日まで私たちが時計作りに邁進できているのは、ブランドに関わってきた多くの関係者が努力してくれたおかげ。感謝の気持ちでいっぱいです」
「パワーボートレースのオフィシャルタイムキーパーを務めた経験から、様々なアイデアやヒントをもらいました。デザイナーたちと意見を重ねていった結果、ダイバーズとしての実用性を高める新たなテクノロジーとして、独自のロック機能を開発することにしたのです」
ベゼルをロックできる仕組みを備えた時計は他にも存在する。しかし、両方向に回転するベゼルと組み合わせていることが多く、逆回転防止&ロック機能というダブルの安全性を備えたものは珍しい。
「ダイビング中も状況を確認しやすいよう、スライダーは深海でも見やすいオレンジで表現しました。ベゼルの面取り部分を大きくし、従来よりもエレガントな印象を強めたことでも新鮮さをもたらしてくれると思います」
次に取り出した“クロノラリー スポーツマン クロノグラフ オートマティック”は、1972年に発売した“スポーツマン クロノグラフ”に着想を得て開発したというレトロフューチャーなモデルだ。
「〈エドックス〉は多くのラリーレースでもオフィシャルタイムキーパーを努め、モータースポーツとの関わりを大切にしてきました。ビンテージルックの時計が欲しいというファンの声を聞き、70年代らしいスタイルを持つ“スポーツマン クロノグラフ”に白羽の矢を立てたのです」
トノー型ケースやドーム型風防、非円形のバイコンパックスはベースモデルを踏襲しつつ、約62時間のパワーリザーブを誇る新型の自動巻きムーブメントを搭載。防水性も、もとは4気圧/40m防水だったものを30気圧/300m防水へと向上させている。“クロノラリー スポーツマン クロノグラフ オートマティック”。ケース径41㎜、自動巻き、316L ステンレススティールケース&ブレス、300m防水。71万5000円(エドックス/ジーエムインターナショナル)
「これからも〈エドックス〉は、チャレンジしていく姿勢を止めません。しかし、ただ次々に新しいことを取り入れるだけではありません。これまで私たちが獲得してきた成果を大切にしながら、新たな価値を少しずつ積み上げていくことが大切です。140周年という節目に過去を振り返ったこともあり、そうした想いを新たにしました」
日本を含めたアジア圏を定期的に周遊し、マーケットを間近で視察しているというオッツ氏。日本は顧客も多く、特に大切にしている国の一つだと語る。
「日本には時計の細部まで注目し、開発のストーリーにも目を向けてくれる愛好家が多いですよね。そうした方々の意見や感想は私たちにとって刺激になりますし、時計作りのモチベーションになります。これからも関係性を大切にしたいと願ってます」
そうした愛好家に向け、〈エドックス〉が提供できる大きな強みは防水性にあるとオッツ氏は明言する。
「半世紀以上にわたって防水性を追求してきた歴史があり、ダイバーズモデルでなくとも〈エドックス〉で展開しているすべての時計は優れた防水性を備えています。実際にダイビングしたり泳いだりしなくとも、防水性を高める技術は時計そのものの耐久性や堅牢性も向上させますから、ずっと長く愛用していただけるのです」
また、特定のグループの傘下に入らず、経営の独自性を貫いているのも魅力的な時計を生み出す原動力になっているという。物事の判断や決定をスムーズかつスピーディに行えるため、時代の変化を読み解きながら理想の時計作りを追求できるからだ。
「〈エドックス〉が昨今の時計業界のメインストリームにいないのは確かです。しかし、だからこそユニークなタイムピースを提供していますし、『他人とかぶりたくない』と望むファッション高感度層に刺さるブランドではないかと考えています。性能にはこだわっていますし、エレガンスの中に遊び心も宿していますから、プレイフルな『Safari』読者の方に是非私たちのことを知ってもらいたいですね」
140年という長大な歴史を持ちながらも、常にチャレンジングな姿勢と遊び心を忘れない〈エドックス〉。これからの歩みにも期待したい。Profile
クリスチャン・オッツ
〈エドックス〉取締役兼セールス&マーケティングディレクター。時計業界に従事していたこれまでの経験を生かし、2005年より〈エドックス〉にて手腕を発揮。デザイン、開発、世界戦略など事業の全般を手掛けている。
●ジーエムインターナショナル
TEL:03-5828-9080
text:Hiroyuki Yokoyama