Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2024.09.08


『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』が映画界の残したものとは?【後編】 ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~ Vol.29



もちろんショーンだけでなく、ベン・アフレック扮する親友チャッキーとの友情も熱く胸を打つ。前向きな未来に向けて最後の一歩をなかなか踏み出せないウィルに、チャッキーは労働中の工事現場でこう言い放つのだ。

「親友だからハッキリ言おう。20年経ってお前がまだここに住んでいたらぶっ殺してやる。脅しじゃない、本気だせ。俺は50歳になって工事現場で働いていてもいいんだ。でもお前は宝くじの当たり券を持っているのに、それを一生ケツに敷いて暮らす気なのか!?」――。

まだリアルに青春の輝きを帯びたデイモン(27歳)&アフレック(25歳)の姿が眩しい。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は、本当に“優しい男たち”の抒情に包まれた映画だ。その優しさの裏には、繊細な哀しみも貼り付いている。ショーン役のロビン・ウィリアムズは1970年代半ばからコメディアンとして活動をはじめ、俳優として『ガープの世界』(1982年/監督:ジョージ・ロイ・ヒル)、『グッドモーニング、ベトナム』(1987年/監督:バリー・レヴィンソン)、『いまを生きる』(1989年/監督:ピーター・ウィアー)、『レナードの朝』(1990年/監督:ペニー・マーシャル)など多数の代表作を持つ名優だが、キャリアを通して薬物乱用や鬱病に苦しみ、晩年には運動障害も重なって2014年に63歳で自ら命を絶った。本作の演技では生涯で唯一のオスカー(アカデミー賞助演男優賞)を獲得している。
 

  

 


そしてもうひとり、デイモン&アフレックだけではなく、この映画で一躍世間に名を馳せることになった人物がいる。シンガーソングライターのエリオット・スミスだ。もともとオレゴン州ポートランドの知る人ぞ知るローカルな存在だった彼を、やはり当時ポートランド在住だったガス・ヴァン・サント監督が本作の主題歌とメインの挿入歌担当に大抜擢。『Between The Bars』をダニー・エルフマンと新録し、『No Name #3』『Angeles』『Say Yes』という既成曲が劇中に流れる。そして新たに書き下ろした主題歌『Miss Misery』はアカデミー賞歌曲賞にノミネートを果たし、1998年3月の授賞式でも演奏した(ちなみにこの時、オスカーを獲得したのは『タイタニック』の主題歌であるセリーヌ・ディオンの『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』)。彼の楽曲群はハル・アシュビー監督の『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』(1971年)のキャット・スティーヴンスにも比肩する詩情を備え、本作のニューシネマ・タッチをさらに薫り高くしている。だが皮肉にもエリオット・スミスは派手な名声や表舞台を望んでいた人間ではなかった。2003年にロサンゼルスの自宅にて34歳の若さで自死。スミスもまた『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のウィルやショーンと同じく、幼い頃に継父から虐待を受けていたことが明らかになっている。ガス・ヴァン・サント監督はスミスの死後、『パラノイド・パーク』(2007年)でも彼の楽曲『Angeles』と『The White Lady Loves You More』を劇中で使用した。
 

  

 


また『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の成功を受けた後日談的なパロディとして、ベン・アフレックをはじめ、マット・デイモン、ガス・ヴァン・サント監督が本人役で登場するのが『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』(2001年)。本作の監督、ケヴィン・スミスは『モール・ラッツ』(1995年)や『チェイシング・エイミー』(1997年)などでアフレックと組んでおり、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の脚本をミラマックスに売り込んでくれた恩人なのだ。まさしくこの名作は幾つもの友情が何層にも折り重なって出来ている。エリオット・スミスの名曲『Miss Misery』をバックに、チャッキーら悪友たちからプレゼントしてもらったオンボロ車を走らせる、21歳の誕生日を迎えたウィルの“旅立ち”をしっかり見届けて欲しい。

『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』
製作年/1997年 監督/ガス・ヴァン・サント 脚本・出演/ベン・アフレック、マット・デイモン 出演/ミニー・ドライヴァー、コール・ハウザー、ロビン・ウィリアムズ、ステラン・スカルスゲールド、ケイシー・アフレック

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』が映画界の残したものとは?【前編】 
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』が映画界の残したものとは?【中編】
 

  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ