『シザーハンズ』
製作年/1990年 製作・監督/ティム・バートン 出演/ジョニー・デップ、ウィノナ・ライダー
隣人の同調圧力にはご注意を!
ご近所に暮らしていたら、みんな仲良く、同じような考え方であれば、波風は立たない。でも各家庭それぞれ仕事も環境も、価値観も違うから、時には相手に合わせた“忖度”も必要。ジョニー・デップの初期の代表作である『シザーハンズ』は、そんな事実をちょっぴり過剰に描いている。舞台になるのは、パステルカラーのかわいい家が並ぶ郊外の住宅地。みんなハッピーで楽しく、ご近所付き合いしているのは見せかけで、じつは“同調圧力”が強く、不満がくすぶっていたりもする。
そんな住宅地に突然、連れて来られたのが、両手がハサミの形をしたエドワード。異形キャラクターは、そのハサミで植木の剪定をしたり、主婦たちの髪を見事に切ってあげたりして、最初は珍客として大歓迎。しかし一度でも危険な噂が立てば、ご近所の同調圧力が作動するという、コワすぎる事態へと発展してしまう。ティム・バートン監督のファンタジーなのだが、隣人ドラマとしては、いま観てもかなりリアルかも!?
『バットマン リターンズ』
製作年/1992年 監督/ティム・バートン 出演/マイケル・キートン、ミシェル・ファイファー、ダニー・デヴィート
クリスマスはステイホームを!?
クリスマスで賑わうゴッサムシティに、親に捨てられたことで悪に染まってしまった怪人ペンギンが出現し、野望を胸に政界へ。同じころ、原発を推進する実業家の秘書をしていたセリーナは、雇い主の陰謀を知ってしまったために、ビルから突き落とされる。九死に一生を得た彼女はキャットウーマンとなり、雇い主への復讐を誓った。ゴッサムの悪に立ち向かうヒーロー、バットマンは、陰謀に染まりつつあるクリスマスの街を、どうやって守るのか!?
異才ティム・バートン版の『バットマン』シリーズ第2作。クリスマスの街はイルミネーションに彩られて華やかだが、裏側では悪事が進行しており、決して見た目ほど綺麗ではない。悪辣な市長選、事業独占から殺人、誘拐、テロまで、ゴッサムシティはそりゃあもう大騒ぎ。何も知らない市民をも巻き込むのだから、危険がいっぱいだ。ステイホームで安全・安心なクリスマスを!
『ビッグフィッシュ』
製作年/2003年 監督/ティム・バートン 脚本/ジョン・オーガスト 出演/ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ジェシカ・ラング、ヘレナ・ボナム・カーター、マリオン・コティヤール
信じられない話はどこまでホント?
ホラ話を語っては、多くの人々を楽しませ、愛されてきた男エドワード。しかし、息子ウィルだけは嘘ばかりつく父を嫌っていた。そんなある日、エドワードの危篤の報を受けた彼は、妊娠中の妻とともに帰省する。巨人と出会った話、戦地でケタ外れの危険な任務に就いた話、そしてウィルの生まれた日に伝説の魚“ビッグ・フィッシュ”を釣った話。父は相変わらず、つくり物の冒険談を語り、ウィルをウンザリさせるが……。
異才ティム・バートンがダニエル・ウォレスの人気小説を映画化。作り話しばかりで、信じられない……そんな思いを父に抱いていた息子が、父の真意に近づいていく。エドワードの話のどこまでがホラなのか明確にはしていないが、そこには確実に“真実”が含まれている。そういう意味では、父の作り話に翻弄されてきた息子の成長談か。クライマックスからにじみ出る、その感動をじっくりと味わってほしい。
『チャーリーとチョコレート工場』
製作年/2005年 監督/ティム・バートン 脚本/ロアルド・ダール 共演/フレディ・ハイモア、ヘレナ・ボナム=カーター
白塗り特殊メイクが得意!
『シザーハンズ』『アリス・イン・ワンダーランド』など“白塗り特殊メイク系”が似合いすぎる……というか、得意としているのがジョニー・デップ。なかでも強烈なインパクトを残したのが、このウィリー・ウォンカ役だ。しかも監督は、ティム・バートン。ジョニーとは声の出演作も含めて、なんと9本の映画を一緒に作っただけあって、カルト的なテイストにどう観る者を引き込むのか、心得ている感じ。実際に、奇妙キテレツな世界なのに、ジョニー=ウォンカの魅力に魔法をかけられ、めくるめく映画体験が待ち受ける。
ウォンカは自社が販売するチョコレートに5枚の当たりチケットを同封。その商品を買った子供たちが、秘密のチョコレート工場の内部を見学することができる。夢のような体験に心躍らせる5組の親子が、工場内で衝撃の運命に巻き込まれる物語。チョコレートを作る“ウンパ・ルンパ”という小さな人たちや、クルミを割るリスの集団など、とにかくシュールで摩訶不思議な世界が展開。内容はブラックなのに、映像はカラフル。“怖い絵本”のような世界に、ジョニー・デップの怪しい笑顔がハマりまくっている。
『アリス・イン・ワンダーランド』
製作年/2010年 製作・監督/ティム・バートン 出演/ジョニー・デップ、ミア・ワシコウスカ、アン・ハサウェイ
【迷い込む場所:不思議の国】
まずは勝負に勝つこと!
“異世界へ入る”というのは、ファンタジーの鉄板要素。この設定を使って19世紀に名作文学となったのが、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』。ディズニーのアニメを経て実写になった今作では、めくるめくる異世界の冒険にキモかわいいキャラも多数登場し、カラフルに展開していく。物語は原作およびアニメ版の13年後。19歳になったアリスが、白ウサギを追って久しぶりに入り込んだ不思議の国は様変わり。自分が不思議の国の救世主だと知ることになる。
監督はティム・バートンなので、ファンタジックな世界が、どこかダークで不気味なテイストも放ち、大人も魅了。劇場公開時は日本でも興収118億円という、まさかの特大ヒットを記録した。帽子屋の怪人キャラ、マッドハッターを、ジョニー・デップが特異な役作りで演じたことも大きな話題に。強烈な女王たちのインパクトや、声優を担当したスターたちをモーションキャプチャーでCGキャラにした映像など見どころが多い。
【どうやって現実へ戻ってきた?】
救世主のアリスは、恐るべき怪物との戦いに勝利。不思議の国に残るという選択肢もあったが、自らの意思で怪物の血を飲むことで、現実世界へ戻った。戦いの勝利が脱出の条件。