『[リミット]』
製作年/2010年 製作総指揮・監督/ロドリゴ・コルテス 出演/ライアン・レイノルズ
棺の中に閉じこめられたオトコの運命は!?
イラクで働いていたアメリカ人トラック運転手のポール(レイノルズ)は、ある日突然何者かに襲われ、地中に埋められた棺桶の中で目を覚ます。手元にあるのは充電切れ間近の携帯電話とライター。残り90分の酸素しかない密閉された場所で、ポールは決死の脱出を試みようとするが……。
<ここからネタバレ>
彼は地中から脱出できるのか? 彼が埋められた理由は何なのか? 電話越しにSOSを送りながら死闘を繰り広げるポールだが、恐ろしい大どんでん返しが待ち受けるのはラスト。SOSをたらい回しにされたあげく、ようやく最後に外の世界からの救助が来た! と思いきや、救助隊が見つけたのは別の棺桶で……。90分奮闘した後、悲劇の結末を迎えるポールの運命がただただ空しく、バッドな方向へのどんでん返しに絶望させられる。
『チェンジ・アップ/オレはどっちで、アイツもどっち!?』
製作年/2011年 製作・監督/デヴィッド・ドブキン 脚本/ジョン・ルーカス、スコット・ムーア 出演/ライアン・レイノルズ、ジェイソン・ベイトマン、レスリー・マン
“幸せな家庭持ち男”と“独身モテ男”が入れ替わり!
他人をうらやましいと思った経験は誰もがあるはず。全く違う環境で、自分とは違って充実した日々を送っていそうな親しい友人がいたら、どんな気分なのか味わって観たくなるのも、人間のサガ。そんな妄想を爆笑コメディとして描くのが本作だ。有名な弁護士事務所に勤め、妻と3人の子供と暮らすデイヴ。そして独身生活を続け、女性にモテまくりの俳優志望のミッチ。親友の2人がある日、酔っ払って公園で並んで用を足しながら、相手と入れ替わりたい願望を口にしたところ、翌朝、本当に心とカラダが入れ替わってしまう!
入れ替わった事実が証明できない2人が、それぞれの仕事で大奮闘。当然のごとく失敗を繰り返すが、オバカなギャグ、くだらないネタもたっぷり盛り込まれ、ひたすら笑える。このあたりは『ハングオーバー!』シリーズの脚本家コンビらしい痛快さ。難関の弁護士案件、ポルノ映画出演など豪快なエピソードの数々で、まったく違う人生を送る主人公たち。相手の知らなかった側面を学び、自分の生活の大切さを再認識する流れは予想どおりとはいえ、素直に感情移入してしまう。ミッチ役はライアン・レイノルズ。この後、『デッドプール』で大爆発する、彼の(いい意味での)チャラい魅力の原点も発見できる。
『ハッピーボイス・キラー』
製作年/2014年 監督/マルジャン・サトラピ 出演/ライアン・レイノルズ、ジェマ・アータートン、アナ・ケンドリック
異色の明るいサイコパス映画!
『ペルセポリス』などで知られるイラン出身の女性監督マルジャン・サトラピが、ライアン・レイノルズとタッグを組んだブラックコメディ。バスタブ工場に勤めるジェリー(レイノルズ)は、ペットの犬や猫の声が聴こえる風変わりな青年。ひょんな偶然が重なって気になる同僚女性と急接近したジェリーだが、残念ながら彼女を殺してしまう事態に……。
<ここからネタバレ>
過去にトラウマを抱えるジェリーは精神科医の下で絶賛治療中だが、処方薬を飲むのをやめたせいで徐々にサイコ化。好きな相手をサクサクと刺したり、その死体をバラバラにしてタッパーに詰めたり、生首部分は冷蔵庫で綺麗に保管したり。しかも、悪気はないのに死体の山は増えていく始末で、どんどん狂気な展開へと陥っていく。だが、とにかくキュートで楽しい語り口のため、明るいサイコパス映画として楽しめる。
『セルフレス/覚醒した記憶』
製作年/2015年 監督/ターセム・シン 脚本/アレックス・パストール、デヴィッド・パストール 出演/ライアン・レイノルズ、ベン・キングズレー、マシュー・グード
クローン技術で作った肉体に脳を転送!
もし現実で、他人と心とカラダが入れ替えられるとなったら、やはり相手は自分より若い方がいいと思う人も多いだろう。そんな人間の欲望をかなえる最先端テクノロジーを描いたのが本作。基本的にコメディが多い“入れ替わり”映画の中で、これはシリアスでサスペンスフルなところが異色だ。建築会社のCEOとして莫大な財産を保有するダミアンが、ガンで余命半年の宣告を受ける。科学者が彼に提案したのは、クローン技術で作った若い肉体に、ダミアンの脳を転送するという、信じがたいプロジェクト。受け入れたダミアンは肉体が死んだ後も、新たな肉体を自分の意思で操って生き続けるが……。
2億5000万ドルという“意識の移植”、謎めいた研究所など近未来SF映画のような設定が観る者の心をざわめかせる。新しい肉体に慣れるまでのトレーニングを経て、その後、若く健康な日々を謳歌する主人公のドラマが続くかと思いきや、やがて幻覚に苛まれるようになるダミアン。そこからは予想外の事態へなだれ込むので、観てのお楽しみだ。ダミアン役は『ガンジー』でアカデミー賞主演男優賞の名優、ベン・キングスレー。新たな肉体の姿では、ライアン・レイノルズが心とカラダが引き裂かれるような葛藤も表現する。ダミアンと疎遠になった娘の関係、そしてもうひとつのある家族など、人間ドラマも胸に突き刺さる。
『デッドプール』
製作/2016年 監督/ティム・ミラー 出演/ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン
スーパーヒーローの毒舌トークがとにかく愉快!
末期がんを告知された傭兵のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)が、治療と引き換えに極秘人体実験の被験者に。驚異的な治癒能力を手に入れ、スーパーヒーローの"デッドプール"と化す。…が、世のため人のために戦うほかのヒーローとは違い、ウェイドはもともと気まぐれな傭兵で、煩悩だらけ。しかも、かなりおしゃべりで口も悪いウェイドの戦いは、人体実験の過程で彼の全身を醜く焼けただれさせた悪徳科学者への復讐を掲げながら、混沌へと突き進む。
自らを"俺ちゃん"と名乗り、おちゃめな態度で心の傷を隠すウェイドのマシンガントークは聞いているだけで(相当疲れるが)愉快だし、あらゆるポップカルチャーネタもふんだんに盛り込まれていてかなり楽しい。また、おしゃべりが過ぎて、彼の物語を見ている観客に話しかけてくることもあり(!)、文字通り笑いの渦に巻き込んでくるのも愉快。
『6アンダーグラウンド』
製作年/2019年 出演/ライアン・レイノルズ、メラニー・ロラン、コーリー・ホーキンズ
ベイ史上、最もバイオレンス!
某国の独裁政治に心を痛めた男が億万長者となり、ワケありだが優秀な人材を集めて世直しチームを結成。元CIA、元狙撃手、パルクールの達人、殺し屋らが過去を捨てて互いを番号で呼び合いながら、独裁者を倒すためのミッションに身を投じていく……。
莫大な財産を世直しにつぎ込むリーダーを演じるのは、『デッドプール』のライアン・レイノルズ。それだけで過激な香りが漂ってきそうだが、期待通り、冒頭のカーチェイスシーンではイタリアの街を問答無用で破壊。
ただし、本作で特筆すべきはそれら物体の破壊描写ではなく、マイケル・ベイ史上最も人体の破壊描写が強烈なこと。ストリーミング配信作品としての利を彼なりに活かし、レイティングを気にすることもなく死体の山を築いていく。
『レッド・ノーティス』
製作年/2021年 製作・出演/ドウェイン・ジョンソン 監督/ローソン・マーシャル・サーバー 出演/ガル・ギャドット、ライアン・レイノルズ、リトゥ・アリヤ
壮大なスペクタクル犯罪劇!
『デッドプール』のライアン・レイノルズ、『ワイルド・スピード』シリーズなど大ヒット作が続くドウェイン・ジョンソン、そしてワンダーウーマン役でおなじみのガル・ガドット。3大スターが世界を駆け巡るアクション大作で集結。それだけで面白さは保証されたようなもの! レッド・ノーティスとは、インターポール(国際刑事警察機構)から最重要の指名手配犯に出された国際手配書のこと。高級美術品を狙う詐欺師のノーランが、レッド・ノーティスのターゲットだ。ローマでクレオパトラが残した秘宝を狙う彼の前に、FBIのスゴ腕捜査官が立ちふさがるが、インターポール、謎の大泥棒も入り混じり、壮大なスペクタクル犯罪劇へと突入する。
イタリアにはじまり、バリ島、ロシア、イギリス、スペイン、さらに南米にアフリカと、『007』をも超えるワールドワイドな攻防に、秘宝探しのアドベンチャー、犯罪のプロのテクニック合戦、騙し合いに肉体バトルと、アクション映画のありとあらゆる要素を詰めこんだサービス精神が、本作の魅力。しかもハイテンポで進むので、配信作品ながら倍速で流すのは、ほぼ不可能だろう。ツッコミどころもあるものの、一気の勢いにかき消される感じ。そして何より、R・レイノルズの、おちゃめ&おとぼけな活躍、ロック様の豪快さとコミカルな演技、男2人を手玉に取って余裕のガルと、これ以上ないほどのハマリ役を託されたスターたちに、最後の最後まで魅了されるのは間違いない。
『アダム&アダム』
製作年/2022年 製作・出演/ライアン・レイノルズ 監督/ショーン・レビ 出演/マーク・ラファロ、ジェニファー・ガーナー、ゾーイ・サルダナ
「あの時、もしこうしていたら……」を、叶えてくれる!
タイムトラベル映画は、時空を超えた主人公が、行き着いた先の人々とともに何かを“変える”ことが常識だが、本作の場合、タイトルから予想されるように、別の時代の自分と出会う。意外にこのパターンは少ないので、新鮮な感触! 主人公のアダム・リードは、2050年の戦闘機パイロット。その時代はタイムトラベルも使えるようになっているのだが、アダムはある理由から、タイムトラベルの発明を阻止するために2018年へ向かおうとする。しかし事故が原因で、到着したのが2022年。そこで12歳の自分と出会ったことで“2人”は協力してミッションに挑む。12歳のアダムが未来の自分に気づくプロセスもユニークだし、同じDNAを持っていることがカギになったりと、巧妙な展開に引きこまれてしまう。
設定だけ考えればシリアス&ハードだし、ド派手なアクションも盛りこまれるが、作品のムードは軽やかでハートウォーミング。そこも本作の大きな魅力。『スター・ウォーズ』や『ターミネーター』へのオマージュもストレートでわかりやすい。監督は『ナイト ミュージアム』のショーン・レヴィで、大人のアダム役が『デッドプール』のライアン・レイノルズなので、この軽快なノリも名人芸の域(彼らは前作『フリー・ガイ』でも組んでいる)。タイムトラベルものは、何かと辻褄合わせや、禁止ルールなどややこしかったりする。しかし本作はそのあたりもスッキリ作られているので観やすいはず。そして重要なシーンでは感動も用意されるが、そこもサラリと心地よい後味。誰もが「子供時代の自分に何を伝えたい?」と思いを巡らせることだろう。
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