『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)
人気シリーズで主演スターが纏うアイテムがシグネチャールックになる。例えば、『007』シリーズのタキシード、『キングスマン』シリーズのレジメルタルタイetc。でも、気がつくと誰でも手が通せるTシャツがお馴染みのルックになっていた、というケースは珍しいかも知れない。『ワイルド・スピード』シリーズで主役のドミニク・トレットを演じるヴィン・ディーゼルが好んで着ているカットオフのシャツがそれだ。
『ワイルド・スピード』(2001年)
思い出してみて欲しい。過去9作ある『ワイスピ』シリーズでドミニクが見せ場のアクション・シーケンスで、必ずと言っていいほどカットオフTやカットオフのシャツを着て、鍛え上げた二の腕を見せびらかすようにしてハンドルを握っていたことを。
それはシリーズ最新作『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』でも貫かれていて、同作では合計3着のカットオフが登場する。まずは、L.A.郊外の自宅の寝室(寝る間際までカットオフ!!)で、恋人のレティ(ミシェル・ロドリゲス)をベッドに誘う時は、黒のカットオフTに、首にはマストアイテムのロザリオをぶら下げているドミニク。カットオフにロザリオなんて、よほど首元から腕周りに自信がないとトライできないコーディネートだ。
『ワイルド・スピード MAX』(2009年)
そして、場面が転じて仲間たちと共に麻薬王、ダンテ(ジェイソン・モモア)の宣戦布告を受けてローマに降誕するドミニクは、カットオフのダンガリーシャツで古都の悪路を爆走する。さらに、決戦の地、ブラジルのリオでは黒のカットオフシャツにロザリオでダンテとの死闘に臨むドミニクであった。
実はマニアックなウェブサイトが調査したところによると、ヴィン・ディーゼルが出演映画で二の腕を見せる確率と映画の興行とは正比例しているという数値的なデータがあるとか。こうなると、ディーゼルにとってカットオフは単なるシグネチャールックと言うよりヒットのバロメーターになっている可能性だってある。恐るべし、カットオフ!!
『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)
ちなみに、最新作でドミニクはほかにも、冒頭のシーンで胸に”Toretto”のワッペンが貼り付けられた〈ディッキーズ〉のワーキングシャツを着て現れる。アメカジ好きはこっちにより強く反応するかも知れないし、対照的にクロコやヘビ皮のジャケットを羽織り、ときにはポニーテール風ヘアで狂気のヴィランぶりを炸裂させるダンテのジェンダーレスなコーデには、衣装を担当したサンジャ・ヘイズ(『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』や『キャプテン・マーベル』ほか)の攻めっぷりが伺える。シリーズ第10作で最終章となる最新作は、前後編、または3部作になることが噂されている。シリーズの命運はヴィン・ディーゼルの二の腕が握っているのだ!?
『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』公開中
製作年/2023年 監督/ルイ・ルテリエ 脚本/ジャスティン・リン、ダン・マゾー 出演/ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、ジェイソン・モモア、ナタリー・エマニュエル、ジョーダナ・ブリュースター、ジョン・シナ、ジェイソン・ステイサム、サン・カン、ヘレン・ミレン、シャーリーズ・セロン、ブリー・ラーソン 配給/東宝東和
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