Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2025.04.10


モーリー・ロバートソンはどう見る!? 新世代のカリスマ【ケンドリック・ラマー】

 
スーパーボウルでのラマーのパフォーマンスは、黒人の社会的な地位向上に貢献したという見方が日米でされています。非常に巧妙な演出だったと。コンプトンというスラム街の出身であることをオブラートに包まず表現し、狂言回しのアンクル・サム役をサミュエル・L・ジャクソンが務めました。彼が演じたのは「黒人側の妥協を象徴する存在」とされていますが、これはちょっと薄い読み方。そう単純ではありません。

かつて黒人たちはブラックパワーを語ることを許されず、白人が望む黒人を演じる人しか評価されませんでした。オバマの頃までに少しずつ歩み寄り、序列そのものをなくす方向性が生まれた。ところが、トランプ前後に怒れる白人の巻き返しが起きる。その作用・反作用としてギャングも先鋭化します。それからBLM運動。白人警官の暴力も問題だけど、ゲットーには警察を跳ね返す犯罪力がある。その治安の悪さたるや凄まじく、成功した黒人家庭が子育てしたいとは思いません。そして取り残された人だけが永遠に住み続ける。中産階級の黒人が出現しても、資産がコミュニティに還元されないんですね。その絶望から、ギャングスタラップの攻撃性が増すのです。

カラーギャングによる攻撃的なラップが出てきたのは'80年代半ば。スーパーボウルでセリーナ・ウィリアムズが披露したステップも、実はギャングが敵に勝ったときにするものです。また「ラバと土地」の話も出てきます。これはいわゆる“破られた約束”のこと。奴隷解放の際に連邦政府が支援を約束したのですが、南部諸州の反対で反故になった。そこから長い時間をかけて公民権を勝ち取ったわけですが、反対勢力が金持ちと組み、トランプに至っています。

ラマーのショーは、その対立が険しくなっていることを物語ります。彼の才能を感じるのは、それをトランプの前で、全米で最も視聴される番組でやったこと。いろいろな問題をうまく示唆しました。アンクル・サムのサミュエルは﹁やりすぎると危ない﹂と諭す。まるで白人に媚びを売るアンクル・トムです。彼が訴えるのは、誰が大統領になっても、歴史と向き合いたくない部分がアメリカ社会にあるということ。その演技が本当に素晴らしく、たしなめつつも喋り方が次第に変わり、最後には完全に黒人奴隷の言葉遣いになる。要所でピリッとした演技を見せ、一般社会との橋渡しをしました。

いろいろな意味で、クラフトマンシップの高いショーでした。メッセージを維持しつつ、ゲットーらしさも出し、放送禁止用語を抜いて番組を切らせなかった。アンクル・サムは本来のアメリカの姿。ラマーはスラムの現実をラップしているように見えて、実は現在の社会状況や政府、金持ちを風刺した。スターでありながら、最後までやりきったのはすごい。

ギャングのファッションやライフスタイルは、オンラインのメディアと相性がいい。男たちは麻薬で稼いで金ピカ、女の子たちは水着のような卑猥な格好。変な話、治安が悪いほど見せものになる。外からは極端に歪んだ像が見え、その偏見を逆手に取ってまた歌にする。黒人の地位は上がらず、一方でスターは消耗品のようにどんどん出てくる。ラマーのように全米に認められる人も出るけど、そもそも消耗率が高すぎます。2パックもビギーも殺されてしまいましたから。

ラマーは無視できない存在になったからこそ、この先が挑戦です。彼の言葉が普遍性を維持する限り、同じ境遇にない人にも説得力をもつ。でも形骸化しやすい表現形式なので、蔑視を含みながら愛でられる感じに陥る可能性はあります。本物でい続けるという以上、そこに生まれる必然的なアンバランスをどう解決していくのか。本当に際どい線を走っていて、だからこその格好よさが若い人の心を掴んでいるともいえますね。



教えてくれたのは
[モーリー・ロバートソン]
Morley Robertson
1963年、NY生まれ。東京大学とハーバード大学に現役合格。現在はタレント、国際ジャーナリスト、音楽家など幅広く活動中。最新著作『日本、ヤバい。「いいね」と「コスパ」を捨てる新しい生き方のススメ』(文藝春秋)発売中。

この偉人になりたい度数
?(判定不能)/100
影を落とすことのないふたつの矢印が彼と僕
「僕にとっては、あっちを向いている人。ふたつの矢印に上から光を当てると、両者の関係が垂直に近づくほど影が短くなる。彼と僕は垂直な関係で、影もゼロですね」


“アメリカ偉人伝”の記事をもっと読みたい人はコチラ! 

 

 
Information

雑誌『Safari』5月号 P218〜219掲載

 アラン・リッチソンが表紙を飾る
 雑誌『Safari』5月号が好評発売中!


『Safari』5月号の購入はコチラ
『Safari』定期購読はコチラ


●雑誌・WEB『Safari』の公式TikTokは
こちらからアクセスしてみて!

文=野中邦彦 text : Kunihiko Nonaka(OUTSIDERS Inc.)
photo by AFLO
〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。
SPONSORED
2025.06.27

〈オメガ〉の“プロフェッショナルライン”に注目。
復活した“レイルマスター”と 新色の“シーマスター”、心躍るふたつの名作。

〈オメガ〉を象徴するコレクションとして、1957年に創設された“プロフェッショナルライン”3部作。その中でも“レイルマスター”は、鉄道職員や電気技師といった強い電磁場が発生する場所で作業する人々を耐磁性の高さで支えた名作。そして、“シーマ…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。大人の休日にはシックなダイバーズを。
SPONSORED
2025.06.27

〈ブランパン〉の名シリーズから新作登場。
大人の休日にはシックなダイバーズを。

時計の人気トレンドにヴィンテージスタイルがある。1953年に誕生し、基本デザインを継承する“フィフティ ファゾムス”もそのひとつかもしれない。だがそこに懐古趣味はなく、常に新鮮な魅力を感じさせる。機能美という不変の価値があるからだろう。新…

TAGS:   Urban Safari Watches
リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。
SPONSORED
2025.06.27

リーダーにふさわしい〈グラスヒュッテ・オリジナル〉の一本。
端正な機械式時計で仕事にも優雅さを。

クルマやカメラなどドイツの工業製品の高い機能と品質は世界的に知られる。時計も例外ではない。〈グラスヒュッテ・オリジナル〉はその代表格だ。クラシカルなスタイルに決して派手さはない。だが漂う気品は、伝統に培われた揺らがぬ時計作りの哲学と美学を…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。
SPONSORED
2025.06.27

〈パネライ〉の傑作がさらなる進化。
タフさと品格を併せ持つエレガントダイバーズ。

歴史に裏打ちされた信頼性と機能。そして、存在感を放ちながら、品を保つデザイン性。そのすべてを兼ね備えた〈パネライ〉の“ルミノール マリーナ”は、知性と余裕をまとう大人にふさわしい腕時計だ。その傑作コレクションが今年、大胆な進化を遂げたとい…

TAGS:   Urban Safari Watches
〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!
SPONSORED
2025.06.25

〈エドックス〉の人気ダイバーズ時計が日本限定で登場!
“とろやわ”ストラップで夏のビーチを満喫!

煌めく太陽に、白い砂浜、青い海。夏のビーチ遊びの季節がやってくる! ラフなビーチコーデの手元だって、やっぱり快適さを求めておきたい。そんな海遊びにはラバーストラップのダイバーズ時計が最適だ。そこでプッシュしておきたいのが〈エドックス〉の日…

TAGS:   Fashion Watches
〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!
SPONSORED
2025.06.25

〈ザ・ブセナテラス〉で過ごす憩いの時間!
沖縄バカンスは贅沢でリラクシングなステイを!

〈ザ・ブセナテラス〉は、日々の疲れを癒し、日常では味わえない贅沢な時間を過ごせる。充実したホテルの設備・サービス、海に面した立地を生かしたマリンアクティビティプログラム。ここは1泊2日くらいでは気づけない、魅力を秘めている。パートナーとと…

TAGS:   Stay&Travel
これでライフスタイルが見違える!新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!
SPONSORED
2025.06.25

これでライフスタイルが見違える!
新鮮アイテムでいつもの夏をアップデイト!

いよいよ待ちに待った夏。バカンスを楽しみにしている人も多いだろう。たとえ予定がなくても、気温の上昇とともに気分をぐっと上げていきたい。そんなときに必要なのが、ライフスタイルをアップデイトするためのアイテムだ。これさえあれば、いつもとはひと…

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!
SPONSORED
2025.06.23

サンダルは履き心地と見た目のよさで選ぶ!
夏に大活躍するサンダルは、〈ロンハーマン〉別注が優秀!

夏がやってくると気分も開放的になり、休日はお出かけモードに。街にショッピングに行くのもいいし、たまにはアウトドアで自然の中に身を置くのも気持ちよさそうだ。もちろん、ご近所を散歩する程度で、家でゆっくり過ごすというのも幸せ。で、そのどんなシ…

TAGS:   Fashion
〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!
SPONSORED
2025.06.20

〈ジラール・ペルゴ〉夏の限定モデルが登場!
サマーバカンスの相棒は“懐色”の復刻ダイバーズで!

マニュファクチュール=自社一貫生産体制を2世紀以上も貫き続けるスイス、ラ・ショー・ド・フォンの名門時計ブランド〈ジラール・ペルゴ〉。そのコレクションはどれもクラシカルかつドレッシーで気品に満ちたもの。そんなイメージを、文字どおりあざやかに…

TAGS:   Fashion Watches
〈FPM ミラノ〉があらゆるシーンに物語を作る。優雅な旅の傍らには美しく堅牢なトロリーを。
SPONSORED
2025.05.30

〈FPM ミラノ〉があらゆるシーンに物語を作る。
優雅な旅の傍らには美しく堅牢なトロリーを。

周囲とはひと味違ったラグジュアリーなトロリーを探している人に朗報。ミラノ発のラゲッジ&トラベルアクセサリーブランド〈FPM ミラノ〉がついに日本に本格上陸し、早くも大ブレイクの兆しだ。クラフトマンシップを感じる美しいデザインは、我々の旅に…

TAGS:   Urban Safari Fashion
〈レクサス〉で過ごすラグジュアリーな日常。走行性と居住性を兼ね備えた「LM」と「RZ」、ふたつのクルマ。
SPONSORED
2025.05.30

〈レクサス〉で過ごすラグジュアリーな日常。
走行性と居住性を兼ね備えた「LM」と「RZ」、ふたつのクルマ。

ファッションをひとつのブランドでコーディネートするのは、いまやごく普通のこと。であれば、複数台所有するクルマをひとつのブランドで統一するというのも、ライフスタイルを豊かにするのに役立ってくれそうだ。忙しい毎日を過ごすビジネスマンであれば、…

都会とターフを〈ヤーマン&ストゥービ〉で自在に往来。フェアウェイに向かう手元に機械式時計という大人の愉悦。
SPONSORED
2025.05.30

都会とターフを〈ヤーマン&ストゥービ〉で自在に往来。
フェアウェイに向かう手元に機械式時計という大人の愉悦。

機械式ゴルフウォッチという新しいカテゴリーを切り開いた、〈ヤーマン&ストゥービ〉。ゴルフにおける勝利の記憶を“記録”として刻み、タウンユースにおいてはクロノグラフにひけをとらない、世界特許を持つ機械式カウンター時計なので、都会とターフの両…

TAGS:   Urban Safari Watches
上品リッチなスニーカー〈デバイス 1〉から新作登場。オールブラックのスニーカーならオン・オフ問わずスタイリッシュに。
SPONSORED
2025.05.30

上品リッチなスニーカー〈デバイス 1〉から新作登場。
オールブラックのスニーカーならオン・オフ問わずスタイリッシュに。

“Affordable Chic -上質を着こなす日常-”をメインコンセプトに掲げる〈アウール〉からスピンアウトし、一昨年デビューしたスニーカーブランド〈デバイス 1〉。軽量かつ上品な佇まいは、ビジネスシーンはもちろんプライベートでも大い…

TAGS:   Urban Safari Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ