●今月のビジネスセレブ
ロジェ・デュブイ・ジャパン CEO
ベンジャミン・プティジャン[Benjamin Petitjean]Profile
1983年、フランス生まれ。2008年、オーストラリア・メルボルンのラ・トローブ大学でMBAを取得の後、フランスに帰国。パリにて、グローバルコンサルティング会社でキャリアをスタートさせ、2012年にスイスのリシュモングループに入社。2015年に来日。リシュモン・カスタマーサービスのオペレーション・ディレクターとなり、2017年9月にロジェ・デュブイ・ジャパンのCEOに就任。現在に至る。
ロジェ・デュブイ
エクスカリバー オートマティック スケルトン
ジャパンリミテッド
●愛用歴/約6カ月
●購入金額/ 759万円
●使用頻度/ほぼ毎日
〈ロジェ デュブイ〉とひと目でわかる華やかでアバンギャルドなデザインと、42㎜というほどよいサイズ感のバランスが秀逸。
「この時計も〈ロジェ・デュブイ〉ならではの美しいスケルトンダイヤルはもちろんですが、SSブレスレットのほかに付属しているこのピクセルカモフラージュのストラップ! 大人の遊び心が漂いながら、今日のようなジャケットやスーツスタイルにも違和感なくマッチします」
ROGER DUBUIS[ロジェ・デュブイ]
エクスカリバー オートマティック スケルトン
ジャパンリミテッド
〈ロジェ・デュブイ〉を代表するコレクション・エクスカリバーの2021年新作。日本限定28本という非常に希少なこのモデルは、ミニッツトラックに施した鮮やかなブルーのカラーリングが特徴。この星形のブリッジが際立つ“アストラルスケルトン”は、独創的で大胆な〈ロジェ・デュブイ〉のウォッチメイキングを象徴している。このピクセルカモフラージュのストラップのほか、SSブレス付属。
ベンジャミンがCEOを務める〈ロジェ・デュブイ〉は、ラグジュアリー・ウォッチ・メゾンの中で異彩を放つ特別な存在だ。創業は1995年と、その歴史はまだ短い。しかし、創業当時から自社一貫製造にこだわり、ジュネーブに伝わる伝統技術を忠実に継承していることを証明する“ジュネーブ・シール”を取得。瞬く間に、エクスクルーシブなハイエンドブランドとして、その名を世界に轟かせた。
そんな〈ロジェ・デュブイ〉の、日本におけるトップに就任して5年めを迎えたベンジャミン・プティジャン。現在愛用しているのは、フラッグシップコレクションの最新作、しかも日本限定販売というレアピースだ。
「ロジェ・デュブイ・ジャパンのCEOになってから、私自身、こうしてほぼ毎日、身につけるようになったわけですが、愛用してみて改めて、多くの魅力に気づかされました。特に、この時計がもたらす高揚感。たとえばこれは日本だけで販売している28本というスペシャルエディションなのですが、時間を見るたびに、“世界でこの時計を手にしているのは、たったの28人だけなんだ”と嬉しくなってくる(笑)。もっとも、これ以外のモデルも、言ってみれば〈ロジェ・デュブイ〉の時計はほぼすべてが限定品。なので、このブランドの時計を所有している方はみなさん同じように、言葉にするのは難しいけれど、優越感に似た高揚を味わわれていると思います」
もちろん、現職に就くまでも、ベンジャミンはプライベートで思い出深い時計を大切にしてきた。
「なので所有している時計は数えるほどしかありません。祖父や父から受け継いだ時計は〈タグ・ホイヤー〉〈ボーム&メルシエ〉〈カルティエ〉などの腕時計なのですが、そのどれもが私にとって大変意味のある重要なもので、今でもとても大切にしています」
ベンジャミンの故郷は、フランス東部、スイスとの国境近くのブザンソンという街。実はココ、かつては多くのマニュファクチュールを含むウォッチメーカーが存在していたという。
「冬は時計の仕事、夏は農業に従事して生計を立てている家庭も多く、子供の頃から、普通に時計の話をするような土地柄。なので、無意識のうちに自然と、機械式時計に対する愛情やリスペクトする気持ちが育まれてきたのでしょうね」
長じて、時計業界に身を置くことになったのは、必然だったのかもしれない。
「実は私の兄も他社ですが、ウォッチメーカーに勤めているんですよ(笑)」
それにしてもベンジャミンがつけている時計から放たれるオーラは半端ではない。会話をしながらも、つい視線は彼の手元へといってしまう。
「現在の〈ロジェ・デュブイ〉の時計は、最低でも約500万円ほどという価格で、時計のことをよくご存知ない方には、“どうしてそんなに高いのか?”と聞かれることもよくあります。そう疑問に思われるのは自然なことだと思いますが、弊社の時計は最初から最後まで完全に自社内で作られており、それはマニュファクチュールを標榜するブランドの中でも稀有なことなんです。なのでもちろん大量生産はできません。現在の年間生産数は、数千本ほど。さらにその多くの時計がジュネーブ・シールを取得しており、おのずとこれくらいの価格にはなってしまいます」
いまやブランドのアイコンと言える美しいスケルトンダイヤル。これほどまでにモダンで革新的な時計にも、ジュネーブ・シールを取得するというこだわりには、常にイノベーションを続けながらも伝統を重んじるというブランドの美学が漂う。
「長い歴史を誇る名門マニュファクチュールとは比べものにならない若いブランドです。でも、ウォッチメイキングの技術力は、どんな老舗ブランドにも劣らない。世界一だと誇りを持って言い切れます」
選ばれし者だけが手にすることができる、ラグジュアリーを極めたハイエンドウォッチ。ベンジャミンは、ビジネスを超越して、この特別なブランドの虜になったようだ。もちろん、次に手にしたい時計も〈ロジェ・デュブイ〉以外の選択肢はない。
「まだ詳しいことは申し上げられないのが残念なのですが、2022年に発表される未来の〈ロジェ・デュブイ〉の時計を是非手に入れたいと思っています」
次はやはり、至高のトゥールビヨンだろうか? 我々の誘導尋問には乗らず、微笑みながらこう続けた。
「これはさらに先の話になってしまうのですが、私は近年発売予定の、とあるモデルのデザインに参加する機会と特権を得たんです。今からとても楽しみでなりません。きっとみなさんが驚かれるような時計になるでしょうね。どうぞご期待ください」
時計好きの羨望を集めるエクスクルーシブブランド1995年、熟練の時計師であるロジェ・デュブイが、ビジネスパートナーであるカルロス・ディアスとともに創業。自社一貫製造にこだわるマニュファクチュールとして、時計シーンで大きな注目を集める。2008年には、多くのラグジュアリーウォッチメゾンを擁するリシュモングループの傘下に入り、事業を拡大。創業からこれまでに33種類の機械式キャリバー を社内開発・製造してきた。大胆かつ独創的なコンテンポラリースケルトンウォッチのパイオニアとして高いステイタスを誇っている。
雑誌『Safari』12月号 P236~237掲載
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photo : Yoshifumi Ikeda(BOIL) text : Kayo Okamura