●今月のビジネスセレブ
マセラティ アジアパシフィック 地域統括責任者
ルカ・デルフィノ[Luca Delfino]Profile
1975年、イタリア・サルディーニャ生まれ。ピサ大学にて電気工学を学んだ後、パワートレインや電気系統の開発に携わり、2007年よりマセラティに加わる北米でのアフターセールス責任者、アジアパシフィックでのセールスおよびプロダクト責任者などを経て、2018年より現職。
ロレックス
オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ
●愛用歴/約5年
●購入場所/ドバイの時計店
●使用頻度/特別な予定があるとき
自社製自動巻きムーブメントであるCal. 4130搭載の40㎜ケース。視認性や装着感、耐久性など、高い実用性を備える。
「デイトナ自体の、クラシカルでエレガントなデザインが好きですが、取り分け、このブラックのダイヤルがとても気に入っています。主張がありながらも決してこれみよがしにならず、あくまでもさりげない。洗練されたバランスはさすがです」
ROLEX[ロレックス]
オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ
「BORN TO RACE――ドライヴィングとスピードに情熱を捧げる人々の究極の実用時計」を標榜する、〈ロレックス〉のクロノグラフであり、時計愛好家の憧憬の的となる名品。1963年の誕生以来、端正な3つ目インダイヤルの基本的デザインは踏襲しながらも、幾たびもモデルチェンジを重ね、進化し続けている。非常に高い知名度と圧倒的な人気を誇るモデルであるため、需要が供給をはるかに上回り、世界的に入手困難な状況が続く。
現在、腕時計を10本ほど所有しているというルカ。そんな彼がはじめて自身で手にした時計は〈カシオ〉だった。
「80年代のイタリアでは、〈カシオ〉の超高機能時計が流行していました。当時の私は数字や数学に情熱を傾けていたので――これが後にエンジニアリングを学んだ理由なのですが、自然と〈カシオ〉を選んだのだと思います。電卓が組みこまれていて、当時としては素晴らしいものでした。もちろんその頃は、将来日本に住むことになるとは想像もしていませんでしたが、なにかの暗示だったのかもしれないと思うと、とても感慨深いです」
マセラティ アジアパシフィックを統括する責任者として東京で暮らすようになってから、最も気に入っているのは〈ロレックス〉のデイトナだ。
「2016年、結婚記念日のプレゼントとして、妻と全く同じ時計を贈り合ったんですよ」
大きな節目のアニバーサリーに、夫婦で時計を贈り合うということはよく聞くが、妻にはいわゆるレディスモデルを選ぶケースがほとんど。全く同じ時計を贈りあうというのは稀だ。
「購入する2年前くらいからふたりで色々と考えてきたのですが、妻がデイトナをとても気に入っていたので、迷うことはありませんでした」
購入したのはドバイの時計専門店。当時はまだ、現在ほど高級時計市場が狂騒を繰り広げていなかったためか、正規ブティックに2本の同じデイトナがあった。
「非常に幸運だったと思います」
その日から、この時計がルカの最愛の1本となった。
「でも、毎日つけているわけではなく、たとえばビジネスで大事なミーティングがあったり、気分を高めたいといった、少し特別な日につけています。実ははじめてこの時計をつけたのは、日本に来る前、別の国で行われた非常に難しいミーティングのシーンだったのですが、無事、成功することができました。その経験があって、ゲン担ぎというか、今でも重要なシーンで使うことが多いのかもしれません。ラグジュアリー感がありながらもこれみよがしではなく、重要なビジネス・ミーティングなどでプロフェッショナルであることを表現するのに最適な時計だと思っています」
そう、ルカにとって腕時計は、自分自身を語る表現手段のひとつだ。
「時計は機械であり、デザインであり、機能である。これは、その外観から見て取れることです。しかし、時計が表現してくれるのは、自分が何者であるか? どんな人間か? あるいは自分が今、どんな気持ちでいるのか? そんなパーソナルなことを表現してくれるのが時計だと思います」
それは、日によって、そして気分やシチュエーションによって変化する。
「ある日はよりクラシックな気分になるかもしれないし、よりスポーティな気分になるかもしれないし、よりエレガントでエクスクルーシブな気分になるかもしれません。時計というのは外観から得られるキャラクターと、個々人のその日の気分のブレンドであって、つまり、とてもパーソナルなものではないでしょうか」
このデイトナも、それ以前のコレクションたちも、その1本を選ぶ際には常に直感を大切にしてきた。
「なによりも決め手となるのは、エモーション。それは絵画やクルマとも似て、自分にとってコレだというものが現れると自然と語りかけてくるものです。自分と呼応する魂がある、それは〈マセラティ〉にも共通して言えることです。直感的になにか訴えかけてくるかどうかというのは非常に大きなポイントで、言葉にするのはとても難しいのですが、たとえば時計やクルマ、絵画のエキスパートではなくても、ピピッと感じるものというのは必ずある。私はそういう直感を大切にしています」
実際に〈マセラティ〉も、機能、性能も素晴らしいがそれよりも、乗ったとき、ステアリングを握ったときの高揚感を求めて購入するユーザーも多いという。
「そこには理屈なんてなく、直感ですね。自分の気持ちが昂るかどうか? それこそが大事なポイントだと思います」
〈マセラティ〉はこれまで、何度かラグジュアリーウォッチブランドとコラボレーションしてきた。
「なかでも同じイタリアの〈ブルガリ〉と2012年にはじめてコラボレーションした、オクト クアドリレトロ クロノグラフ。実はこの時計がとても欲しいと思ってきました。マセラティのロゴは時計の前面ではなく、背面にのみ。で
も、ベゼルの、グラントゥーリズモのフロントグリルのデザインや、〈マセラティカラー〉によって、それとわかります。ムーブメントは〈ブルガリ〉マニュファクチュールの傘下に入った〈ジェラルド・ジェンタ〉で、まさに芸術品ともいえる1本です。でも、世界限定200本というレアピース。いつかこの時計に巡り合えることを夢見ています」
伊達男の憧憬を集める至高のイタリア車1914年創業の、イタリアを代表する高級自動車メーカー・Maserati S.p.A.は並外れた個性で、全車種においてひと目で認識できる唯一無二の車を生産している。現在のラインナップは、旗艦車のクアトロポルテ、スポーツセダンのギブリ、そしてSUVレヴァンテ。すべてのモデルに最高品質素材を使用し、卓越した技術を兼ね備えていることが特徴。マセラティ アジアパシフィックは、北米・中国・ヨーロッパと並ぶリージョンオフィスとして、アジアパシフィック地域14カ国(日本を含む)を統括。
雑誌『Safari』8月号 P180~181掲載
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photo : Yoshifumi Ikeda text : Kayo Okamura