●今月のビジネスセレブ
レノボ・ジャパン代表取締役社長
デビット・ベネット[David Bennett]
Profile
1979年、ジャマイカに生まれカナダ国籍を持つ。カナダのトロント大学院終了後、早稲田大学で日本語を習得。その後東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタートさせ、AMD社コーポレートバイスプレジデント兼OEMアカウント担当GMなどを経てから、2018年5月に現職に就任した。
グランドセイコー
ヘリテージコレクション SBGA299
●愛用歴/約6カ月
●購入場所/グランドセイコーブティック
●購入時の金額/ 47万円
無駄を削ぎ落とした分、視認性を高めるだけではなく、シンプルなデザインセンスが際立つ、〈グランドセイコー〉ならではの文字盤
「なんといってもセイコーウオッチ社が誇るスプリングドライブが搭載されているところです。メカニカルムーブメントとクォーツという、いわば伝統と革新を高いテクノロジーで融合するという発想、それを実現させた技術力に感嘆しました」
OMEGA[オメガ]
スピードマスタープロフェッショナル〈上〉
〈オメガ〉のフラッグシップ・コレクションで、不朽の名作で人気を誇るクロノグラフの名品。それゆえ幅広いバリエーションを擁するが、この手巻きムーブメント搭載のモデルは、1969年、人類がはじめて月に降り立った際にアポロ11号の宇宙飛行士が着用していた時計のDNAを正統に受け継いでいる。現在も入手可能。
GRAND SEIKO[グランドセイコー]
ヘリテージコレクション SBGA299〈下〉
ゼンマイで駆動、発電し、クォーツで制御するという、いわば機械式とクォーツのいいとこ取りをしたセイコーウオッチ社独自のスプリングドライブを搭載。ゼンマイ駆動でありながら、月差+-15秒以内という、クォーツ式時計と同等の高い精度を誇る。このヘリテージコレクションは1967年当時に確立されたセイコースタイルを継承するシックなデザインも魅力。
「まずはこれを外しますね」
ベネットは悪戯っぽく笑いながら、取材時腕につけていたスマートウォッチを外した。
「本当のことを申し上げると、普段使っているのは、スマートウォッチなんです。私は、会議や打ち合わせのときはなるべくスマホやパソコンに目を落とさず、相手の目を見ながら話したい。だけど今の仕事は常に大事な連絡が次々と入ってきます。これならチラッと見られるから、相手に失礼にならないで済むので」
この日取材のために持参したのは〈オメガ〉のスピードマスターと〈グランドセイコー〉。どちらも大事な日にしかつけない特別な存在という。
「本当ならこういう時計こそ日常使いをしたほうがクールだとはわかっているのですが(笑)、仕事ではやはり機能優先。それにこれらの時計は自分のためというより、2人の息子に受け継ぐために買ったものなんです。実は私自身、亡くなった父から、彼が生前愛用していた〈セイコー〉の時計を譲り受けており、私もいつか息子を持ったら、いい時計を受け継がせたいという思いを温めてきたので」
最初に購入したスピードマスターは長男に。そして兄弟でフェアにするために同等の価値がある時計をと考え、次男には〈グランドセイコー〉を選んだ。
「私が父から受け継いだのが〈セイコー〉だったということが大きいけれど、世界のどこの国でも高い知名度を誇るグローバルブランド。商品に対する信頼性も間違いない。そしてセイコーウオッチ社独自のスプリングドライブというムーブメントにも非常に惹かれました。昔ながらの機械式ムーブメントと、クォーツ、その長所を融合させた最新のテクノロジー。そのことが書かれている記事を読んで、迷わずこの時計を選びました」
また、もう1本のスピードマスターにも深い思い入れがある。
「〈オメガ〉のスピードマスター、これは本当に私にとって特別な存在なんです。みなさんご存知と思いますが、1969年に人類初の月面着陸を果たした宇宙飛行士がつけていたのがこの時計。以来全部で6回の月面着陸のミッションすべてに携行された、いわば世界で一番宇宙を冒険してきた時計なんです」
スピードマスターについて語りはじめると、その目がまるで少年のようにキラキラと輝きはじめた。
「私はもともと宇宙が大好きだったのですが、月面着陸について興味を持つようになったのは中学生の頃かな。1960年代、まだテクノロジーが全然発達していなかったのにもかかわらず、人間がこの時計をして月に降り立った。それを知ったときからずっとこの時計が欲しいと思ってきました」
しかし実際にスピードマスターを手に入れるまでの長い歳月の間には、人類の月面着陸自体が本当のことだったのか疑った時期もあったという。
「今思うと本当に恥ずかしいことですが、大学生の頃、テクノロジーが全然発達していなかったあの時代に、どうしたら宇宙に飛び立って月面着陸ができるんだろうと疑問に思って(笑)。でも、いろいろ自分なりに調べて、多くの優秀な人たちがみんなで努力して実現された、紛れもない事実だったことがわかりました。そのストーリーを掘り下げていくと感動しますよ! そんな人たちが選んだのがスピードマスターだったと改めて認識して、ますます思いが募りました」
時を経てもその情熱は全く褪せることはなく、今から5年ほど前にようやくその思いを成就させた。
「シンガポールのザ・ショップス アットマリーナベイ・サンズにある〈オメガ〉のブティックに立ち寄ってみたら、この時計があって。スピードマスター プロフェッショナル、それもスペシャルエディション。衝動買いするには高価ですが、私は元来、買い物には時間をかけないタイプなので(笑)。調べて、調べて手に入れたグランドセイコーとは対照的ですが。でも、よく考えたら、グランドセイコーよりはるかに長い時間をかけて考え続けていますよね。本当にあのときこの時計に出合えて、躊躇せずに買ってよかったと思っていますね」
スピードマスターのダイヤルの色も選んだのは、もちろんブラック。
「色も迷いませんでした。宇宙を感じさせるのは、やはりブラックなので」
ベネットの息子たちは、これらの時計がいつか自分のものになること、そのために父親が買ったことは知らない。でも、普段しているスマートウォッチとは違って、特別な日にしかしない大切なものということは認識しているという。
「いつか譲ったときに、余計に喜んでくれるかもしれません(笑)」
Company Information
テレワーク推進でも注目を集める企業
PCやタブレットなどのスマートデバイス、インフラシステムなどにより最高のユーザーエクスペリエンスを提供すること、「インテリジェント・トランスフォーメーション」を実現させるビジョンを持つ企業の日本法人。いち早く取り入れ活用していたテレワークのノウハウをまとめた「はじめようテレワークスタートガイド」を発行、COVID-19災禍時には無償ダウンロード提供をするキャンペーンの実施といった企業の姿勢に高い評価と関心を集めた。
雑誌『Safari』7月号 P164・165掲載
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photo : Tomoo Syoju(BOIL) text : Kayo Okamura