Gastronomic City TOKYO
今、東京で最も注目すべきブランニューなレストラン!
コロナ禍で大きな打撃を受けた東京の美食業界の、逆襲がはじまった。テイクアウトや三密対策で活路を見出す既存店に加え、新店もオープン。海外渡航が制約される今だからこそ、東京のレストランに再注目したい。
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今年の日本のニューオープンでは間違いなく、トップ記事で扱うべきレストランであろう。8月に開業したばかりの〈スッドレストラン〉は、東京・小金井の名店〈テラコヤ〉が手掛ける2号店だ。久しぶりに登場する本格的なグランメゾンとあって、玄人筋からも大きな期待が寄せられている。
場所は東京駅から南に約3㎞。東京湾と浜離宮を望む抜群のロケーションである。お店が入るこのエリアは、JR東日本グループが新商業施設“ウォーターズ竹芝”として開発し、陸路だけでなく船でのアクセスも可能。湾ごしにスカイツリーまで見渡せる超弩級のスケールだ。
1954年に小金井で創業した〈テラコヤ〉は、著名人たちに愛された名店として知られるが、3代めの現オーナーの間光男シェフは、先代からのクラシックな料理に加え、イノベーティブな料理を次々に生み出す天才肌の料理人。国際的な料理学会などにも積極的に参加し、知名度も高い。〈スッドレストラン〉で提供される料理は間シェフの集大成として、トラディショナルなフランス料理に加え、イノベーティブやナチュラルな要素を加えた3つのセグメントで構成され、ある意味で“東京コスモポリタン”的な美食体験を演出する。
東京で、このような規模のグランメゾンがオープンするのは久しぶり。店内にはテラス席のほかにメインダイニングとラウンジバー、プライベートルームも配する。食事だけでなく、テラスで1杯のシャンパンからビジネス会食、全館貸し切りのイベントなどフレキシブルに対応。
江戸前寿司をイメージしたイノベーティブな1皿。手前の柑橘の葉で握らせることで香りづけするなど、随所にアイデアが盛りこまれる
オーナーシェフ間光男さんは、これまで3000を超える料理を考案
艶やかなデザートの一品
店内は黒を基調とした大人の雰囲気
本格的なバーラウンジは食前食後にも楽しめる
東京的といえば、オープン以来“東京キュイジーヌ”を謳って国内外から注目されていた、麻布十番の〈クラージュ〉は、この8月に新たなシェフを招聘して、料理内容を刷新させた。女性シェフの古屋聖良(せいら)シェフは、2016年に若手シェフの国際コンペ“サンペレグリノ・ヤングシェフ”で、予選を勝ち抜き世界大会に出場した実力者。学士会館を経てオーストラリアの名店〈ブラエ〉で修業を積んだのちに同店へ。その料理は未知数ながら、緻密なバランス感覚と凛と筋の通った味わいで、フーディたちからも高評価だ。また、女性シェフらしい軽やかな食後感がいい。
ともに、レストランの楽しみ、食べることの歓びや価値を再認識するうえでも、今訪れてほしい2店なのである。
Courage
数々の有名レストランでマネージャーを経験した相澤ジーノ氏が、満を持して麻布十番に立ち上げた同店。世界的なレストランアワードの注目すべきお店としても取り上げられ、話題性も十分。古屋シェフとともに、世界基準の新たな東京キュイジーヌを目指している。
国際コンペなど、国内外で着実に経験を積み上げる本格志向の古屋聖良シェフ
大人の社交場のような雰囲気の店内。ひとりでも楽しめるサービスも定評
バターソテーしたぷりぷりの牡蠣にはごぼうの素揚げがのる“広島かなわ水産の牡蠣”
“茨城産鴨と黒トリュフのサンドイッチ”は、コース1皿めの驚きの味わい
取材・文 中村孝則 美食評論家
1964年神奈川県葉山生まれ。ファッションからカルチャー、美食などをテーマに新聞や雑誌、テレビで活動中。主な著書に『名店レシピの巡礼修業』(世界文化社)がある。2013年より“世界ベストレストラン50”の日本評議委員長も務める。さらに、グラナパダーノとパルマハムの親善大使に任命されている。
●スッドレストラン
住所:東京都港区海岸1-10-30 アトレ竹芝2F
TEL:03-5422-1073
営業時間:12:00 ~ 23:00
定休日:アトレ竹芝の休館日に準じる
URL:https://sud-terakoya.jp/
●クラージュ
住所:東京都港区麻布十番2-7-14 1F
TEL:03-6809-5533
営業時間:ランチ 12:00 ~ 15:00、ディナー 17:30 ~ 23:00
定休日:日曜・祝日(不定休あり)
URL:https://www.facebook.com/Courage-bread-100253425010971/
『Urban Safari』Vol.17 P31掲載