【馬場雄大】海外挑戦を決意できたリーグ連覇とMVP獲得!
NBAのコートに立つことを目指し、海外リーグでの挑戦を続ける馬場雄大。「やるからにはてっぺんまで行きたい」と語る貪欲なSGは、アルバルク東京時代の大一番で得た自信を胸に、夢に向かって険しい道を一歩一歩、登りはじめた。
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- アスリートの分岐点! vol.25
YUDAI BABA
TURNING POINT
2019年5月11日
B.LEAGUE
CHAMPIONSHIP 2018-19
VS 千葉ジェッツ
進もうという気持ちになれた!
日本バスケ界のエリートコースを歩んできた馬場雄大。現役大学生プレイヤーとしてアルバルク東京に加入し、リーグ初制覇を達成した初年度に新人賞を受賞。チームが連覇を果たしたプロ2年めでチャンピオンシップMVPを獲得。3年前からは田臥勇太、八村 塁、渡邊雄太などに続くNBA選手を目指して海外リーグで戦っている。そんな馬場が、NBAというひとつ上のステージに歩を進める分岐点となった試合。それは、2018-19シーズンのファイナルとなった千葉ジェッツ戦だったという。リーグ2連覇を目指す東京と、天皇杯との2冠を目指す千葉。強豪同士がプライドをぶつけ合ったこの1戦は、Bリーグ王者決定戦にふさわしい熱戦となった。
「これが日本でプレイした最後のシーズンだったのですが、シーズン最後の大一番を制して優勝でき、僕自身はMVPを獲得できた。これでもう思い残すことなく目標としてきた海外でプレイできる。そう決意できたのが、この試合だったんです。特にMVPという形で自分を証明できたことが背中を強く押された理由でもありますし、やっぱり貪欲な性格なので、ここをクリアしたら次へ進もう。自然とそういう気持ちになりました」
この試合では、アルバルク東京が千葉ジェッツを49-36で凌駕した総リバウンド数が、勝負の明暗を分けたひとつの要因だといわれている。まさにその空中戦の主役を担ったのが、馬場だった。この試合で馬場は、長身センターのアレックス・カークの9リバウンドを超えるシーズン自己最多の12リバウンドをマーク。持ち味である跳躍力と豊富な運動量を生かして大型選手たちからボールを奪い取り、攻撃に繋げていった。さらに馬場は、こうしたゴール下での攻防に加え、オフェンス面でも存在感を発揮。第1クォーターでは得意技のスティールからのワンハンドダンクをあざやかに決めて、12-6のリード拡大に貢献。また、相手のエース・富樫勇樹の3ポイントが決まりはじめてからの猛追を受けた第4クォーターでは、64-59の5点差まで詰め寄られた終盤で、残り3分台と残り2分台の2回にわたってジャンプショットを決めて追撃を食い止めた。この試合を通して12得点12リバウンド、6アシスト2スティールという大車輪の活躍を見せてチャンピオンシップMVPを獲得した馬場は、Bリーグ2連覇の立役者だった。
「優勝が決まった瞬間は、まさに待ち望んだ瞬間でした。というのも実は、その年のプレイオフの準決勝でケガによって離脱していたエースの田中大貴選手が戻ってきたのですが、まだ本来のコンディションではなかった。だから誰かがステップアップしないと2連覇はない、とヘッドコーチにいわれていました。そんな中、今までやってこなかったスタート(先発選手)として準決勝のコートに立つことになり、自分が果たすべき役割を表現できた。そして、そんな新しい自分を、プレイオフを通して表現し続けた集大成として優勝に導くことができた。そこに大きな成長を感じました」
ステップアップを目指して進んだステージへの道のりは平坦なものではなかったが、持ち前の貪欲さに磨きがかかったようだ。海外挑戦の初年度はNBA下部リーグのテキサス・レジェンズで開幕を迎え41試合に出場。その後、豪州のメルボルン・ユナイテッドと再契約をしたが自身のケガの影響もあって十分にプレイできない時期が続いた。一方で、トム・ホーバスHCの新体制となった日本代表では、2023年W杯アジア地区予選メンバーに選出。海外で揉まれた経験と技術をどこまで発揮できるかに注目が集まっている。
「ホーバスHCのチームでは、“10回攻めるなら7本はスリーポイントで、ドライブは3本にしてほしい”と明確にいわれています。つまり、スリーポイントをより積極的に打つことを求められているのですが、今までの自分の武器であるドライブインありきのスリーポイントから、スリーポイントがあってこそのドライブに意識を変えなくてはならない。20年間やってきた自分のスタイルを1からまた積み重ねている感じです。すぐに変えられるかどうかはわからないけど、これは次のステップに進むために必要なこと。この身長でスリーポイントの優先順位がドライブより低いとNBAに入れる確率が低くなる部分もある。新しい武器を磨き、その先で誰も成し遂げられないことを成し遂げたい。そのために今は、自分自身と向き合ってプレイしています」
バスケットボール選手
馬場雄大
YUDAI BABA
1995年、富山県生まれ。筑波大学在学中にアルバルク東京に入団。1年めで新人王を獲得し、2年めはリーグ2連覇に貢献してチャンピオンシップMVP選出。2019年にNBAを目指し渡米。日本代表としては、2019年W杯に主力として出場。2023年W杯のアジア地区予選の代表メンバー。
TAMURA'S NEW WORK
[〈トップス〉“PROJECT22”]
“プロジェクト22”の第一弾では、UEFAチャンピオンズリーグで戦うトップクラブの選手を、世界から選ばれた22人のアーティストがそれぞれの作風を生かして描いた。「アジア代表として、販売数という結果でもプロジェクトに貢献することができたら嬉しいですね」
世界を目指すための第一歩
コレクター用ケースに収められたトレーディングカードに、田村の持ち味である躍動感あるタッチで描かれたアヤックスのFWアントニー(現マンチェスターU所属)。これはトレーディングカードの世界的なブランドであるトップス社が手掛ける、スポーツイラストトレーディングカードプロジェクトの第一弾としてリリースされたばかりのものだ。
「トレーディングカード文化をさらに盛り上げるために立ちあげられた“プロジェクト22”に参加する22人のアーティストの1人として、起用していただきました。アジア人で選ばれたのは僕だけなので自分がアジア代表のような存在です」
夢に向かって進む大切な1歩でもある。
「僕の夢は、世界一のアーティストになることです。だから、世界のファンに愛されているトレーディングカードに描けるチャンスを、そのための1歩にしたい。これからシリーズで作品を発表していくので、インパクトを残したいですね」」
アーティスト
田村 大
DAI TAMURA
1983年、東京都生まれ。2016年にアリゾナで開催された似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会で、総合優勝。アスリートを描いた作品がSNSで注目を集め、現在のフォロワーは20万人以上。その中にはNBA選手も名を連ねる。海外での圧倒的な知名度を誇る。Instagram : @dai.tamura
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雑誌『Safari』11月号 P260~262掲載
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illustration : Dai Tamura text : Takumi Endo photo by AFLO