〈夕月〉の“お任せコース”
連載4回めは中目黒のイタリア料理店〈イカロ〉宮本義隆シェフ。飲食店の入れ替わりが激しく、常に変わり続ける街で、2008年のオープン以来ずっと食通たちから変わらない支持を集める職人気質のシェフが、「仕事に惚れる」と推す店、料理とは。
- SERIES:
- 注目シェフが教える感動の「名店メニュー」 vol.04
季節のコース(1万5000円、税込みサ別)
写真手前から時計回りに。造りは淡路産天然真鯛と勝浦産生本マグロのヅケ。真鯛は柑橘塩で。脂がのった太刀魚の焼き物は、辛味大根と梅肉、京菜花を添えてさっぱりとした一皿に。前菜は自家製胡麻豆腐 雲丹のせ。丸茄子と車海老の揚げ出汁。椀は、希少な宮崎産シロアマダイに冬瓜、ふきの笹打ちを添えて。料理は1万1000円、1万5000円のコースのみ(写真は1万5000円のコースより一部抜粋)
オススメしてくれたのはこの人!
〈イカロ〉宮本義隆シェフ
上質なワインと味わう北イタリアの郷土料理
宮本シェフの修業先である北イタリアの郷土料理を中心としたシンプルで骨太なイタリア料理をアラカルトで楽しめる。サービスは兄が担当。イタリア各地のバラエティ豊かなワインからフランス・ブルゴーニュの古酒まで揃うセレクトで、ワイン好きをも魅了する。
住所:東京都目黒区上目黒2-44-24 COMS中目黒4F
営業時間:18:00~24:00L.O(土曜、祝日17:30~22:00L.O)
休日:日曜
TEL: 03-5724-8085
宮本シェフ
素材も器も上質。味を知る大人におすすめの1軒
華やかな盛りつけや奇抜なパフォーマンスはいっさいなし。メニューは定番を中心にアラカルトで。シンプルな、いや「地味な」といっていい北イタリアの郷土の味にしっかり軸足を置き、中目黒で11年、店を続けてきた宮本シェフ。彼が通うのは、ジャンルを問わず職人気質の料理人が腕を振るう店だ。なかでも、最も長い付き合いになるという1軒が、店の隣のビル1階にある〈夕月〉。
「丁寧にひかれた出汁、魚の扱い。ひとつひとつの仕事がまっとうで、安心して楽しめる。特に魚は素材もピカイチ。希少な食材に出合えることもあります」
また、店の変遷も見てきた宮本シェフは、「新しい流行最先端の店や、派手な店ばかりじゃなく、長い時間をかけて自分の味を作ってきた西根シェフのようなベテラン料理人の仕事を、もっと多くの人に知ってほしいですよね」とも話す。単なるご近所付き合いを超え、料理人同士の深い信頼関係で繋がっているようだ。
西根シェフ
食材と向き合い時間をかけて作り上げた味
仕入れが味作りにおいて重要なパーセンテージを占めるといわれている和食の世界。
「本当に、いい食材が使えるようになると、仕事がどんどん面白くなる。力のある食材が、料理の可能性を広げてくれますから」
と、西根シェフは少年のように目を輝かせる。有名店での修業経験はなく、腕一本で飲食激戦区の中目黒をサバイブしてきた。いわく「叩き上げ」。が、扱う素材はいまや東京や京都の高級懐石、一流割烹と肩を並べるほどのレベル。現在は、週に数回、シェフ自ら市場に足を運ぶ。今後は、京都の仲卸からもハモや白身魚などの高級魚を仕入れる予定だ。目下の楽しみは、女将とともに全国を食べ歩く旅をすること。
「現地で出合う尊敬する一流料理人の仕事から、いつも新たな刺激とパワーをもらいますし、生産者とのご縁をいただくこともあります。私たち夫婦の経験を、この店で少しでもお客様に還元することができたらと思っています」
Check1 極上の素材
“幻の魚”ともいわれるシロアマダイなど、高級寿司店や懐石料理店でしかお目にかかれない食材が登場することもしばしば。写真は宮崎産のもの。少し寝かせて旨みを引き出す
Check2 手酒の提案
話題の造り手のものから、知る人ぞ知る地酒まで、日本酒も選び抜かれたものが揃う。食事に合わせたセレクトや飲み方の提案は女将が担当。料理の味を、さらに増幅させてくれる
夕月[ゆうづき]
各国料理のエッセンスも取り入れた上質な居酒屋として20年前にオープンした小さな店に、転機が訪れたのは2015年。ミシュランガイドのビブグルマンに選出されたことを機に、和食の星つき店を食べ歩いた西根和義シェフ。素材選びから器使いまで研ぎ澄まされた懐石の世界に魅了され、以降、和食一筋で味と季節の表現を磨き続けてきた。世界的な日本食ブームにも後押しされ、いまや地方や海外からもゲストが訪れるように。今年5月からアラカルトをやめてお任せコース1本にし、次の10年に勝負をかける。
●夕月[ゆうづき]
住所:東京都目黒区上目黒2-44-3
営業時間:18:00~23:00
休日:不定休
TEL:03-3791-5671
雑誌『Safari』7月号 P216・217掲載
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photo : Jiro Otani text : Kei Sasaki