数々の名料理人を生み出した〈銀座レカン〉の憧れフレンチ!
フランス語で“宝石箱”を意味する〈銀座レカン〉は1974年に創業した老舗のグランメゾン。銀座4丁目のミキモト本店ビルの地下にあり、扉をくぐれば、“レカンレッド”の意匠が広がり、ホスピタリティあふれるサービススタッフが緊張を解いてくれる。メインダイニングはシャンパンゴールドを基調とし、流れるようにガラス球を配したシャンデリアや大理石が目を引く。まさに夢に見たラグジュアリーを堪能できる空間。
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- アレが食べたいからこの店へ! Vol.87〈銀座レカン〉
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- アレが食べたいからこの店へ! Gourmet Culture

きらめくシャンデリアは圧巻
この非日常的な空間の中で、国内のエグゼクティブをもてなしてきた。日本のフランス料理界で50年以上の歴史をもつレストランは、数えられるほどしかなく、まさに日本のフレンチを牽引してきた存在といっていい。
9代目料理長に就任した杉田周人氏
CBO(Chief Branding Officer)兼総支配人を務める近藤佑哉氏
その〈銀座レカン〉で、2025年10月に1995年生まれの杉田周人氏が9代目の料理長に就任した。1つ星〈タテルヨシノ銀座〉や3つ星〈フォーシーズンズホテル丸の内 東京〉の〈セザン(SÉZANNE)〉といった名店で腕を磨いた料理人。〈銀座レカン〉でCBO(Chief Branding Officer)兼総支配人を務める近藤佑哉氏が見出してきた逸材だ。
華やかかつ落ち着いたメインダイニング
コースの構成もシンプルになり、ランチ1コース(1万6000円)とディナー1コース(2万8000円)に集約。ランチでもディナーコースが注文可能。杉田さんの料理を存分に楽しみたいのならディナーコースの“ムニュ レカン(Menu Lecrin)”で決まり。カナッペやアミューズブーシュにはじまり、前菜3品、魚料理、肉料理、デザート3品、ミニャルディーズと食後の飲み物、さらにはギフトまで付く。
カナッペ3品
カナッペは3品を同時に提供。左奥の“十勝ハーブ牛 ビーツ”は、ビーツのピクルスで生ハム仕立ての十勝ハーブ牛のタルタルを巻いた。ビーツの甘みがタルタルによく合う。右奥にある“シーザーサラダ”は、彩りも鮮やかなロメインレタスのタルトレット。手前は“ひよこ豆 パニス”で、ほくほくとしたひよこ豆のコロッケだ。温かいうちに食べた方がより美味しいから、こちらから手にとって。
“東京白カビ ブランマンジェ”
アミューズブーシュは、“東京白カビ ブランマンジェ”。渋谷にある〈チーズスタンド〉の“東京白カビ”をなめらかなブランマンジェに仕立てた。下にはオリーブオイル、トマトのジュレ、マリーゴールドの花。上にはマーシュをあしらう。なめらかで酸味があるので、食欲が刺激される。
“関鯖 ヴィシソワーズ 大葉”
前菜1品目の“関鯖 ヴィシソワーズ 大葉”は、脂がのった大分県の関鯖を使用。関鯖は皮目が炙られているので香ばしく、柿のスライスに生姜、花穂紫蘇が添えられている。赤と緑が映えた絵画のような一皿。
“猪 コンソメ”
“猪 コンソメ”は、脂がのりはじめた猪と、炭火で焼いた舞茸、ジャガイモのピューレと百合根、白髪葱で構成。仕上げに2回も濾して凝縮させた“ダブルコンソメ”がかけられる。濃厚なスープが猪の快味をより深める。
“帆立貝 バターナージュ トリュフ”
最後の前菜は、“帆立貝 バターナージュ トリュフ”。軽く火入れした帆立貝と里芋のコンフィを取り合わせ、その下にはトリュフの幽香が素晴らしいペリグーソース。塩茹でした落花生が甘く、飾り切りした2枚のトリュフがアイコニック。
“和歌山県産甘鯛 天使の海老”
“和歌山県産甘鯛 天使の海老”は、食味に優れた甘鯛を、サクサクっとした食感がたまらない松笠揚げにした。食べる直前に、甲殻類を煮詰めたソースがかけられる。ブロッコリーのピューレがちょうどいい箸休め。
“ほろほろ鳥 黒ビール 黒キャベツ”
メインディッシュは“ほろほろ鳥 黒ビール 黒キャベツ”。“食鳥の女王”であるほろほろ鳥の生産者として有名な岩手県の〈石黒農場〉から仕入れた。繊細な食味のほろほろ鳥を炭火で仕上げて、力強い味わいに。フリットした黒キャベツをのせ、まわりには黒キャベツのパウダーを散りばめた。オレンジを加えた黒ビールのソースはコクがあり、ほろほろ鳥の食味により奥行きを与える。
料理の後は“デザートのコース”。エグゼクティブアドバイザーパティシエの竹内理恵さんは、2025年10月〈銀座レカン〉にジョインした。自身が展開するスイーツブランド〈レアリゼ(Realiser)〉と同様、白砂糖やグルテンを使用しない素材を生かしたスイーツを創出する。
“和梨 ハーブ マスカット”は、和梨のソルベとシャインマスカット、ハーブのゼリーといった構成で口中がさっぱりとする。ソルベは最初にそのまま食べて、途中から混ぜて食べると、味わいの変化を楽しめるのがいい。
“抹茶”
“抹茶”は、愛知県のブランドである〈西尾抹茶〉を用いた温かいフォンダン。玄米粉をベースにした生地で、慎ましやかな甘味が感じられる。さっぱりとした柚子のクリームとザクザクっとした黒糖のクランブルがよいアクセント。
“和栗 ごぼう ショコラ”
“グランデセール”=メインのデザートは“和栗 ごぼう ショコラ”。和栗の生地と自家製甘露煮のケーキは、栗の俊味が存分に味わえる。食感が楽しいゴボウのチュイール、ビターでメリハリのあるカカオニブを加えたショコラのアイスクリームも出色。
“黒胡麻オレンジ いちじく”
食後の飲み物とともに提供されるのが“黒胡麻オレンジ いちじく”。手前は胡麻のクリームをサンドしたオレンジクッキー。奥の小菓子は、イチジクにクレープ生地を包んでいただくといい。最後の“ギフト”は帰る時にもらえるので、楽しみにしておいて。
グランメゾンだけあって、ワインの品揃えも素晴らしい。シェフソムリエでもあり、3人ものソムリエ陣を率いる近藤氏が厳選しているから間違いなし。 グラスやボトルで好きなものをオーダーしてもいいし、ワインペアリング(1万5000円~)を合わせるのもいい。工夫を凝らしたノンアルコールペアリング(7000円~)も用意されているから、お酒が飲めないときには、こちらがオススメ。
シャンパーニュのワゴン
最初のワインは、“シャンパーニュワゴン”の中からセレクトできる。“アール・エル・ルグラ ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ ブリュット”(写真左)は、シャルドネ100%のシャンパーニュで、シトラスと白い花の香りが素晴らしい。蜜のような熟成感もあるので、心に残る最初の一杯になる。
備前焼の酒器で提供されたのは“キリ・ヤーニ アガソト シングル・ブロック ロゼ 2023”(写真中上)。ギリシャのロゼワインで、フレッシュな赤果実の香りがある。適度なタンニンが感じられるので、関鯖にぴったりと寄り添う。
“ドメーヌ・ジェノ・ブーランジェ ピュリニー・モンラッシェ レ・ノスロワ 2021”(写真右上)は、甘みを含んだスパイスの香りと、果実味とミネラルのバランス感が特徴的。ボリュームがあるので、甲殻類のソースとの相性もいい。
メインディッシュでペアリングされたのは、“ドメーヌ・ニコル・ラマルシュ クロ・ド・ヴージョ グラン・クリュ 2020” (写真中下)。しなやかなタンニンをもつ赤ワインで、ほろほろ鳥の上味にマッチする。
“シャルトルーズ・ド・クーテ 1995” (写真右下)は極上の甘味をもつ貴腐ワイン。トロリとした食感ととろけるような甘味でうっとりさせられ、デザートの味わいをより深めてくれる。
50年経った今も、銀座で燦然と輝く〈銀座レカン〉。古きよきなスタイルだけでなく、20代のフレッシュなスタッフが多かったり、テーブルに置かれたiPhoneでメニューや食材について詳しく紹介したりと、“新生”が肌身で感じられるのも新鮮。新しい料理長が就任したことだし、“憧れのフレンチ”に足を踏み入れてみて!
⚫︎銀座レカン
住所:東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビルB1
営業時間:11:30~15:00(13:00LO)、17:00~22:00(20:00LO)
定休日:水曜
TEL:03-3561-9706
URL:https://lecringinza.co.jp/
※サービス料別
●グルメジャーナリスト 東龍さんの連載・記事はこちら!
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グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!
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1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。





































































