個室で懐石を味わえる、老舗料亭〈なだ万本店 山茶花荘〉がリニューアル!
〈なだ万〉といえば、1830年に大阪で創業した日本を代表する老舗料亭。伝統的な料理を守りつつ、食品事業や海外事業も展開している。1974年に本店が大阪から、〈ホテルニューオータニ〉が誇る約1万坪の広大な日本庭園へ移転。〈なだ万本店 山茶花荘〉と店名を改め、数多くのVIPの“口福”を満たしてきた。
紫の間・景色
〈なだ万本店〉が2025年3月28日にリニューアルオープンしたとあって、耳目を集めている。完全個室5部屋のうち、ひと部屋がテーブル席に変わり、さまざまなニーズに応えられるようになった。4部屋の和式個室はどれも掘り炬燵なので、長時間の食事でもリラックスできる。
料理長の吉田武彦さん
新しく料理長に就任したのは、吉田武彦さん。〈名古屋なだ万〉をはじめとして〈香港アイランドなだ万〉や〈東京なだ万〉を経てから、〈シャングリ・ラ ホテル 東京 なだ万〉や〈新宿なだ万〉で料理長を務めてきた腕利きの料理人。本店で料理長を務めるに相応しい輝かしい経歴をもつ。
吉田さんが特にオススメするのが、“本懐石 葵”(3万8000円)。豪華な前菜にはじまって、温菜、造り、煮物など10品前後ものメニューが堪能できる。
前菜
前菜は山海の美味を散りばめた盛り合わせ。“春野菜浸し 炙り干し子 針魚(さより)梅酢合え”は、菜の花とウルイが春を感じさせ、ナマコの卵巣を乾燥させた珍味“干し子”が旨味を加える。“白胡麻豆腐 鮑柔らか煮 木の芽味噌 旨出し”は絶妙なやわらかさに火入れした鮑が、白胡麻豆腐の甘味を引き立てる。“大和芋 針塩昆布 叩き梅 花穂”は竹の器に風情があり、慎ましい味わいの細魚とシャキシャキとした大和芋を取り合わせた。“海老タラの芽”は、海老とタラの芽をともに天ぷらにして揚げたという意欲作。
“フォアグラ茶碗蒸し トリュフ餡”
〈なだ万本店 山茶花荘〉のシグネチャーディッシュといえば、“フォアグラ茶碗蒸し トリュフ餡”。惜しげもなくフォアグラを練り込んだ茶碗蒸しで、コンソメ餡と細切りした黒トリュフが相まって、実に乙な味わい。上にのせられたフォアグラの照り焼きも、言及するべき美菜。アンダープレートの〈象彦〉の漆器が茶碗蒸しを美しく引き立てる。
“のどぐろ炙り 赤貝 車海老 割醤油”
造りは2回に分けて提供されるので、よい状態で楽しめる。“本鮪 伊勢海老 炙り唐墨 黄味醤油”は、宮城県塩竈(しおがま)市の本鮪と、炙った伊勢海老のコンビネーションが贅沢。拍子切りした自家製唐墨は日本酒にぴったり。途中から、黄味醤油でより濃厚に“味変”するのもいい。次は“のどぐろ炙り 赤貝 車海老 割醤油”。炙ったノドグロは深い至味を讃えていて、赤貝や甘海老の甘味とよいコントラスト。
“黒毛和牛花山椒鍋 京三つ葉 独活 茄子 柚子胡椒”
神戸ビーフを用いた“黒毛和牛花山椒鍋 京三つ葉 独活 茄子 柚子胡椒”は、しゃぶしゃぶ仕立て。佳味に満たされた神戸ビーフには、花山椒の刺激がちょうどいい。シャキッとした三つ葉とやわらかい茄子が箸休めになる。“鯛の子 飯蛸 蕗 新若芽餡 木の芽”
“鯛の子 飯蛸 蕗 新若芽餡 木の芽”では、春の味覚である“鯛の子(スケソウダラの卵)”と蛸を炊き合わせた。フキと木の芽が、清香と華やかな彩りを加える。
“黒毛和牛ヒレ藁焼 こし油 蓮根チップ 万願寺ソース”と“吉次(=キンキ)の山椒焼き”
メインディッシュの焼物は肉と魚を同時に堪能できる一皿。“黒毛和牛ヒレ藁焼 こし油 蓮根チップ 万願寺ソース”は、藁焼きによって米沢牛の和牛香がより一層に引き立ち、ニンニクが香る万願寺ソースとの相性も抜群。“吉次山椒焼 パールオニオン トリュフ塩”は、脂がのった“吉次(=キンキ)の山椒焼き”で、黒毛和牛にも負けない旨味を携えている。
“雲丹 トリュフ釜炊き 香味海苔”
食事の“雲丹 トリュフ釜炊き 香味海苔”は、雲丹と黒トリュフを一緒に釜炊きして、しっかりと混ぜたご飯。雲丹によって全体が濃厚でクリーミーとなり、黒トリュフによって幽香がもたらされている。
女将の金澤玲子さん
女将の金澤玲子さんが勧めるお酒は、ほかではなかなか出合えない希少な美酒ばかり。“コレ ブリュット”(3696円/グラス)は最初にいただきたいシャンパーニュ。白い花の香りがあり、フレッシュで気品がある味わい。食前酒から食中酒として幅広く合わせることができる。“なだ万 鶴齢 純米大吟醸”(3960円/一合ボトル)と“なだ万 鶴齢 本醸造”(2376円/一合)は、新潟県南魚沼市にある青木酒造とのコラボレーション。前者は果実を思わせる華やかな香りがあり、後者はどんな料理にも合う万能な味わい。〈なだ万 山茶花荘〉で楽しめるお酒
“なだ万本店 山茶花荘 大吟醸YK35信 遠心分離酒”(4万6200円/四合ボトル)は、素晴らしい吟醸香を楽しめるお酒。旨味もあるので、肴が進むことは間違いない。すっきりとした味わいの“なだ万 麦焼酎”(1716円/グラス)、ふわっと広がる香りがたまらない“なだ万 芋焼酎”(1716円/グラス)とオリジナルの焼酎も取り揃えられている。日が暮れると一層落ち着いた雰囲気に
全席が広々とした完全個室になっていて、プライベート感が守られているのが嬉しい。200年近くもの歴史をもつ老舗料亭の〈なだ万〉。その本店が新しくなったとあっては、何をおいても食べに行ってみなくては!
●本懐石 葵 5万160円
・前菜
春野菜浸し 炙り干し子 針魚梅酢合え
白胡麻豆腐 鮑柔らか煮 木の芽味噌 旨出し
大和芋 針塩昆布 叩き梅 花穂
蛸柔らか煮 芥子 海老タラの芽 目光一夜干し 蚕豆艶煮 花弁百合根 南瓜チーズ寄せ キャビア
・温菜
フォアグラ茶碗蒸し トリュフ餡
・造り
本鮪 伊勢海老 炙り唐墨 土佐醤油 黄味醤油
のどぐろ炙り 赤貝 車海老 割醤油
・煮物
黒毛和牛花山椒鍋 京三つ葉 独活 茄子 柚子胡椒
・合肴
鯛の子 飯蛸 蕗 新若芽餡 木の芽
・焼物
黒毛和牛ヒレ藁焼 こし油 蓮根チップ 万願寺ソース
吉次山椒焼 パールオニオン トリュフ塩
・食事
雲丹 トリュフ釜炊き 香味海苔
・香の物
花山葵 長芋溜漬 胡瓜
・止椀
赤出汁 根芋 茗荷 青さ
・水菓子
マンゴーマスカルポーネ 苺ソース メロン 枇杷
●ホテルニューオータニ なだ万本店 山茶花荘
住所:東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ日本庭園内
営業時間:11:30~15:00(13:30LO)、17:00~22:00(19:30LO)
定休日:不定休
TEL:03-3264-7921
URL:https://www.nadaman.co.jp/pages/restaurant_sazankaso
※サービス料、部屋代込み
●グルメジャーナリスト 東龍さんの連載、記事はこちら!
グルメジャーナリスト東龍のホテルグルメで“口福”体験!
アレが食べたいからこの店へ!
●公式 Instagram(@safarimagazine_official)はコチラ!
1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。