話題のSFアクション『トゥモロー・ウォー』は、エイリアンが強すぎる!?
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『ジュラシック・ワールド』などのメガヒットシリーズで人気スターとなったクリス・プラット。そんな彼の最新主演作『トゥモロー・ウォー』がアマゾンプライム・ビデオで配信され、好評を博している。人類は絶望的な戦争に勝利することができるのか? 注目のSFアクションの見どころを紹介する。
2051年からタイムトラベルしてきた兵士たちが、現代(2022年)の人々に助けを求めてきた。2051年の世界は獰猛なエイリアンに侵略され、人類滅亡の危機に瀕している。すでに地上の総人口は50万人を切っており、兵力が足りない。元軍人の高校教師ダンは妻や幼い娘との生活を大切にしていたが、図らずも徴兵され、2051年の激戦地マイアミに送り込まれる。生還率が2割という過酷な戦場で、彼が見たものは!?
まず驚かされるのは戦闘描写やSF設定などのスケールの大きさだ。配信作品にしては珍しく、多額の製作費が注ぎ込まれていることがうかがえる。それもそのはず、本作は元々、米パラマウントの配給で2020年に全米劇場公開が予定されていたのだ。が、パンデミックの影響により公開が見送られ、アマゾンプライム・ビデオが配信の権利を買い取って陽の目を見ることに。劇場公開用の新しい大作を端末で見ることができるのは、ある意味、贅沢な娯楽ではないか!
元軍人で、今は高校教師の主人公ダン・フォレスター(クリス・プラット)
ストーリーでは、まずタイムトラベルという要素に引きつけられる。2022年から2051年の世界に飛び、人々が戦闘を繰り広げるという設定。また、2022年の世界で徴兵されるのは、ほとんどが40代以上の人々。これは2051年の世界では、彼らのほとんどが亡くなっているからで、未来の自分との対面を避けるという意味もある。ここらへんの凝った設定も面白い。
戦闘描写の凄まじさにも触れないわけにはいかない。2051年の世界に送り込まれるや、兵士たちは廃墟と化した戦場のど真ん中に放り出される。エイリアンは神出鬼没であるばかりか、ときには群れを成し、猛スピードで襲いかかってくる。『エイリアン2』や『スターシップ・トゥルーパーズ』を彷彿させるスペクタクルは圧巻だ。
最初のうちは、エイリアンの姿は双眼鏡等で遠目にとらえられたり、チラ見せ程度だったりと、見る者をジラす。エイリアンのビジュアルをひたすら隠して恐怖をあおり、グロテスクなビジュアルでショックをあたえるという寸法だ。飛び道具が放たれる触手や、複数の脚を持つ、巨大蜘蛛のような容姿は、目の当たりにすると、確かに衝撃的である。
写真右/ダンの娘ミューリ・フォレスター(イボンヌ・ストラホフスキー)。未来では地球を救うため戦闘にも参加している
一方で、本作には親子のドラマという側面がある。主人公ダンは2051年の世界で、立派に成長した愛娘と出会い、彼女に協力し、また彼女の未来を守ろうとする。また、ダンは身勝手な父を嫌っており、彼と距離を置いていたが、やがて愛娘を守るために父に協力をもとめることになる。戦時という極限状態の中で、親子3世代の絆が試されるのだが、そこに物語としての面白さが宿っている。
写真右/クリス・マッケイ監督は、レゴのアニメーション作品を手がけてきた人物
監督のクリス・マッケイはハリウッドで20年以上のキャリアを重ね、長編デビュー作となったアニメーション『レゴバットマン ザ・ムービー』で賞賛された遅咲きの俊英。壮大なビジュアルとエモーショナルなドラマを、バランスよく結びつけた手腕が光る。もちろん、戦う父親を体現したクリス・プラットの熱演も見どころだ。
写真左/ダンの父親ジェームズ・フォレスターを演じるJ・K・シモンズ。型破りなキャラクターながら頼れる存在
主人公を取り巻く極限状態は深刻で、ちょっとした油断が命の危機に直結する。現実世界ではいきなりエイリアンに襲われて命を落とすというようなことは今のところないが、そこにはパンデミックの世界を生きる緊張感と相通じるものがあり、そういう意味ではリアルなスリルを体感させる。今の時代に見るべき、SFスペクタクルと言えるだろう。
『トゥモロー・ウォー』
監督/クリス・マッケイ 脚本/ザック・ディーン 出演/クリス・プラット、イボンヌ・ストラホフスキー、J・K・シモンズ 配信/アマゾンプライム・ビデオ
2021年/アメリカ/138分
アマゾンプライム・ビデオで配信中
photo by AFLO