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CULTURE カルチャー

2024.11.09


リドリー・スコット監督「残念ながら、人間は歴史から何も学んでいない」【映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』インタビュー】



2000年の前作『グラディエーター』はアカデミー賞作品賞を受賞。リドリー・スコットの代表作のひとつになったが、実に24年ぶりに続編『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』が完成した。リドリーが自らの監督作の続編やシリーズものを手がけるのは、『エイリアン』に続いて2回目。それだけ思い入れのある作品ということだ。

前作の主人公マキシマスは、ラッセル・クロウが演じて彼にオスカーをもたらした役だが、今回はそのマキシマスの息子ルシアスの物語が描かれていく。古代ローマのコロセウム(円形競技場)での目を疑うアクションと、ルシアスが最強剣闘士=グラディエーターとなる劇的な運命が、前作を上回るスケールで展開。間もなく87歳になる巨匠は、どんな思い出この続編に挑んだのか。自宅とオンラインでつながったインタビューで、リドリー・スコットの胸の内を聞いた。

ーー『グラディエーター』の続編に取り掛かろうと思った最大の理由は何ですか?

「多くの人から“グラディエーターが一番好きな映画です”という言葉をもらって、“それなら続編を作れないこともだろう”とは、つねに思っていた。他の作品が続いていたので、なかなか着手するタイミングがなかったのだよ」

ーー前作の後に続編の脚本が進んでいるという報道もありました。その内容は主人公のマキシマスが“天国に行った後”という、ちょっと非現実的なものだったようですが……。

「当時の脚本家は果敢なチャレンジを試みたのだが、最終的にうまくまとまらなかった。それで企画を2年間ほど寝かせたところ、ある名案が浮かんだ。マキシマスの息子が生き残っており、皇帝の血を引くために命を狙われるので、彼の母親が遠くへ追いやる、というもの。それを起点に脚本を書き進めてもらっている間、TVシリーズの『ふつうの人々』を観たわけだ」

ーー今回の主人公ルシアスを演じたポール・メスカルが出演していたドラマですね。

「そう。一気見してしまった。ポールにリチャード・ハリスの孫を演じさせたら説得力があると確信したのさ。ハリスは前作でルシアスの祖父にあたるマルクス・アウレリアスを演じた俳優だ。ポールはルックスはもちろん、豊富な舞台経験もあると知り、実力は問題ないと踏んで役をオファーしたんだ」

ーーポール・メスカルのルシアスを観て、ラッセル・クロウの声のトーンも甦りました。

「ポールはアイルランドのラグビー選手みたいだから、外見はラッセルに似ていないと思うが、たしかに二人とも舞台出身だからそう感じるのだろう。コロセウムのアリーナで観衆に語りかけるシーンは、状況もセリフも舞台的だからね」
 

  

 
ーーそして重要なキャスティングといえば、デンゼル・ワシントンです。2007年の『アメリカン・ギャングスター』以来の仕事ですね。

「マクリヌスという極悪非道な面もある役で、スタジオに“是非デンゼルを”と提案したら快諾してくれた。私は時代モノを撮る時に絵画を参考にすることが多い。写真のない時代の重要資料だからね。今回はジャン=レオン・ジェロームというフランスの画家の“The Moore”に描かれた男が、マクリヌスのヒントになった。オレンジの服に真っ青なターバンを巻いており、それをデンゼルに送って“こういう男を演じてほしい”と伝えたところ“是非やろう”と返事をくれたのさ」

ーー前作ではマキシマスとトラの闘いが話題になりました。今回ルシアスの相手として多くの動物が登場します。これらはあなたのアイデアなのですか?

「もちろん脚本家と綿密に話し合った結果だが、サルやサイ、サメは私のアイデアだ。まぁ監督だから当然だよ(笑)。これらの生き物を使えばどんなアクションを撮れるのか、その方法を心得ているんだ。私は美術大学へ通っていたので本格的な絵画やスケッチを描くことができる。撮影の数カ月前に自分で絵を描いたストーリーボードが分厚いコミックブックのようになり、それを各部署で共有することで、サルやサメとの決闘シーンを映像化しやすくなるんだ。私がストーリーボードを描くことで、製作費が1000万ドルくらい浮いてるんじゃないかな(笑)」

ーーあなたの現場は、撮影のスピードが速いことでも有名です。プロデューサーに話を聞きましたが、これだけの大作を約50日で撮り上げたそうですね。カメラを一度に最大8台も使っているからでしょうか。

「カメラを11台使ったシーンもある。このようなマルチカメラ方式で一気に撮ると、会話のシーンなどで俳優が自由に演技できるんだ。特に子役には有効だね。本作では(皇帝のペットとして)本物のサルも活躍するが、もちろんサルは私の指示に従わない。そこで4台のカメラにサルを追いかけさせた。サルに合わせた俳優の動きも多方向から撮れるので、編集者に十分な素材を渡せるわけだ」

ーーそして監督の作品では、撮影後の編集作業もスピーディなのですよね。

「そうだ。撮影初日から編集者に映像を渡し、作業を進めてもらう。そして毎週末の土曜の時点で繋がった映像を確認するんだ。そうすることで撮影終了時には、ほぼ半分の編集が終わっている。ただしそのためには優秀な編集者と組むことが大切だ。すべての撮影が終わってから編集作業に入る監督もいるが、そんなことをしたら1本を完成させるのに2年はかかるだろう。私なら痺れを切らしてしまうね(笑)」

ーーこの『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』は今の社会に何かを訴える作品になっていますか? あるいは、社会的テーマとは無関係な作品ですか?

「残念ながら、人間は歴史から何も学んでいない。ひたすら過ちを繰り返すのみだ。そんな事実を伝えているが、そこを強調しているわけではない。私は第二次世界大戦勃発前に生まれ、1947年と1952年は、陸軍の高官だった父の仕事でドイツに暮らした。父は敗戦国のドイツ復興事業、いわゆるマーシャル・プランに関わっていたのだ。そんな父を通して私は戦争を少しばかり学んだが、現代人のほとんどは戦争について知らないことが多すぎる。だから宗教や、あえて名前は出さないが独裁者が今でも戦争の火付け役になってしまうのだろう」

ーー最近のあなたの作品が『最後の決闘裁判』や『ナポレオン』、そして本作のように歴史モノが多いのは、もっと人々に学んでほしいからですか?

「いや、単に歴史が好きなだけだよ(笑)。当時の衣装や武器などを再現するのが楽しいんだ。前作の『ナポレオン』ではあれこれリサーチを重ね、掘り起こされたナポレオンの遺体の状態など驚くべき事実を知った。ナポレオンの妻ジョセフィーヌの直筆の手紙を見た時は興奮したね。そこからナポレオンとジョセフィーヌの往復書簡を作品に取り入れようと考え、ナポレオンが息を引き取る際にはジョセフィーヌの手紙の言葉を重ねた。あの演出は、我ながらうまく行ったと思っている。それくらい夢中になったので、(インタビューの画面で犬を抱きかかえ)今のこの愛犬に、私はジョセフィーヌと名付けてしまったよ(笑)」

『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』11月15日公開
原案・脚本/デヴィッド・スカルパ 製作・監督/リドリー・スコット 出演/ポール・メスカル、デンゼル・ワシントン、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン 配給/東和ピクチャーズ
2024年/アメリカ/上映時間148

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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
©2024 PARAMOUNT PICTURES.
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