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CULTURE カルチャー

2024.11.02


『エイリアン』『エイリアン2』が映画界の残したものとは?【後編】 ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~ Vol.30


『エイリアン』(1986年)

そしてエイリアンたちと戦う最前線のど真ん中に立つことになる主人公が、前作の惨劇で唯一(愛猫のジョーンズと共に)生き残った航海士の女性、エレン・リプリーである。演じるのはもちろん前作と同じシガニー・ウィーバー(1949年生まれ)。リプリーの乗った脱出艇は宇宙を彷徨い続け、実に57年間も経過してからようやく救助された。その間、コールドスリープ(冷凍睡眠)装置によりリプリーと(愛猫のジョーンズ)は身体的に年齢を重ねていないが、当時11歳だった娘のアマンダが2年前に他界していたことを知らされる。こういった『エイリアン2』で追加されたリプリーにまつわる設定を起点に、本作では彼女の母性が主題のひとつとなっている。そもそもジェームズ・キャメロンが『エイリアン2』の脚本を書きはじめた時、下敷きに使ったのが以前執筆していた『Mother』というタイトルの脚本だった。実はダン・オバノンによる原案の時点では、宇宙船の乗組員は全員男性の設定。改稿の過程で女性がふたり加わり、そのひとりがリプリーだったという経緯がある。

『エイリアン2』で渋々宇宙船ノストロモ号が着陸した小惑星『LV-426』の状況調査に駆り出されたリプリーは、やがてエイリアンに襲撃されたコロニーで唯一生き残った少女ニュートことレベッカ・ジョーダン(キャリー・ヘン)を守るため、勇敢な戦士に変貌・覚醒していく。男性優位社会の典型かつ濃縮体である軍隊の中で、リプリーが打ち出した“戦う女”像は当時相当なインパクトを与えた(同様の意味でジェニット・ゴールドスタイン扮する海兵隊の上等兵バスクエスも人気が高い)。以降、『エイリアン』シリーズはフェミニズムの文脈で語られることも多くなり、リプリーは現在に至るまで自立した強い女性像を象徴するアイコニックなキャラクターとして定着している。尤も『ハートブルー』(1991年)や『ハート・ロッカー』(2008年)の映画監督キャスリン・ビグロー(1951年生まれ)や、『ターミネーター』シリーズのサラ・コナー役として知られるリンダ・ハミルトン(1956年生まれ)と結婚していた時期もあるキャメロンにとって、“戦う女”は単純に好みでもあったわけだが、ともあれ『エイリアン:ロムルス』の主人公レイン・キャラダイン(ケイリー・スピーニー)に至るまで、リプリーという革新的な人物造形の影響は脈々と受け継がれているのだ。

キャメロンの好みで言うと、『エイリアン2』で露骨に際立っているのは兵器やガジェット系のメカフェチぶりである。とりわけ「その子に手を出したらただじゃ済まないわよ!」とリプリーが名台詞を絶叫しながら、エイリアンクイーン(女王個体)と決死のバトルを繰り広げるクライマックスシーン――そこで彼女が乗っている黄色い作業用メカスーツの『パワーローダー』は、近い時期にガンプラブームを経験した男子たちのハートを狙い撃ちした。特に『戦闘メカ ザブングル』(1982年~1983年)の各種ウォーカーマシンによく似ており、「これは大河原邦男がデザインしたものか!?」というくらい“日本サンライズ感”に溢れまくっていたのだ。ちなみに2022年、このパワーローダーの1/12スケールのフル可動のプラモデルが、グッドスマイルカンパニーから発売されたことに吃驚した御同輩も多いはず。
 

  

 

『エイリアン2』(1986年)

さて、1986年夏に公開された『エイリアン2』は前作を凌ぐ興収1億3106万ドルを記録。批評的にも大成功を収め、2009年、英エンパイア誌が発表した『史上最高の続編映画50本』では堂々第1位に選出されている。「オリジナルに劣らぬパート2」の代名詞的な名作として不動の地位を築いていることの端的な証と言えよう。なお、第2位はフランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザーPARTⅡ』(1974年)。第3位はまたまたジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター2』(1991年)といった具合にランキングは続くのだが、やはり第1作とは別の監督が手掛けた成功例という点において『エイリアン2』は格別の快挙だ。

また、さらにこの後、のちに天下を取るデヴィッド・フィンチャー監督が自身の長編映画デビュー作として『エイリアン3』(1992年)を撮り、続いてフランスの個性派、ジャン=ピエール・ジュネ監督がハリウッドに招かれて『エイリアン4』(1997年)を撮った。以上の全4部作を総称して『エイリアン・レガシー』と呼ぶのだが、それぞれの監督の個性が鮮明に反映されたシリーズになっているのが興味深い。先述したように、第1作の『エイリアン』はジャンル映画の土台のうえに欧州の美大的な教養が乗っかって完成したものであり、それが『エイリアン2』では一転、米西海岸で工学部とスポーツを兼ねているスーパー大学生のようなめっちゃアメリカンなノリに仕上がった。

この喩えで言うと、陰鬱な美学が前景化している『エイリアン3』と『エイリアン4』はまた美大に戻った感があり、リドリー・スコット御大当人の監督による続編『プロメテウス』(2012年)や『エイリアン:コヴェナント』(2017年)は美大の教授路線。『エイリアンVSプレデター』(2004年、監督/ポール・W・S・アンダーソン)や『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』(2007年、監督/コリン・ストラウス&グレッグ・ストラウス)などのご陽気な企画ものは、ハメを外した高校の文化祭といった趣か。そうなると『エイリアン:ロムルス』は全科目的にバランスの良い進学校の優等生、5段階評価でオール4みたいな感じだが、それだけに『原点』にはかなわない……いやいや、むしろ『原点』のツメアトの凄さを改めて知らしめるものとして、極めて有益なフランチャイズだったと言えるのではないかと思う。
前編中編

『エイリアン』
製作年/1979年 製作/ウォルター・ヒル 原案・脚本/ダン・オバノン 監督/リドリー・スコット 出演/トム・スケリット、シガニー・ウィーバー、ヴェロニカ・カートライト

『エイリアン2』
製作年/1986年 原案・監督・脚本/ジェームズ・キャメロン 出演/シガニー・ウィーバー、マイケル・ビーン、キャリー・ヘン、ビル・パクストン
 

  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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