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CULTURE カルチャー

2024.07.13

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~ Vol.28
『ビバリーヒルズ・コップ』が映画界に残したものとは?【前編】


『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)

帰ってきたのはあぶない刑事だけではない。63歳(撮影時61歳)になったエディ・マーフィ(1961年生まれ)がデトロイト警察の名物刑事アクセル・フォーリーを30年ぶりに演じるアクション・コメディ映画のシリーズ最新作にして第4弾、『ビバリーヒルズ・コップ/アクセル・フォーリー』(監督:マーク・モロイ)がネットフリックスで2024年7月3日から配信開始されて話題を呼んでいる。今回はベテラン警部補アクセルが旧友の死をきっかけに、ビバリーヒルズで刑事弁護士として活躍する長年疎遠だった娘ジェーン(テイラー・ペイジ)と再会。父娘で二世代タッグを組み、警察内部の汚職を捜査するという内容だ。劇中には懐かしいオリジナルメンバーたちのほか、大物の悪徳警部役でケヴィン・ベーコンがシリーズ初登場。『トップガン:マーヴェリック』(2022年/監督:ジョセフ・コシンスキー)ばりに、身も心も脳みそも80年代イズムに飛ばしてくれるニューヴィンテージな快作に仕上がっている。


『ビバリーヒルズ・コップ/アクセル・フォーリー』(2024年)
 

  

 
1984年に爆誕した『ビバリーヒルズ・コップ』(監督:マーティン・ブレスト)並びに本シリーズが残したツメアト=影響力は深くて幅広い。最もサブリミナル的に世の中に浸透しているのは、ハロルド・フォルターメイヤー(1952年生まれ、ドイツ出身の作曲家)によるインストゥルメンタルのテーマ曲『アクセル・F』だろうか。本曲は全米チャート第3位を記録する大ヒットになり、映画のサウンドトラックアルバムは第28回グラミー賞を受賞。ジョルジオ・モロダーの弟子筋に当たるフォルターメイヤーの楽曲は当時流行のシンセポップ系の王道を行くスコアで、まさにザッツ80sな音色。『トップガン』(1986年/監督:トニー・スコット)の『トップガン・アンセム』(邦題『トップガン~賛美の世界~』)も彼の代表的な一曲である。

ちなみに『アクセル・F』は、1987年にはじまった日本の討論番組『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)のオープニングテーマに使われたジェフ・バストウ(Geoff Bastow)の『ポジティヴ・フォース(Positive Force,Pt.1)』(1986年にドイツのレーベルから発売した『The AV Conception VOLUME1』に収録)に良く似ているとのことで、頭の中でごっちゃになっている人も多いようだ。バストウもモロダーの弟子筋であり、つまりこれらは一様に“時代の音”なのである。

音楽の話を続けると、『ビバリーヒルズ・コップ/アクセル・フォーリー』の冒頭、デトロイトの街並みをバックに勢い良く流れるのは、グレン・フライ(元イーグルス)の『ヒート・イズ・オン』(1985年、全米2位)。これは第1作『ビバリーヒルズ・コップ』と同じで、グレン・フライはデトロイトの出身であることが踏まえられている。続けて『ビバリーヒルズ・コップ/アクセル・フォーリー』のカーチェイスのシーンで流れるのが、ボブ・シーガーの『シェイクダウン』(1987年、全米1位)。こちらは第2作『ビバリーヒルズ・コップ2』(1987年/監督:トニー・スコット)へのセルフオマージュ。言うまでもなくボブ・シーガーもデトロイト出身である。


『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)
 

  

 
そう、これは意外にぼんやり誤解している人も多いようなのだが、アクセル・フォーリーはビバリーヒルズの刑事ではない。ミシガン州デトロイトの市警所属だ。第1作『ビバリーヒルズ・コップ』では最初にデトロイトの寂れた街並みが映される。アクセルはこのあまり裕福ではない地域で育った元不良少年。そんな彼のもとに、幼馴染みのマイキー(ジェームズ・ルッソ)が訪ねてくる。彼は15歳の時、一緒にキャデラックを盗んで逮捕されたが、アクセルをかばってひとりだけ少年院送りになった親友だ。しかしマイキーが謎の追っ手に殺害されたことで、アクセルは犯人を追ってカリフォルニア州ロサンゼルスのセレブが集う超高級住宅地ビバリーヒルズに単身出向いていく……というのが物語の発端。『ビバリーヒルズ・コップ/アクセル・フォーリー』の出だしの流れも、この第1作を基本的に踏襲している。

アクセルのデトロイト印と言えば、『ビバリーヒルズ・コップ/アクセル・フォーリー』でもしっかり着用している地元のフットボール・チーム、『デトロイト・ライオンズ』のスタジアムジャンパーが有名である。しかしこのアイコニックなアウターを、実は第1作ではまだ着ていない。初登場は『ビバリーヒルズ・コップ2』。最初アルマーニのスーツに身を包み、真っ赤なフェラーリをかっ飛ばして景気良く登場するアクセルが、再びビバリーヒルズへと乗り込む段階でライオンズのスタジャンに着替えるのだ。アクセルの地元愛を象徴するご当地アイテムだが、ちなみにエディ・マーフィ本人はニューヨークのブルックリン出身である。


『ビバリーヒルズ・コップ2』(1987年)

エディ・マーフィというハリウッド映画史に重要なツメアトを刻んだ傑物のアフリカ系アメリカ人俳優も、初単独主演となる『ビバリーヒルズ・コップ』で決定的にその名を世界に轟かせることになった。1980年、19歳の時、人気バラエティ番組“サタデーナイトライブ”の最年少レギュラーに抜擢されたマーフィは、達者すぎるモノマネ芸や人種差別を題材にした風刺ネタなどで瞬く間に人気を博し、全米屈指の若手コメディアンにのし上がる。まもなくポリスアクション映画の傑作『48時間』(1982年/監督:ウォルター・ヒル)の準主役に起用。ニック・ノルティ演じる刑事ジャックと、ひょんなことから捜査協力者として組むことになり、48時間だけ仮釈放される囚人レジー役だ。いわゆるバディームービーの形式。白人と黒人のコンビを主人公にした刑事アクション映画には『夜の大捜査線』(1967年/監督:ノーマン・ジュイソン)というシリアスな先駆作があるが、本作のマーフィは口八丁手八丁のチャラい男。“サタデーナイトライブ”で世間を席巻していたこのお笑い芸人の快演は、武骨な刑事を真面目に演じる主演のニック・ノルティをすっかり食ってしまった。そして本作の成功を受け継ぎ、マーフィの芸風、特にマシンガントークを前面に押し出した『ビバリーヒルズ・コップ』へと繋がっていったのである。
『ビバリーヒルズ・コップ』が映画界に残したものとは?【後編】に続く
 

  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
photo by AFLO
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