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2024.07.13

ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~ Vol.28
『ビバリーヒルズ・コップ』が映画界に残したものとは?【後編】


『ビバリーヒルズ・コップ2』(1989年)

当時23歳のマーフィが主演を務めた『ビバリーヒルズ・コップ』第1作は、1984年の北米興収で年間トップの2億3千万ドル超を記録。1984年を舞台にした『AIR/エア』(2023年/監督:ベン・アフレック)のオープニングでは、同年を代表するヒットムービーとして興収年間第2位の『ゴーストバスターズ』(1984年/監督:アイヴァン・ライトマン)と共に紹介されている。ちなみに『AIR/エア』のOPではその年の“逆代表”として、シルヴェスター・スタローンがラジー賞の最低主演男優賞を獲得した『クラブ・ラインストーン/今夜は最高!』(1984年/監督:ボブ・クラーク)も登場するのだが、実はもともと『ビバリーヒルズ・コップ』はスタローン主演の企画として準備されていたものだった。しかし予算の都合やコンセプトのすれ違いなど、諸事情でスタローンは降板。ジェリー・ブラッカイマーたち製作陣は、なんと撮影の2週間前になって急遽マーフィに主演を依頼。脚本は短期間にリライトされ、そのおかげでマーフィ本人の芸風が映画に色濃く反映されるものになった。

時代の変わり目にはこういった“怪我の功名”的な大逆転が良く起こるもの。一方のスタローンはその時に自分が望んだ企画を『コブラ』(1986年/監督:ジョージ・P・コスマトス)として完成させる。そこに出演していた当時のスタローンの妻、ブリジット・ニールセンは『ビバリーヒルズ・コップ2』にも出演……と、なんやかんやマーフィとスタローンには妙な因縁があったり。また『ビバリーヒルズ・コップ』の名物キャラクターのひとりであるビバリーヒルズ警察の刑事ビリー・ローズウッド(ジャッジ・ラインホルド)は熱心なスタローン信者という設定で、『ビバリーヒルズ・コップ2』では自室に『コブラ』と『ランボー/怒りの脱出』(1985年/監督:ジョージ・P・コスマトス)のポスターを貼っている。『ビバリーヒルズ・コップ/アクセル・フォーリー』でビリーは私立探偵になっているのだが、事務所の壁にやはり『ランボー/怒りの脱出』のポスターを貼っているのでウケた。
 

  

 

『ビバリーヒルズ・コップ2』(1987年)

翻っていま『ビバリーヒルズ・コップ』の第1作を改めて観ると、どこか『48時間』を引きずっているのか割とハード&クールな作風であり、マーフィのテンションも絶妙に抑制されている。それが『ビバリーヒルズ・コップ2』になると、もう快進撃の勢いそのままにめっちゃ調子に乗っている……いや、ノリに乗っているマーフィの様子が全開で、終始アッパーなハイテンション。声も明らかに第1作よりでかい。監督は『トップガン』で大成功を収めたばかりのトニー・スコットが務めた。まるでカリフォルニアの青い空のように、80年代という時代の陽光を結晶させた、とにかく明るい本シリーズのイメージは『ビバリーヒルズ・コップ2』の印象が強いのかもしれない。先述したライオンズのスタジャンも加わり、アクセル・フォーリーという伝説的なポップアイコンの形は、第1作と第2作を合わせることで完成したのだと言える。

『ビバリーヒルズ・コップ2』も前作に匹敵する大ヒットとなり、1987年の世界興収で第3位を記録。日本の興収は14億2千万円で、第1作の10億2千万円を上回った。この画期的な成功がなければ、黒人あるいは非白人主演のポリスアクション・コメディ映画の後継、クリス・タッカー&ジャッキー・チェン主演の『ラッシュアワー』(1998年/監督:ブレット・ラトナー)も、ウィル・スミス&マーティン・ローレンス主演の『バッドボーイズ』(1995年/監督:マイケル・ベイ)――今年(2024年)シリーズ最新作『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(監督:アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー)が公開された――も当然生まれなかっただろう。メジャーな商業作品、ブロックバスター映画におけるブラック・ムービーとしての『ビバリーヒルズ・コップ』の功績の巨大さは計り知れないものだ。ちなみにマーフィは1990年、自身の会社も製作に参加する形で『48時間』のコメディ色を強めた続編『48時間PART2/帰って来たふたり』(監督:ウォルター・ヒル)を発表した。
 

  

 

『ビバリーヒルズ・コップ3』(1994年)

さて、皆さんお気づきかと思うが、本稿は『ビバリーヒルズ・コップ3』(1994年/監督:ジョン・ランディス)についてこれまでひと言も触れていない。というのも本作は、エディ・マーフィをはじめ主要な関係者がこぞって不満を表明しており、興収も批評も散々だったシリーズの公式認定的な黒歴史の一作なのだ。実際トホホな出来映えなのだが、ただし見どころもある。それはカメオ出演がやたら豪華なこと。序盤の葬儀のシーンで『アメイジング・グレイス』を熱唱している牧師は、なんとソウルシンガーのアル・グリーン! また遊園地ワンダーワールド(撮影に使用されたのはカリフォルニア州サンタクララのテーマパーク『カリフォルニアズ・グレート・アメリカ』)で観覧車の順番を待っているデート中の男性は、あのジョージ・ルーカス監督! さらにジョー・ダンテ監督、特撮や特殊効果の神と呼ばれる映画技術者レイ・ハリーハウゼン、俳優のデンゼル・ワシントンなども……。本作も「なかったこと」にはしないで、ヒマな時間にでもぜひご覧いただきたい。

『ビバリーヒルズ・コップ』
製作年/1984年 製作/ジェリー・ブラッカイマー 監督/マーティン・ブレスト 脚本/ダニエル・ペトリ・Jr. 出演/エディ・マーフィ、ジャッジ・ラインホルド、ジョン・アシュトン

●こちらの記事もオススメ!
『ビバリーヒルズ・コップ』が映画界に残したものとは?【前編】

 

  

 

 
文=森直人 text:Naoto Mori
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