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CULTURE カルチャー

2022.10.01


【ブラッド・ピット】光と影を放ち続ける表現者の軌跡(前編)

 

 
ブラッド・ピット 光と影を放ち続ける表現者の軌跡(前編)
『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)

今年であの伝説的な名作『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)の製作から丸30周年。つまり、多くの映画ファンがブラッド・ピットの美しさをスクリーンで目撃した瞬間から、実にそれだけの歳月が経過したことになる。どおりで私たちも歳を取るはずである。

あの映画のブラピは、若き日のロバート・レッドフォードを彷彿とさせるくらい美しかった。キラキラと輝く川面に向けて竿を投げるその姿はとてつもなく絵になった。

だが、彼の魅力はただ美しいだけでは言い表せない。私たちは当時から、このポールという役柄を通じて醸し出される、なんとも言えない儚さと脆さに気付いていた。その光と影を併せ持つ存在感こそが、我々を惹きつけた最大の理由かもしれない。 

 
 

 
ブラッド・ピット 光と影を放ち続ける表現者の軌跡(前編)
『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)

彫刻のような青年の成長と旅立ち
アメリカ中西部の小さな町で生まれたブラピは、青年時代からそのブロンドの髪、青い瞳、ちょっとシャイにはにかむような笑顔で、周囲から「彫刻のような美しさ」と言われ続けた。そんな彼がジャーナリズムと広告を学んだミズーリ大学を“あと2単位あれば卒業”というところで中退してしまう。それほどの不退転の覚悟で、ブラピは自分の可能性を試そうとLAへ向かったのだ。

彼にはこういった思い切りのよさがある。決して安全牌に乗らず、枠に収まろうともしない。まるでヒッチハイクにでも繰り出すみたいに、未知なるものに賭けてみようとする。そんな彼を周囲の人間たちは放ってなどおかない。知人からエージェントを紹介されるや、とんとん拍子で俳優の仕事が飛びこむようになる。
 

 
ブラッド・ピット 光と影を放ち続ける表現者の軌跡(前編)
『テルマ&ルイーズ』(1991年)

その後、様々なチョイ役を経験する中で、『テルマ&ルイーズ』(1991年)への出演が爆発的な注目を集めたのは周知の事実だ。この時、カウボーイ・ハット姿のブラピが登場するのはほんの15分足らず。脇役といえば脇役だ。しかしリドリー・スコット監督に「パーフェクトな配役!」とまで言わしめた存在感には、美しさやセクシーさの中に、やはり一言で片付けることのできない不思議な危うさが蠢いていた。

『テルマ&ルイーズ』と『リバーランズ』。この2作はブラピ初期の揺るぎない重要作と言っていい。だが、いま改めてキャリアを振り返ったとき、象徴的な一作と断言できるものがある。それは1988年にユーゴスラビアで撮影された幻の主演作『リック』(1988年)だ。
 

 

『リック』(1988年)

当時25歳のブラピは、日光を浴びると3日で死んでしまう不治の病に冒された青年を演じた。冒頭の彼には顔がない。すなわち、全身を真っ黒なライダースーツとヘルメットで覆い隠し、全く素顔がわからないのだ。その後、中盤になって初めてヘルメットを脱ぎ、真っ白な光に満ちたブラピの美少年たる素顔が、いよいよ世に解き放たれるーーーはずだった。
 

 
しかしそれから、ユーゴスラビアでは紛争が勃発し、撮影フィルムは長らく手付かずの状態に。つまりブラピ初主演の貴重な素顔は、まるでタイムカプセルのように封印され、誰の目にも触れることなくかの地で眠り続けたのである。その後、フィルムは編集され、作品が完成して人々がようやく『リック』を目にするのは1998年のこと。すっかり大スターと化した後だった。

光と影。黒と白。仮面と素顔。顔を持たないブラピは、ファーストシーンの水辺で「僕は生きたい!」と叫ぶ。ここからはじまるキャリアであらゆる登場人物の顔をまとい、無数の人生を生き抜くことになろうとは、彼自身、想像すらしていなかったに違いない。(中編に続く)
 

 

 
Information

●参考資料
『ハリウッド・ガイズ スーパーインタビューブック』 野中邦子訳(集英社/1998)
『ブラッド・ピット』エディターズ・オブ・US著、島田陽子訳 (ロッキング・オン/1998)
https://www.interviewmagazine.com/
https://www.bbc.com/

文=牛津厚信 text:Atsunobu Ushizu
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