スクールカーストと登場人物の個性をファッションで表現!
1980年代に公開された青春映画に頻繁に登場した若手俳優グループは”ブラット・パック”と名付けられ、一躍時代の寵児に。なかでも、『ブレックファスト・クラブ』はアメリカの高校に根強く残る”スクールカースト”と、服が各キャラクターの個性と立ち位置を分かりやすく表現していると言う意味で、”ブラット・パック”の代表作として、また、ファッションムービーとして跨いでは通れない1本だ。
物語はいたってシンプル。何ら接点のない5人の高校生たちが懲罰登校を命じられ、休日の図書室に集まってくる。そこで、彼らは鬱屈した気持ちを思いっきりぶつけ合い、『自分とは何か』と言う課題に取り組むことになる。注目は各グループに属する5人が物語を通して着るセットアップだ。それはこんな感じ。
秀才(またはギーグ)のブライアン(アンソニー・マイケル・ホール)は、無難の極致みたいな無地のスウェットシャツにチノ、退屈なトレーナー、白いチャンキーソックスで。高校の花形、体育会系のアンドリュー(“ブラット・パック”の元締め的なエミリオ・エステベス)はマッスルベスト、ジーンズ、トレーナーで暴れまくる。アンドリューが音楽に乗ってブルーのパーカーを脱ぎ捨て、白いスウェットも脱いで、最後はタンクとジーンズになってダンスするシーンは、1980年代から今も続くアスリートファッションショーみたいで上がる。そして、キャンパスの反逆者、ベンダー(ジャド・ネルソン)は、バイカージャケット、チェックのシャツ、バイカーブーツ、イヤリングという、このジャンルの伝説的アイコンであるマーロン・ブランドが80年代に蘇ったかのようなルックでいきがっている。
さらに、学園のプリンセス、クレア(モリー・リングウォルド)は、スクラブタイプのブラウス、ミディスカート、ニーハイブーツで、いわゆる不思議ちゃんのアリソン(アリー・シーディ)は、全身黒尽くめの服にボサボサ頭、太いアイラインで自分をアピールしている。
劇中の白眉は、先頭にタンク&ジーンズのアンドリュー、真ん中にスウェット&チノのブライアン、後ろにチェックシャツ&カーゴのベンダーがサンドウィッチ・スタイルになって歩行ダンスするシーン。しかし、彼らはこの懲罰登校を終えるとカーストに立ち戻り、恐らく2度と交わることはないだろう。映画が描くそんな一瞬の輝きと儚い青春の一コマが、『ブレックファスト・クラブ』をそのファッションと共にタイムレスな1作にしている。
『ブレックファスト・クラブ』
製作年/1985年 製作総指揮・監督・脚本/ジョン・ヒューズ 出演/エミリオ・エステベス、ジャド・ネルソン、モリー・リングウォルド、アリー・シーディ、ポール・グリーソン、アンソニー・マイケル・ホール
photo by AFLO