ラストに驚きの展開が待っている作品を5本セレクト。【ネタバレ】解説付きなので、ラストを知りたくない人はご注意を。なお、この5本以外にもどんでん返し系作品を紹介しているので、気になる人は【まとめ】まさかのエンディングに驚愕! どんでん返し映画40本!をチェックしてみて!
人種問題をテーマに据えた前代未聞ホラー!
『ゲット・アウト』
製作年/2017年 監督/ジョーダン・ピール 出演/ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ
コメディアン出身のジョーダン・ピールがその才覚をホラー領域へ逆噴射させた、なんとも奇妙で、社会派な初監督作。ブルックリン在住のアフリカ系のクリスは、白人の恋人ローズの実家へ初めて挨拶に向かう。そこで出会ったアーミテージ家の面々は、リベラルを自称しつつ、屋敷内で見かける使用人はなぜかアフリカ系ばかり。その上、ガーデンパーティに集う地元の名士たちの言動もどこか変だ。この違和感にクリスは戸惑い、今すぐここを逃げ出したい思いに駆られるが……。
<ここからがネタバレ>
見るからに善良そうな彼らは、拉致したアフリカ系の若者のカラダに自らの脳を移植することで若さを取り戻そうとする狂気的な人々だった。クリスは立ちはだかる恋人やその家族を倒し、なんとか屋敷から逃げ延びる・・・という筋書きがありつつ、この物語の根幹にはアメリカ社会ならではの人種や差別の問題が沁み渡っているのも重要なポイント。誰もが経験のあるコミュニケーション上の居心地の悪さを巧妙に活かした、映画史的に見ても極めてリアルで稀有なホラー作品なのだ。
写真は主演のヴィディヤ・バラン
巧みな伏線と衝撃のラストに思わず唸る!
『女神は二度微笑む』
製作年/2012年 監督/スジョイ・ゴーシュ、出演/ヴィディヤ・バラン、パランブラタ・チャテルジー
滞在先で連絡を絶った夫を探すため、妊娠中の大きなお腹を抱えたヴィディヤは、ロンドンからインド西部の大都市コルカタへやってくる。地元警察の助けを借りながら行方を追ううちに、夫はミラン・ダムジという人物と瓜二つであることが判明。2年前の地下鉄毒ガステロの容疑者でもあるらしいミランとは一体何者なのか。関係者が次々と他殺体となって発見される中、ヴィディヤは恐怖に屈することなく真相に手を伸ばすのだが・・・。
<ここからがネタバレ>
ついにヴィディヤは謎の人物ミランと対峙する。しかし、銃口を向けられたそのとき、驚愕の展開が。彼女はこれまで妊娠を装っていたお腹まわりの装着物をサッと剥ぎ取り、俊敏な動きで相手を瞬殺した後、人混みの中へと消えていったのだ。実は、ヴィディヤは毒ガステロで夫を亡くし、心痛のためお腹の子供も喪っており、現地を訪れたのも最初からミランへの復讐が目的だった。ラストになって初めてヴィデヤのあらゆる言動が周到な伏線にだったと、観る側が気づく。すぐさまもう一度、すべてを最初から見直したくなること必至だ。
無限ループを駆使して爆破テロを防げ!
『ミッション: 8ミニッツ』
製作年/2011年 監督/ダンカン・ジョーンズ 出演/ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン
通勤客で混み合うシカゴ行きの列車内で爆破テロが発生。さらなる犯行を防ぐべく、スティーヴィンス大尉は量子力学によってバーチャル復元された“犯行当時の8分間”に飛び込み、事件解明の手がかりを探し求める。爆弾の場所を見つけ、怪しい人物を追いかけるも、8分経つとタイムオーバー。また最初からミッションをやり直し。この無限ループを繰り返しながら、大尉は徐々に真相へと近づいていくのだが……。
<ここからがネタバレ>
スティーヴンス大尉の活躍によって、現実世界のテロ事件は無事解決。しかし肝心なのは最新テクノロジーを駆使したプログラムそのもので、これに繋がれた大尉は実は、戦地での任務中に重傷を負い、生命維持装置に繋がれている状態だった。最後にもう一度だけ“8分間”へ向かうことを望んだ彼は、爆破を食い止めた末、これが単なるバーチャルな復元ではなく、無限の広がりを持った世界であることを知る。すなわち、いま脚光を浴びる“マルチバース”的な発想をいち早く取り入れた画期的なSFなのだ。
複雑な筋書きを明快に描く映像感覚が見もの!
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』
製作年/1998年 監督 監督/ガイ・リッチー 出演/ニック・モラン、ジェイソン・ステイサム
マシュー・ヴォーンが製作し、兄貴分のガイ・リッチーが監督、脚本を務めた伝説の群像劇。ある日、一攫千金を夢見る4人組は、裏社会の元締めの罠にハマってギャンブルで大敗を喫する。抱えこんだこの借金、一体どうやって返せばいいのか!? そんな矢先、とあるギャングが大麻の取引所を強襲しようとする動きを察知した4人は、ギャングが奪った現金を後からごっそりいただいて、借金返済に充てようとするが・・・。
<ここからがネタバレ!>
4人は崖っぷちのところで”悪運の強さ”を発揮。追ってきたギャングは他のギャングと相討ちとなり、彼らに借金返済を迫っていた元締めもなんやかんやで憤死を遂げる。結局、自由の身になった4人組の元には2挺のヴィンテージ銃だけが残り、その真の価値を知らぬまま、銃を投げ捨てようとするところで物語は暗転---。とまあ、言葉だけだと何一つ伝わらない複雑すぎる相関図を、ガイ・リッチーならではの映像センスでまるで因数分解を解くようにスッキリ描いた快作である。
重厚感を増した奇才の語り口を堪能!
『ジェントルメン』
製作年/2019年 監督/ガイ・リッチー 出演/マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム
奇才ガイ・リッチーが、自身の原点ともいえる『ロック、ストック〜』的な群像劇へ回帰したクライム・ムービー。イギリス随一の大麻密売ルートを築いたピアソン(マシュー・マコノヒー)は、将来性のある人物にビジネスを売却したいと考えていた。そんな矢先、なぜか経営を揺るがすトラブルが続発。これはきっと誰かが裏で糸を引いてるに違いない。次から次へ登場するz曲者揃いの狂騒劇を征し、最後に笑うのは一体誰なのか!?
<ここからがネタバレ>
すべての元凶は、ピアソンがビジネスの売却先に決めていたアメリカ人企業家だった。トラブルによって買値を下げようと悪知恵を働かせる彼に対し、ピアソンは先手を打って、王者の貫禄でこの混乱を収拾。さらにゴタゴタの中で息子を失ったロシア系マフィアが復讐の手を伸ばすも、ピアソンに借りのある格闘技&ヒップホップ集団”トドラーズ”がこれを撃退して、事なきを得る---。かくも複雑な筋書きを、キャラの面白さと映像の力で活き活きと成立させる手腕は相変わらず。その上、語りの重厚感すら加わったガイ・リッチー節の成熟ぶりが光る。
photo by AFLO