映画『F1®/エフワン』の公開を目前に控え、ブラッド・ピットが急遽来日。東京・丸の内ピカデリーで行われた舞台挨拶に登壇した。ステージに現れた彼に、会場のテンションは一気にトップギアへと突入した。
『オーシャンズ』シリーズを彷彿とさせる洗練されたヘアスタイルに、最近お気に入りのワントーンでまとめたスタイリッシュな装いでブラピが登場すると、会場からは割れんばかりの大歓声。最近お気に入りのワントーンのセットアップをまとい、ノータイでほどよい抜け感を演出しながらも、大人の色気を感じさせる仕立ての良さが印象的だ。
「(映画では)新幹線より早いクルマに乗ったんだ。東京ならどんな理由でも行くよ」と、笑顔で話すブラピ。『ブレット・トレイン』から約3年という待望の来日に、日本への特別な感情をのぞかせた。
本作について聞かれると、彼の目は一気に真剣な色を帯びる。「とても誇りに思う。今までこんな映画はなかったと思う。実際のF1®レース開催中にその中で撮影したし、撮影用のカメラも全部開発したんだよ。それをみんなに楽しんでもらえるのは嬉しい」
先日のUKプレミアでは、旧友トム・クルーズも登場。「彼とは90年代に一緒にゴーカートでレースをした仲なんだ。監督もプロデューサーもトムを知っているから家族のようだし、来てくれて本当に嬉しかったよ」と、長年の友情をサラリと明かす姿もまた、彼らしい。
印象的なレースシーンを尋ねられると、「僕とイドリスは2年ぐらいかけて6000マイルくらい走った。いろいろなところを走ったけど、ひとつだけ悔いが残っているのは、鈴鹿のサーキットだけは走っていないんだ。ほかのプロドライバーに聞くと、みんな一番のお気に入りは鈴鹿だって答えるし、技術的なことも含めて素晴らしいトラックだっていうんだよ」とポツリ。そして、「誰か関係者、いない?」とジョークを飛ばして、場の空気を和ませた。
演じたキャラクター“ソニー”については、「ストーリーが本当に良い。ソニーは負け犬なんだ。90年代にF1®でチャンスがあったけど挫折してしまう。でもまたチャンスが巡って来る。こういうストーリーは共感してもらえると思う」と、作品への強い思いを口にする。
さらに、F1®と映画製作に共通する“チームワーク”の話題になると、「レースには500人以上のスタッフが関わる。映画も同じで、ひとつのシーンに400人、500人が動く。どちらも真のチームスポーツだよ」と語った。撮影でいちばん楽しかったことについては、「もちろんドライビングだよ。とにかく運転が楽しかった。信じられないくらい。350キロくらいで走るから、ブレーキングもコーナリングもすべて最高だった」と、その興奮を隠しきれない様子だった。
過酷なレースシーンに向けたトレーニングについても、「とてもGがかかる。実際のレーサーほどではなかったけど、首やカラダを鍛えていないと。みんなアスリートみたいなんだ」と、心からのリスペクトをにじませた。
本作のキャッチコピー「昨日までの、自分を超えろ」にも通じる経験を聞かれると、「ドライビングを毎回良くしたいと思っていた。終了と言われるのが嫌で高めたいと思う気持ちがあった。最初の頃は、僕もダムソンも何秒ずつという感覚でタイムを縮めていったけど、最終的にはコンマ何秒というレベルで縮めていったよ」と、常に高みを目指すプロ意識を垣間見せた。
最後に、空や海への挑戦は?という質問に対しては、「それはトム(・クルーズ)に任せるよ。彼には誰も敵わない。僕は“陸”派だからね」と、ユーモアで締めくくった。
そしてフィナーレでは、法被姿で三本締め。伝統と遊び心が交差する、まさに“粋”な時間。F1®という挑戦を経て、またひとつ進化したブラッド・ピットが、東京の夜を彩った。
映画『F1®/エフワン』
6月27日(金)より全国公開
配給/ワーナー・ブラザース映画