ニューヨーク ×『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
旅行の魅力といえば、はじめての場所への期待感や、以前に満喫したスポットを再訪する喜びなどが挙げられる。もうひとつ“好きな人を、好きな場所に案内したい”というのも旅行の楽しみではないだろうか。『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』は、主人公が大好きなNYを恋人に満喫させようとする物語。予想外の展開も用意されているが、旅行の達人と認めてもらえそうな主人公の計画には参考になるポイントがいっぱい!
- SERIES:
- 映画を巡る旅に出よう! vol.26
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2019年/アメリカ映画)
ニューヨーク(ニューヨーク州/アメリカ)
● 原題:A Rainy Day in New York
● 監督・脚本:ウディ・アレン
● 出演:ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメス、ジュード・ロウ
Story
ペンシルベニア州の大学に通うギャツビーは、同じ大学の恋人アシュレーが、週末に映画監督にインタビューするためにNYへ行くと知る。ポーカーで大金を得たギャツビーは、自分が詳しいNYでのゴージャスなデートを計画。しかし予期せぬハプニングの連続で、ギャツビーとアシュレーは、NYでそれぞれの時間を過ごすことになる。
衣装と美術にも注目
金持ちボンボンのギャツビーが着こなす、ラルフローレンのヘリンボーンのジャケットや、アシュレーのかわいさが際立つカシミヤセーターなど、各人物の個性を伝える、衣装へのさりげないこだわりが本作のポイント。ホテルのインテリアでは、NYらしいクラシカルなデザインが意識され、美術でもハイセンスな一作になっている。
登場人物右:生粋のニューヨーカー
ギャツビー(ティモシー・シャラメ)
NYで裕福な両親に育てられるが、勉強に挫折してペンシルベニアの小さな大学へ通う。恋人のアシュレーのNY行きに同行するも、一人で街をさまようことに。趣味はピアノとギャンブル。
左:ギャツビーの恋人
アシュレー(エル・ファニング)
銀行経営者の娘で、ジャーナリストを目指している。NYで有名な映画監督にインタビューするチャンスを得たのをきっかけに、脚本家や人気俳優と出会い、恋人ギャツビーを放ったらかしに。
映画を観た人に、そこに行ってみたいと思わせるには、舞台となる街を監督がいかに愛しているかどうかが重要となる。その意味で、NYで撮影されたウディ・アレンの作品には、監督の肉体にしみこんだNY愛が充満して、旅への欲求をかき立てる効果が絶大。
NYのブロンクスで生まれ、ブルックリンで育ち、映画監督になった後もしばらくはNY中心のロケで作品を完成させてきたアレン。初期の『マンハッタン』や『ラジオ・デイズ』などはNYの観光ムービーとして、いま改めて観ても新鮮だ。そんなアレンの最新の作品『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』も、タイトルから予感させるようにNYの街自体が前面にフィーチャーされている。
自他ともに認める“NY通”の大学生が、恋人にNYを案内しようとする物語。メトロポリタン美術館やセントラルパークといったツーリスト必訪の場所から、知る人ぞ知る最高級ホテル、ニューヨーカーに昔から愛されている店など、貴重なスポットが次々と登場する。
セリフでもMOMA(NY近代美術館)やエンパイア・ステート・ビルが出てくるので、現地の人ならではの蘊蓄も含め、映画全体がNYのガイドブックになっているのだ。マンハッタン以外でも、クイーンズの撮影スタジオが重要なシーンで使われていたりして、ウディ・アレンらしく映画業界の裏ネタでも楽しませる。
この『レイニーデイ~』は、主演がティモシー・シャラメで、相手役がエル・ファニング。今最高に輝いている若手スターがカップルを演じているので、彼らが映画内で訪れる場所も、さらに魅力的に感じられる。すでに何度もNYへ行ったことがある人も、新たな感動に包まれるはず。主人公たちのように週末、あるいは1日でNYを巡る計画を立てるうえで、最高のサンプルになる映画!
Place 01(美術館)
メトロポリタン美術館アシュレーにすっぽかされたギャツビーが、偶然再会した元カノの妹チャンと訪れる。古代エジプトやヨーロッパの絵画など多くの展示を眺める2人の姿から、NY最大の美術館であると実感。ニューヨーカーには“メット”の愛称で親しまれる、マンハッタン観光の必須スポットで、セレブやスターが集結するファッションイベント“メットガラ”も有名。
●The Metropolitan Museum of Art
住所:1000 5th Ave, New York, NY 10028
Place 02(ホテル)
ザ・カーライル・ア・ローズウッド・ホテルNYにはスター御用達の隠れ家が多いが、この5つ星ホテルこそ代表格。スイートは1泊200万円! ホテルの内幕を描いたドキュメンタリー映画『カーライル ニューヨークが愛したホテル』もあるほど。ギャツビーはここでの宿泊も考えたが、実家に近いので別のホテルを予約。スタッフとも顔馴染みの彼は、カーライルのバーで一人寂しくピアノを弾く。
●The Carlyle, A Rosewood Hotel
住所:35 E 76th St, New York, NY 10021
ウディ・アレンはカーライルが大好きで、2年間も滞在した時期がある。かつて彼がホテル内のカフェで週に1度、クラリネットを演奏していた逸話は有名だ。『ハンナとその姉妹』のように過去の監督作でもアレンはカーライルで撮影を行った。
Place 03(レストラン)
ウォーカーズ自作に嫌気がさして行方をくらました映画監督を捜すため、アシュレーと脚本家が立ち寄ったのが、このレストラン&バー。ロウワー・マンハッタンの西側、トライベッカに位置するが、創業はなんと1880年。ニューヨーカーに愛され続けてきた超老舗であり、急速に再開発が進んだ地区で、そのクラシカルな外観は逆に目を引く(映画でも確認可能)。ビールやワイン、サンドイッチやバーガーなどを、ブランチからディナーまで好きな時間に常連客と一緒に楽しみたい。
●Walker’s
住所:16 N Moore St, New York, NY 10013
Place 04(ホテル)
ザ・バワリーホテルイーストビレッジ地区にあり、赤レンガの外観や、暖炉とゆったりとしたソファでくつろげるロビーでクラシカルな印象だが、実は2007年に誕生した新しいホテル。そのハイセンスなデザインと、ダウンタウンのナイトライフには最高のロケーションで、アーティストやセレブにも大人気となった。映画の中では、アシュレーが監督に会う“ウースター”という架空のホテルでここが使われた。撮影のために作られたロビーも、バワリーの調度品が配置され、パーフェクトな雰囲気に!
●The Bowery Hotel
住所:335 Bowery, New York, NY 10003
雑誌『Safari』5月号 P212~213掲載
“映画”の記事をもっと読みたい人はコチラ!