ポトレロ・ヒル ×『スウィート・ノベンバー』
旅の行き先を決めるとき、基本的にはどこかの都市が目標になる。そこから行きたい場所の計画が広がるからだ。しかしたまには、特定地域をピンポイントにする旅も、ちょっとお洒落かもしれない。そんな気分にさせてくれる映画が『スウィート・ノベンバー』。サンフランシスコのポトレロ・ヒルをメインに撮影された作品で、物語とロケ地のあまりに美しいケミストリーに、誰もが訪れてみたいと感じるはず。
『スウィート・ノベンバー』(2001年/アメリカ映画)
ポトレロ・ヒル(カリフォルニア州/アメリカ)
● 原題:Sweet November
● 監督:パット・オコナー
● 出演:キアヌ・リーヴス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・アイザックス、グレッグ・ジャーマン
Story
昼夜を問わず仕事に明け暮れる孤独な広告マンのネルソンは、自動車免許更新で行った試験場で、サラという女性と出会う。サラから唐突に“11月の1カ月間、恋人になって仕事もせずに一緒に住んでほしい”と頼まれ、最初は相手にしないネルソンだが、サラが気になり、恋人になることを決意。彼らは本気で惹かれ合うが……。
なぜひと月だけの恋?
いくら自分の美しさに自信があるとはいえ、サラの申し出は身勝手。しかも1カ月間、相手を完全に拘束したいらしい。そんなに男性を自分の思うままに操りたい? 常に新しい恋を求めるのか? しかしその理由には、ある悲しい事情が。真実を知ったネルソンは本気で彼女を愛するように。
登場人物
右:エリート広告マン
ネルソン(キアヌ・リーヴス)
広告代理店のエリート社員。素性を知らないサラから1カ月間の恋人契約を申し出られる。最初は勝手な依頼に怒るが、仕事で失敗して会社をクビになり、サラを思い出して恋人同士になる。
左:偶然出会った謎の美女
サラ(シャーリーズ・セロン)
免許の試験場で偶然出会ったネルソンに、1カ月間だけ自分の恋人になってほしいと頼む、謎めいた美女。自分は問題を抱えた男性を救う力があると、とまどうネルソンを説得する。
たとえばニューヨークならソーホーやブルックリン、タイムズスクエア、ハーレム。ロサンゼルスならハリウッド、ビバリーヒルズ、サンタモニカのように地区の名前が有名だが、サンフランシスコの場合は? 現地に詳しくないと、すぐには名前が出てこないかもしれない。映画『スウィート・ノベンバー』の主な舞台となるのがポトレロ・ヒルという地区。その美しい街並みから、アルフレッド・ヒッチコックの名作『めまい』以来、サンフランシスコの映画では頻繁にロケ地として使われている。
最も賑わうダウンタウンの南東に位置し、小高い丘からサンフランシスコの高層ビル群や海まで望むポトレロ・ヒル。1990年代までは労働者階級が多く暮らしていたが、近年はお金持ちも好んで移住し、市民や観光客にとって年々人気が高くなっているエリアだ。なんといっても魅力的なのは、ビクトリア調の建築による邸宅群。つまりイギリス風。ヨーロッパに来たかと錯覚してしまううえに、外壁の色が超カラフルだったりして、歩いているだけで心がときめく。それがポトレロ・ヒルの魅力なのである。LGBTQに寛容な地区なので、公園などに流れる自由な空気も味わってほしい。
このポトレロ・ヒルを舞台にキアヌ・リーヴス、シャーリーズ・セロンという美男美女が1カ月限定の切ないラブストーリーを演じるわけだからロマンチックこのうえない! 最近はアクション映画への出演も多いシャーリーズだが、今作出演時は26歳。完璧な美しさで観る者の目を釘づけにする。これだけ役と俳優、バックの街並みがぴったりの映画も珍しい。実際に日本から『スウィート・ノベンバー』のロケ地巡りへ行っているファンも多い。大きな都市の小さな地区。そんな条件で旅行先を選ぶなら、ポトレロ・ヒルは最適な場所と断言したい。
Place 01(本屋)
Christopher’s Books
サラが暮らすアパートの1階にあるのが、1991年創業のこの本屋。大手チェーンではない街の本屋が年々減少しているなか、地元の住民に愛されて経営が続いている。映画の撮影では店の前が使われただけで、内部は出てこないが、キアヌは撮影の合間に何度も店内に入り、多くの本を購入したという。彼がなにを買ったのか店主に聞いてみては?
●Christopher’s Books
住所:1400 18th St, San Francisco, CA 94107
Place 02(カフェ)
Farley’s
ネルソンとサラが食事をしていると、広告代理店のネルソンの同僚がやって来て、おたがいの恋人を紹介し合う。このカフェもサラの家のロケ地から目と鼻の先だ。各テーブルの横に置いてある小物がいちいちかわいいので長居する客が多数。この店のコーヒーは、サンフランシスコ内に別の店舗もあるほど有名なので、コーヒー豆が旅のお土産にオススメ!
●Farley’s
住所:1315 18th St, San Francisco, CA 94107
シャーリーズとキアヌが主人公2人を演じるが、彼らと同じくらい記憶にやきつくポトレロ・ヒルの街並み。カフェや公園など日常の風景も、どこか他の都市や地区とは違う独自の魅力を放っている!
Place 03(バー)
Blooms Saloon
ポトレロ・ヒルの名物バー。近隣にはいくつか雰囲気のいいバーもあるが、この店は基本的にシンプルにお酒を楽しみたい客で賑わっている。ビリヤード台もあり、アメリカのクラシックなバーという印象だ。ガラス格子の外観もおしゃれな雰囲気。映画の中に登場する、サラとネルソンのテラスガーデンでのロマンチックなディナーは、このカフェの屋上部分で撮影された(設定はサラの自宅のテラス)。屋上から望むサンフランシスコの風景も絶品だが、残念ながらここは一見の客は立ち入れないよう。
●Blooms Saloon
住所:1318 18th St, San Francisco, CA 94107
Place 04(公園)
ミッション・ドロレス・パーク
ネルソンとサラが海岸で犬を散歩させた後、やって来るのがこの公園。芝生の向こうに、フィナンシャル・ディストリクトの高層ビルなど街全体が見渡せる。サンフランシスコ市民が“屋外で最も心地いい”と話す隠れた名所。映画のラストでは、陸橋とその下を走る路面電車が出てくるが、そのシーンもここで撮影。公園の脇に路面電車の停留所もあるのでアクセスもいい。『ダーティハリー』などのロケ地となり、近所の教会では『天使にラブ・ソングを…』も撮影された。
●Mission Dolores Park
住所:Dolores St &, 19th St, San Francisco, CA 94114
雑誌『Safari』12月号 P244~245掲載
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