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CULTURE カルチャー

2020.07.26


シアトル ×『シングルス』

旅で訪れた街では、その場所の歴史にも思いを馳せる。でも歴史という堅苦しい単語には、ちょっと拒否反応も起こってしまう。そんな人も“この街は、あのバンド、あの音楽が生まれたところ”なんて情報があればがぜん興味が湧くのでは? 今回のシアトルはニルヴァーナやパール・ジャムで知られるグランジロックの誕生の地。同時代のこの街を舞台にした『シングルス』とともに、街と音楽、ファッションの関係に思いを巡らせよう!

独身主義の男女が本当の愛を求めて彷徨う
『シングルス』(1992年/アメリカ映画)

グランジを生んだ音楽の聖地!
シアトル( ワシントン州/アメリカ)

 

 
●原題:Singles
●製作・監督・脚本:キャメロン・クロウ
●出演:ブリジット・フォンダ、キーラ・セジウィック、キャンベル・スコット、マット・ディロン

Story
失恋したばかりのリンダは、スーパートレインの設計を夢みるスティーヴと出会い、交際がスタート。彼が暮らすアパートでは、ミュージシャンのクリフ、彼とつき合うウェイトレスのジャネット、恋人募集中のデビー、シングルライフに満足するデヴィッドらが、にぎやかな日常を送っていた。それぞれの複雑な恋愛は思わぬ方向へ発展する。

グランジ全盛期のシアトル
『シングルス』の完成は1992年。その前年に、シアトル出身のニルヴァーナが「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」を全米で大ヒットさせ、グランジブームが本格化した。シアトル発信の一大ムーブメントと映画の背景がぴたりと一致。ファッションも含めて時代の感覚を追体験できる。

登場人物
失恋したばかりで男性不信
リンダ(キーラ・セジウィック)
理想の相手と思った男性に嘘をつかれて失恋。落ちこんでいたときにグランジのライブで出会ったスティーヴに、これまでにない安らぎを感じる。

リンダのカレシ
スティーヴ(キャンベル・スコット)

純情なウェイトレス
ジャネット(ブリジット・フォンダ)
スティーヴと同じアパートに暮らすウェイトレス。恋人のクリフとの関係がぎくしゃくし、思い切って胸を大きくする手術を受けようとする。

遊び人のミュージシャン
クリフ (マット・ディロン)

世界各地に、ご当地ゆかりのミュージックがある。その場所に行って本場の音を聴くのも旅行の楽しみ。しかし急速に進むグローバル化に伴い、もはや音楽のルーツの地なんて、意味がなくなってきた感もある。アメリカだったら、西海岸はサーフミュージック、NYなら本格派のジャズ、ニューオーリンズはデキシーランドなどとイメージが湧く程度。その中でも、知られざる音楽の聖地がシアトルだ。

1990年代はじめに、世界的流行を作ったグランジロック。その発祥の地がシアトルだ。有名なのがニルヴァーナで、出身こそ近郊のアバディーンだが、シアトルの独立レーベルからデビューして大ブレイク。さらにシアトル出身のパール・ジャムやサウンドガーデンも加わり、グランジブームが本格化する。グランジは、それまでのハードロックよりもさらに荒々しい演奏や、心の内面をえぐる歌詞が特徴的。世界中の若者の心をとらえ、音楽に合わせたように、着古したり、破れたりした服を重ね着するスタイルは、グランジファッションとして、こちらも大流行した。

このグランジブームの中で生まれた映画が『シングルス』。冒頭からシアトルの風景が次々と画面に現れ、主人公の1人はミュージシャンで、恋のはじまりもライブだったりする。監督のキャメロン・クロウは音楽系の記者の経験もあり、『あの頃、ペニー・レインと』などで知られるので、音楽とドラマの相性がばっちりの1作だ。主要人物のクリフらミュージシャンたちの着こなしは、まさに当時のグランジファッション。30年近く前なのに古クサく感じられないのは不思議! グランジのファンにとってシアトルは“聖地巡礼”の場所だろう。そうではない人も、この『シングルス』を観れば、シアトルを訪れ、世界的流行を作った街の空気を存分に味わいたくなるはずだ。 

 

Place01 J&M Cafe
1889年創業の老舗カフェで、ウォーターフロントから近いので、観光で行ったらマストのスポット。生バンドの演奏もあるし、人気の店のわりにリーズナブルな価格のバーガーやピザを気軽に楽しめる。映画では、このカフェの外で、出会ったばかりのリンダとスティーヴが心を通わせるシーンを撮影。背景のニューススタンドは映画のために作られた。

●J&M Cafe
住所:201 1st Ave S, Seattle, WA 98104

Place02 Coryell Court
独身の“シングルス”たちが暮らす、お洒落な外観のアパートメントは、撮影に使われて有名になった。今でもこの入り口の階段はそのまま。でも外からクリフの部屋だと説明されるのはランドリールームだし、リンダとスティーヴが話す中庭の池も今はない。住宅地に位置するこのアパートは実際に暮らしている人がいるので、訪れる際は気をつけよう。

●Coryell Court
住所:1820 E Thomas St, Seattle, WA 98112

当時の空気感まで伝わる演出
Tシャツのデザインなど、ファッションでだけで時代の空気が再現されているが、登場人物の会話からは当時の恋愛の感覚がビビッドに伝わってくる。アパートでのクリフらの関係を、現在の“シェアハウス”と比べても面白いかも。

Place03 オクシデンタル・スクエア
観光客向けというより、市民が集まる地元の公園。ネイティブアメリカンの伝説が描かれたトーテムポールや、ヴィクトリア調のバーゴラ(日陰棚)が有名だ。昼間は近所の住民がチェスをしているたりするので、ブラリと散歩するには最適。映画ではスティーヴがリンダに、ある重要な告白をするシーンが撮影された。ここでは、上にあるクリフとジャネットのポスター用の写真も撮影しているので、彼らのようにベンチに座って『シングルス』の気分を味わおう。

●Occidental Square
住所:117 S Washington St, Seattle, WA 98104

Place04 The Virginia Inn
リンダとスティーヴが初めてのデートで立ち寄ったのは、観光地としても有名なパイクプレイス・マーケットの近くにあるカジュアルなレストラン。店名に“Inn(ホテル)”とあるが宿泊施設ではない。店の外は坂道になっていて、ピュージェット湾を見下ろせる好立地。リンダたちのテーブルは水のみだが、フィッシュ&チップスなどメニューは豊富。彼らが話している間、外は雨。しかし店を出ると雨は止み、シアトルの変わりやすい天気が、このシーンからもよくわかる。

●The Virginia Inn
住所:1937 1st Ave, Seattle, WA 98101

ライブシーンにも注目!
物語のキーポイントで登場するライブは超本格的……と思ったら、なんとパール・ジャムのエディ・ヴェダー、ストーン・ゴッサードらが特別出演! さらにサウンドガーデンのクリス・コーネルが意外なシーンで登場していたりと、グランジのバンドが撮影に全面協力した。 

 


 
Information

雑誌『Safari』8月号 P164~165掲載

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