『へレディタリー/継承』『キックス』
これは本当に怖すぎる!最恐のホラー映画『へレディタリー/継承』と、エアジョーダン1を奪い返すために15歳の少年がとった驚きの方法とは?『キックス』をピックアップ!
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物語で選ぶ編①
『へレディタリー/継承』
ここがムネアツなポイント!
・“怖さ”だけなら近年のホラーものを凌ぐ作品!
・祖母の死から一家に異変が起こる
・ミニチュアを効果的に使い、怖さを演出
・なにげない“音”が背筋を凍らせる!
・クライマックスの異様なテンションには覚悟して!
ここ数年、サプライズのヒット作を生んでいるジャンルがある。それは、ホラー映画。『ドント・ブリーズ』や『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』、アカデミー賞にも絡んだ『ゲット・アウト』。そして今年も、音を立てると襲われる『クワイエット・プレイス』など、映画ファンに大歓迎される作品が途切れなく続いた。その流れに乗りそうな新作が、この『へレディタリー/継承』だ。シンプルに、“怖さ”という点でハイレベルなのである。
祖母が亡くなったのをきっかけに、残された一家に怪しい事件が続く。不思議な光、誰かの囁き声、暗闇に何者かがたたずむ気配……。これは祖母の霊なのか? 一家の娘、チャーリーはどうやら何かを察知しているようだ。高校生の息子ピーターが、妹のチャーリーを連れて友人宅のパーティへ行き、そこから事態はとんでもない方向になだれこみ、一家は恐怖のドン底に突き落とされることに!
まず冒頭のシーンからして、観る者の心をざわめかせる。“ドールハウス”のようなミニチュアの家の模型にカメラが寄っていくと、その模型の中の人形が動き出し、主人公一家の住む家へと変化しているのだ。一家の母親がミニチュアの家を作るアーティストという設定が、その後もストーリーに生かされ、怪しい空気を倍増させる効果を果たす。
しかしながら、そんな演出は序の口。この『ヘレディタリー/継承』には“じわじわ系”“突発的ショック”“笑っちゃうほどの過剰な演出”など、ホラー映画に求めるさまざまな要素が、ストーリーを破綻させることなくハメこまれている。徐々に精神を冒されていく劇中人物の状況を、観る者にも体感させていくのだ。いちばん要注意なのは“音”で、日常生活で聞き慣れたある音が、背筋を凍らせる。そのタイミングは絶妙というしかない!
“へレディタリー”という、このタイトル。わかりづらいが、これは“遺伝的な”“親譲りの”という意味。ホラー映画といえば、過去には『サスペリア』や『オーメン』、最近だと『イット・フォローズ』など、意味不明なタイトルのほうが話題になる傾向がある。本作もそんなホラーの伝統を受け継いで、恐怖を拡散させるに違いない。そして“遺伝的な”の意味が明らかになるクライマックスは、作品の空気感が異様なテンションとなり、ホラー映画ファンですら未体験の恐怖領域へと導かれる!
『へレディタリー/継承』
監督・脚本/アリ・アスター 出演/トニ・コレット、ガブリエル・バーン、アレックス・ウォルフ、ミリー・シャピロ、アン・ダウド 配給/ファントム・フィルム
2018年/アメリカ/上映時間127分
11月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。
©2018 Hereditary Film Production, LLC
物語で選ぶ編②
『キックス』
ここがムネアツなポイント!
・少年が大人の男に変わる瞬間の物語
・命より大切な“エア ジョーダン1”が奪われてしまう!
・単純な善悪とはならない展開が絶妙
・今後を期待させる若手監督
少年から大人の男へと成長する瞬間。『スタンド・バイ・ミー』など数々の映画で描かれてきたテーマだが、そのラインアップに新たに加えたいのがこちらの作品。ようやく手に入れた憧れのスニーカー“エア ジョーダン1”。それをチンピラに奪われた気弱な少年が、意を決して奪い返しに行く物語だ!
カリフォルニア、リッチモンドに住む15歳の少年ブランドン。イケてない日々とおさらばするために、貯めたお小遣いで最強のスニーカー“エア ジョーダン1”を入手する。すると、仲間からは羨望の眼差し、女子にもモテモテと人生が一変! 最高のときが訪れる。ところが、幸せな時間は一瞬でお終いに。地元のチンピラ、フラコに襲われてスニーカーを盗られてしまう。頭にきたブランドンは友達2人を連れて、命より大切な“エア ジョーダン1”を奪い返しに行く。
物語の前半は、青春モノ。ところが、スニーカーを奪い返しに行こうと決意するあたりから、ブランドンとカリフォルニアの闇の部分が交錯。バイオレンスな展開へと変貌していく。ただここからが見事な構成で、復讐のために銃を手に暴走するブランドンと、奪ったスニーカーを幼い息子にプレゼントするフラコが交互に描かれていく。観る側は、単純な善悪では判断できなくなってくるわけ。そこに本作の妙味があるのだ。
メガホンを取ったのは、長編映画が初となるジャスティン・ティッピング監督。自身の実体験をベースに、カリフォルニアに根付く熱狂的なスニーカーマニアのコミュニティやカルチャーを見事に描き出している。ブランドンの感情を表現するため随所に“宇宙飛行士”を登場させたり、スローモーションを効果的に使うなどそのセンスは独特。今後、規模の大きな作品での演出を見てみたい思わせる若手監督だ。
『キックス』
監督・脚本/ジャスティン・ティッピング 脚本/ジョシュア・ベアーン・ゴールデン 出演/ジャキング・ギロリー、クリストファー・ジョーダン・ウォーレス 配給/スペース・シャワー・フィルム/パルコ
2016年/アメリカ/上映時間87分
12月1日(土)より渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー。
©2016 FIGHT FOR FLIGHT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
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