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CULTURE カルチャー

2018.09.08

続出するパワハラに喝! あの人に観てほしい
麗しき大人たちの師弟映画5選

昨今、至るところで続出しているパワハラ問題。なんだか、みっともないですよね〜。指導者はもっと自分を律しないと。とはいえ明日は我が身。仕事にしろ趣味やスポーツにしろ、優れた師とはなんたるかを学んでおく必要がある。そこでコチラの作品を観てほしい。きっと、あるべき師弟関係が見えてくるはず!



『クリード チャンプを継ぐ男』
製作年/2015年 監督/ライアン・クーグラー 出演/マイケル・B・ジョーダン、シルベスター・スタローン

年長者が若者に手を差しのべる好例!
ボクシング映画の“伝説”『ロッキー』シリーズの中で、もっとも師弟愛に浸れるのがスピンオフ作品の本作。主人公ロッキー・バルボアは年齢を重ね、自らはボクサーとして完全引退状態。孤独な日々を送る彼の前に現れたのが、かつてのライバルにして盟友だったアポロ・クリードの息子、アドニスだった。

本作の師弟愛がドラマチックなのは、教える相手が自分の家族やアカの他人ではなく、親友の息子という微妙な距離感にあること。アドニスはアポロの死後に生まれたので、チャンピオンだった父の記憶がない。それゆえ、ロッキーは“教え子”との関係に葛藤する部分が多い。しかしながら、悩める若者に手を伸ばし、ともに闘い(ロッキーは重病が判明!)、あきらめない心を教えこんでいく。その様は、年長者としてあるべき姿を観る者に教えてくれる。あの”歴史の男”も、こうだったらよかった!?

自分が習得したテクニックやボクサーとしての精神を、後進の才能に継がせようとする姿に、『ロッキー』のファンならずとも胸が熱くなるはず。スタローンは、本作でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。アドニス役のマイケル・B・ジョーダンも迫真の演技で応え、師弟愛のドラマはじつにエモーショナル! 過去の『ロッキー』シリーズへのオマージュや、信じがたいカメラワークによる試合シーンも見どころだ。
あの人の改心度★★★★★
 

  

 


『マネーボール』
製作年/2011年 監督/ベネット・ミラー 出演/ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル

主観を排除するフェアな姿勢が大事!
メジャーリーグというスポーツ界を舞台にしながら、この映画が描くのは、監督とプレイヤー、先輩と後輩のような“体育会”的関係ではない。メジャーリーガーからスカウトに転身したブラッド・ピット演じるビリー・ビーンは、オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャーに就任。弱小球団で資金も少ないアスレチックスを立て直す奮闘が描かれる。

本作でビリーがこだわるのは、選手のオールマイティな能力ではなく、個々の得意な部分を輝かせること。データを駆使し、ホームランではなく”出塁率”を重視したりと、チームにとっての必要性を選手に“感じさせる”ことに成功する。勘を頼りにする古参スカウトの反発にも、ビリーはデータ主義の参謀ピーターと心中する覚悟で挑んでいく。ここの師弟関係に、実に熱いドラマが展開される。

客観的なデータをもとにするため、方針と合わなければベテランでもリストラするビリー。そのやり方は一見、非情とも取れる。しかし、弟子が自分の指導から離れると嫌がらせをしたり、自分の地元だけ有利な判定をするようなリーダーよりははるかに公平かも。データ主義が浸透すると選手たちも発奮。アスレチックスは結果的に奇跡の連勝をなしとげる。連勝記録の更新を怖くて見られないなど、“師”の側の心の弱さも描いていて、共感度は高いだろう。
あの人の改心度★★★★
 

  

 


『ドリーム』
製作年/2016年 監督/セオドア・メルフィ 出演/タラジ・P・ヘンソン、ケビン・コスナー

差別を排除し、正当に評価する理想の上司!
NASAに勤務する3人の黒人女性を主人公にした本作は、1960年代が舞台。最先端のNASAですら人種や男女の差別意識が色濃く、3人は仕事が優秀でも正当に評価されない。自分たちだけで闘っても、なかなかこじ開けられない扉。それを開いてくれるのが、ケビン・コスナー演じる理解ある上司ハリソンだ。

3人のうち、複雑な計算を得意とするキャサリンは、新たに配属された白人男性ばかりの部署で才能を発揮する。だが、有色人種用のトイレは800mも離れたビルにあり、コーヒーポットも白人用は使えないなど仕事に支障をきたす。そんな実状をハリソンが打ち破るエピソードが、あまりに爽快!

さらに黒人女性ばかりの計算部でスーパーバイザーを務めるドロシーは、自身の昇進問題と葛藤しながら、同じ部署のメンバーをまとめ鼓舞するなど、あちこちに上司と部下、師弟のエピソードが登場する。NASAを陰で支えた主人公たちの功績は、後の世代の道を切り開いただけでなく、この映画を観た現代のわれわれにも勇気を与えることになった。映画自体が“人生の師”として学べるレベルなのである。
あの人の改心度★★★
 

  

 


『小説家を見つけたら』
製作年/2000年 監督/ガス・バン・サント 出演/ショーン・コネリー、ロブ・ブラウン

進むべき道をやさしく教えてくれる師の姿に憧れる!
本当に自分はこの道を進んでいいのか? 才能はあるのだろうか? そんな迷いを感じたとき、冷静な判断と経験をもとに、やさしく背中を押してくれる。それが理想の“師”なら、本作の登場人物はまさに当てはまるだろう。16歳の黒人少年ジャマールが、友人にそそのかされて侵入した老人のアパートに、創作ノートが入ったリュックを置き忘れる。戻ってきたノートの文章は、赤字で添削されており、その老人がピュリツァー賞も受賞した有名作家だと発覚する。

作家に文章を教えてもらうジャマール。その関係は師弟関係の理想像だが、一方で文章が急速にうまくなった彼に、学校の教師は疑いの目を向ける。こちらの関係は、パワハラの様相もちらつく。同じ人生の師の立場として、作家と教師のコントラストが絶妙だ。本作はガス・ヴァン・サント監督で、やはり麗しき師弟関係を盛りこんだ名作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』を撮っている。2作とも、ラストシーンとその余韻が絶品なので、是非観比べてほしい。
あの人の改心度★★★★
 

  

 


『マイ・インターン』
製作年/2015年 監督/ナンシー・マイヤーズ 出演/ロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ

自分の上司が年下だったら? そんなときはご参考に!
どんな世界にも“教える”側と、“教えられる”側が存在するが、多くの人が経験するのが、仕事上での上司と部下の関係だろう。場合によっては、年齢とその関係が逆転することもある。アン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロ共演の本作は、まさにその典型例だ。

通販サイト会社の女社長ジュールズの下で働くことになったのは、シニア・インターン制度で採用された70歳のベン。仕事上ではもちろん社長と部下という関係だが、人生の経験は当然、ベンの方が豊富。仕事やプライベートで問題にぶつかるジュールズを、ベンは“人生の師”としてサポートする。

肝心なときは手を差し伸べるが、ふだんは一歩下がって相手を見守る。そんな“ジェントルマン”なベンの姿は、ある意味で理想の上司だろう。ベンを演じるデ・ニーロ自身と重ねると、さらに感慨深い。若い時代は過激な演技や役作りも得意としてきた彼が、年齢を重ねていぶし銀の存在感をみせる。アン・ハサウェイとの共演では、俳優同士の美しき師弟関係も感じられて、微笑ましい限り!
あの人の改心度★★★★★

  

 

 
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
Everett Collection/PictureLux/アフロ
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