Safari Online

SEARCH

CULTURE カルチャー

2018.08.24

盗作疑惑とは無縁の個性派作品!
監督の作風がよくわかる映画5選!

同じテーマでも、違う監督が撮れば仕上がりが全然違ってくるのが映画。

だから、監督の“らしさ”を味わうのも映画鑑賞の醍醐味だ。で、今回は、監督の強い個性がビンビン伝わってくる映画をセレクト。さらに、気に入った監督に出会えたら、同じ監督作品を追って観ていくのも面白い。最近では、ヒット作の盗作疑惑が話題になっていたりするけど、もっと“監督らしさ”があれば騒動にはならなかったかも!?
 

 


デヴィッド・フィンチャー監督/『ゲーム』
製作年/1997年 出演/マイケル・ダグラス、ショーン・ペン、デボラ・カーラ・アンガー

観客を操る達人のテクニックが際立つ1本
ハリウッドきっての鬼才監督であるデヴィッド・フィンチャー。その作風は『セブン』に象徴されるように、ダークで冷徹。人間の暗部に光を当て、やたらと後味が悪くて、個人的にお近づきになるのはなんだかコワい……。そんなイメージをお持ちではないだろうか?

しかし、ある日突然妻が失踪してしまう『ゴーン・ガール』は大局的に見えればブラックコメディだし、『ソーシャル・ネットワーク』は青春ドラマ。さらに、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』がファンタジーだし、『パニック・ルーム』はシンプルなスリラーだった。どれも映像的な工夫が凝らされていることや、有無を言わさぬ力強い演出技が冴えわたってはいることは共通していても、ジャンルは全く違っている。実はかなりバラエティ豊かなフィルモグラフィなのである。

そこでフィンチャーの凄みが詰まった快作としておすすめしたいのが1995年に公開された『ゲーム』だ。ネタバレが非常に懸念される内容なので紹介するのが難しいのだが、物語の発端は1枚の招待状。マイケル・ダグラス扮する主人公が、疎遠だった弟から「人生が一変する素晴らしい体験ができる」という“ゲーム”の参加権を贈られる。半信半疑のまま“ゲーム”に登録すると、周囲で次々と怪事件が起きるようになり、いつしか主人公本人が命の危険を感じるようになっていく……。

実はこの映画、フィンチャーが『セブン』で染みついた“怖い映画を撮る監督”というセルフイメージを思いっきり逆手に取っているのだ。『セブン』の監督なんだから、この先にはあんな展開、こんな展開が待ち受けているのでは?という観客の予想を利用して、思いがけないところまで連れて行ってくれる。そう、フィンチャーは、観る側の先入観すら織りこみ済みで、われわれ観客を操ってみせる達人なのだ。そして達人の手のひらでコロコロと転がされるのは、やたらと気持ちがいいものなのである。
 

  

 


クリストファー・ノーラン監督/『ダークナイト』
製作年/2008年 出演/クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー、マギー・ギレンホール

理論派にしか生み出せない傑作
クリストファー・ノーラン監督の作家性を表す言葉として“理論派”であることが挙げられる。物語のエモーショナルな要素も理論で解析するような作風は、ときに“理屈っぽい”と感じさせることもある。でも、“理論派”でしか撮れない傑作を1本挙げるなら、『ダークナイト』を置いてほかにない。

『ダークナイト』はノーランが監督したバットマン映画の2作めで、原作コミックにおけるバットマン最大の宿敵ジョーカーを登場させている。かつてはジャック・ニコルソンも演じたジョーカー役を、ヒース・レジャーがまったく新しいアプローチで怪演し、アカデミー助演男優賞に輝いた。

ノーランとレジャーが生み出したジョーカー像とは、カネや権力が目的ではなく、ただただ世の中をひっかきまわし、人間から醜い本質を引き出したいという超迷惑な“究極の愉快犯”。しかし犯罪が憎いという一心で、たった1人で悪党をボコって回るバットマンも、悪意と善意の違いだけで、やはり“愉快犯”とはいえないのか?

ジョーカーは、バットマンという存在が本質的に持っている矛盾をつまびらかにするカードの裏面である――という明確なコンセプトが『ダークナイト』の物語を哲学的かつ刺激的なものにしている。まさに“理論派”にしか構築できないノーラン節の真骨頂がこの映画には宿っているのだ。
 

  

 


ギレルモ・デル・トロ 監督/『シェイプ・オブ・ウォーター』
製作年/2017年 出演/サリー・ホーキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・シャノン

幅広い引き出しを見せつけた恐るべき作家性
メキシコが生んだ奇才監督ギレルモ・デル・トロが、アカデミー作品賞、監督賞など4部門を勝ち取った本作。それまでは怪獣/ホラー/特撮オタクといわれてきたデル・トロが、B級路線では収まらない幅広い引き出しを持っていることを証明した作品だ。

聾唖のヒロインが、政府の研究所で拘束されている半魚人と恋に落ちるという物語自体は、いかにも従来のデル・トロらしい。実際デル・トロは幼い頃に観たB級ホラー『大アマゾンの半魚人』が着想の元になったことを認めている。ところが本作のテイストはB級どころか黄金時代のハリウッド映画のよう。得意とするダークファンタジーの要素はそのままに、多幸感あふれる煌びやかなミュージカルやラブロマンスへのリスペクトやオマージュにあふれている。

デル・トロ自信、筋金入りのオタクであることを認めている。サブカル以外の王道のアートにも同じように惹かれてきたと発言しているし、ハリウッド映画の教科書のような『素晴らしき哉、人生!』を獲った名匠フランク・キャプラの大ファンでもある。『シェイプ・オブ・ウォーター』はデル・トロという作家性の奥行きを感じさせる、文字どおりの集大成なのである。
 

  

 


アルフォンソ・キュアロン監督/『ゼロ・グラビティ』
製作年/2013年 出演/サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー

観客をエモーショナルにさせるテクが光る!
ギレルモ・デル・トロと並び、メキシコが生んだ天才監督として絶賛を浴びるアルフォンソ・キュアロン。そのフィルモグラフィは、刹那な青春を描いた『天国の口、終わりの楽園。』から近未来SFの『トゥモロー・ワールド』。果ては『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』まで広範なジャンルで彩られている。

また『トゥモロー・ワールド』で驚異の長回しワンカット(実際にはいくつかのショットが合成されている)を披露するなど、映像の魔術師としても知られている。そんなキュアロンは「一体どんな映画作家なのか?」という問いに答えてくれるのが、キュアロンがアカデミー監督賞に輝き、同時に技術賞各部門を総なめにした『ゼロ・グラビティ』だろう。

人工衛星の修理作業中だった女性宇宙飛行士ライアンが、大量の宇宙ゴミの飛来によって宇宙空間に投げ出される。酸素はわずかしかなく、救出も来ない状況下での、決死のサバイバルが描かれるのだが、キュアロンは本作をSFとして撮ってはいない。あくまでも“宇宙”は極限状態を描くための背景に過ぎず、フォーカスされるのは、一度は生きる希望を失った女性の魂のサバイバルなのだ。

本作においても、冒頭17分の長回しワンショット(これも合成の産物だ)など得意技を繰り出しているが、決して技術のひけらかしではない。宇宙にいるライアンの感覚を観客に共有してもらうための17分であり、技術もテクもすべてはエモーショナルなドラマに引きこむためのお膳立て。技巧派のようで“熱い”監督なのである。
 

  

 


ウェス・アンダーソン/『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
製作年/2001年 出演/ジーン・ハックマン、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロウ、ビル・マーレー

描かれる“人の繋がり“こそ真骨頂
最新作であるストップモーションアニメ『犬ヶ島』を例にとるまでもなく、いい意味で精緻な箱庭的世界を構築するのがウェス・アンダーソン監督のスタイル。シンメトリーを多用する構図、表情豊かとはいえないキャラクターたちが醸し出すユーモア、おとぎ話のような浮世離れしたムードなど、実写作品、アニメ作品を問わず、これほど作風が一貫している映画作家も珍しい。

そのウェス・アンダーソン的世界観が完成されたのが長編第三作めの『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』だ。舞台はニューヨーク。登場するにはひと癖もふた癖もあるテネンバウム一家の面々で、特に3人の兄、妹、弟は、子供の頃は天才ともてはやされ、今ではそれぞれに問題を抱えた中年になっている。

この問題だらけの顔ぶれが、大きく成長することなく、そしてベタベタと仲良くするわけでもなく、でも“家族である”というゆるい絆にたどり着く。そんなそこはかとない優しさにこそ、アンダーソン的世界の魅力の神髄がある。

これは血の通った家族だけに適用されるわけではない。『ライフ・アクアティック』の同じ船に乗った仲間たち、『ムーンライズ・キングダム』の同じ島に暮らす住人たちもまた、同じように“疑似家族”としてゆるい絆を深めていく。価値観や性格がバラバラでも、人は繋がることができるのだと、アンダーソンの映画は教えてくれるのだ。 

  

 

 
文=米原とおる text:Toru Yonehara
初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!
SPONSORED
2025.11.25 NEW

初登場HYDEが〈ハリー・ウィンストン〉をまとう!
カリスマに似合うのはいつも最高峰の輝き!

一流は一流を引き寄せるとは、よくいわれること。ロックアーティストHYDEがまとったのは“キング・オブ・ダイヤモンド”として名高い、世界最高峰のジュエリー&ウォッチブランド〈ハリー・ウィンストン〉。常に最高を求め続ける両者が出会うと、どんな…

TAGS:   Fashion Watches
〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!さりげに違い出しできる大人の冬アウター
SPONSORED
2025.11.25 NEW

〈タトラス〉で見つけたここぞの1着!
さりげに違い出しできる大人の冬アウター

冬カジュアルの主役であるアウターは、さりげなく違いが出せる1着を選びたい。そこで注目すべきなのが、大人のための上質な冬アウターに定評のある〈タトラス〉。定番ベースのシンプルなデザインを基本としつつ、街ゆく人をハッとさせるさりげない“違い”…

TAGS:   Fashion
〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!大人の革小物はさりげなロゴ使いで!
SPONSORED
2025.11.25 NEW

〈サンローラン〉なら小さくても格上感あり!
大人の革小物はさりげなロゴ使いで!

普段、バッグや靴ほど目立たないが、意外とセンスを問われるのが財布などの革小物。大人ならシンプルながらも品があって、さりげない上質感のあるものが狙いめだ。となれば〈サンローラン〉の革小物を。小ぶりなアイコンロゴがピリッと効いた財布やカードケ…

TAGS:   Fashion
大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!冬カジュアルに効く品格バッグ!
SPONSORED
2025.11.25 NEW

大人にこそ持ってほしい〈フルラ〉の新作!
冬カジュアルに効く品格バッグ!

大人の冬カジュアルに欠かせない名脇役がバッグ。どんな着こなしにも似合う上質なバッグがあれば、気分よく外出できるというもの。そこでおすすめしたいのが、〈フルラ〉の新作として登場した“アーバン バックパック”。コートなら背負って、短丈ブルゾン…

TAGS:   Fashion
俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!
SPONSORED
2025.11.25 NEW

俳優・桜田 通が〈ベル&ロス〉の希少な限定モデルをつけこなす!
“赤き情熱”と“煌めく緑”の衝撃!

航空計器から着想を得た革新的なデザインが人気の〈ベル&ロス〉から、2本の限定モデルが登場した。情熱的な輝きを放つダイヤルの赤と闇夜にクールに浮かび上がる蓄光の緑。異なる魅力を宿す2本のパワーウォッチがファッションシーンでも注目を集める俳優…

TAGS:   Fashion Watches
機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!こだわる男のための次世代ワークブーツとは⁉
SPONSORED
2025.11.25 NEW

機能美が所有欲をくすぐる〈アシックス〉のワーキングシューズ!
こだわる男のための次世代ワークブーツとは⁉

男のカジュアルウエアは、ワークやミリタリーをモチーフにしたタフで骨太なアイテムが定番。それは服だけでなく、足元も同じだ。とはいえ往年のワークブーツなどでは、履き心地やスペック的に現代の暮らしにフィットしない!? ならば、〈アシックス〉のワ…

TAGS:   Fashion
“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!“上質”を贈りたい 大人のギフト!
SPONSORED
2025.11.25 NEW

“とっておき”を、自分にも、大切な人にも!
“上質”を贈りたい 大人のギフト!

クリスマスに忘年会、そしてニューイヤー……年末年始は、特別なギフトシーズン。頑張った自分へのご褒美に、大切な人に感謝を込めて、“とっておきの上質”を贈りたい。自分の身と心を一新させるようなワザありの逸品から、相手の顔が思わずほころぶ名品ま…

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。
SPONSORED
2025.11.18

素材感と職人技が光る〈アニアリ〉。
ミニマルに洗練されたジャパンメイドのトートバッグ。

上質なレザーのしなやかな感触と使い勝手の良さで支持を集めている〈アニアリ〉のバッグ。ミニマルで洗練されたデザインは、装いを自然に洗練されたものへと導いてくれる。また、確かな日本の職人技に裏打ちされた使いやすさと安心感が、使うほどに深まる風…

TAGS:   Urban Safari Fashion
建築家・クマタイチが〈バルミューダ〉で発見。豊かな暮らしをデザインする、加湿器の新しい選択。
SPONSORED
2025.11.14

建築家・クマタイチが〈バルミューダ〉で発見。
豊かな暮らしをデザインする、加湿器の新しい選択。

〈バルミューダ ザ・ストア 青山〉を訪れた建築家・クマタイチさん。暮らしに寄り添う建築を数多く手掛けてきたからこそ、関心を寄せたのは新しい加湿器“レイン”だ。ただ湿度を調整するだけでなく、暮らしを豊かに導くための機能や造形美を兼ね備えた“…

勝利を呼び込む〈タグ・ホイヤー〉の傑作3選!名作時計はファッション使いするのが決め手!
SPONSORED
2025.11.11

勝利を呼び込む〈タグ・ホイヤー〉の傑作3選!
名作時計はファッション使いするのが決め手!

2025年で創業165周年を迎え、そのうえ、22年ぶりにモータースポーツの最高峰である“F1”公式タイムキーパーにも返り咲いた〈タグ・ホイヤー〉。モータースポーツと密接な関わりをもち、勝利を象徴するウォッチとして君臨してきたそれは、時を経…

俳優・三浦翔平が着こなす〈エクスタイル〉の“アメスポ”スタイル!こだわりのスウェットでワンランク上の休日姿に!
SPONSORED
2025.10.29

俳優・三浦翔平が着こなす〈エクスタイル〉の“アメスポ”スタイル!
こだわりのスウェットでワンランク上の休日姿に!

ファッションモデル顔負けの長身と抜群のスタイルで、見るものを魅了する俳優・三浦翔平。幼い頃は水泳とバスケに打ち込み、現在はオフにサーフィンやゴルフ、ジムなどでアクティブに身体を動かすスポーツマンとしての側面も。そんな三浦翔平に〈エクスタイ…

TAGS:   Fashion
年末は〈エフピーエム ミラノ〉で特別な旅を。機能美と遊び心が光る上質トロリー。
SPONSORED
2025.10.31

年末は〈エフピーエム ミラノ〉で特別な旅を。
機能美と遊び心が光る上質トロリー。

高品質で優れたデザインのトロリーは旅そのものの満足感を上げてくれる大切な相棒。もちろん見た目だけじゃなく、使い勝手などの機能面も優秀なものを選びたいところ。そんな見た目と機能を兼ね備えたトロリーといえば〈エフピーエム ミラノ〉の“バンクコ…

TAGS:   Urban Safari Fashion

NEWS ニュース

More

loading

ページトップへ