映画『ナポレオン』は300年前の戦いを再現したスケールに圧倒される!
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名前があまりに有名すぎて、逆にその人がどんな運命をたどったのか、意外に知られていない……というケースがある。フランスの英雄、ナポレオンもそんな一人かもしれない。このナポレオンの生涯を、映画界のレジェンドともいえるリドリー・スコット監督が特大スケールで描いたとなれば、観逃すわけにいかない!
ナポレオンといえば、戦場での指揮官として類い稀なアイデアと才能を発揮。混乱するフランスで軍の総司令官から皇帝へと上り詰めた才人。つまり人生のターニングポイントには伝説となった戦闘があり、本作は“トゥーロンの戦い”、“アウステルリッツの戦い”、そして“ワーテルローの戦い”の3つを適所に配置。その合間に素顔のナポレオンのドラマを挟んだ絶妙な構成になっている。3つの戦いは、どれもが過去の映画では観たことのないビジュアルで迫ってくる。総勢8000人のエキストラに、カメラを最大で11台使って撮ったシーンがあるし、氷上での馬と兵士たちのバトルでは撮影のために凍らせた湖を作り上げたりもした。今から300年前の戦い方を、可能な限り実写で再現しようとしたスコット監督の執念に恐れ入るばかり。
ナポレオンを演じるのは『ジョーカー』でアカデミー賞を受賞したホアキン・フェニックス。予想どおりカリスマ性が全編で発揮されているが、英雄の意外な“裏の顔”にも本作はフォーカスする。それは妻となったジョセフィーヌへの深い想いだ。奔放な性格で浮気もするジョセフィーヌなので、ナポレオンは戦闘で遠征しても彼女のことが気になって仕方がない。しかも2人にはなかなか“世継ぎ”が生まれず、ナポレオンは苦悩する。妻に翻弄され、精神的な脆さもみせることで、映画を観るわれわれはナポレオンに感情移入していく。さらに後半は、ジョセフィーヌ側の切実さも浮き彫りになり、このあたりは女性の視点を忘れないスコット監督らしい。一大スペクタクルを通し、“人間”ナポレオンも描いた、見ごたえたっぷりの歴史絵巻だ。
『ナポレオン』12月1日公開
製作・監督/リドリー・スコット 脚本/デヴィッド・スカルパ 出演/ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、マーク・ボナー 配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2023年/アメリカ/上映時間158分