セレブになったら選びたい!?〈ロールス・ロイス〉レイス
富裕層は大きく分けて2種類に分類されるそうな。ひとつは代々譲り受けた膨大な資産を堅実に運用しながら郊外の城や邸宅を所有。お抱えの運転手に送迎をしてもらい、買い物は百貨店の外商にオーダーする、というオールドスクールな資産家。対して都心部の高層マンションに住み、欲しいものは自分で足を運んで手に入れ、どんな高級車でも自分で運転することを好むというセレブリティだ。
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後者が珍しいものではなくなりはじめたのは2000年代初頭のこと。そして、そんな顧客の声にやや先行する形で、2013年に誕生したのが〈ロールス・ロイス〉レイスだった。
写真はレイス ブラックバッジ
これまで同社の大口顧客であった前者のタイプが望む“ショーファードリブン”ではなく、「自分でハンドルを握りたい!」タイプの若い顧客に、コンパクトで2ドアの“カジュアルな〈ロールス・ロイス〉”であるレイスは、大いに歓迎された。いわゆる高級スポーツカーではなく、あの〈ロールス・ロイス〉を自分で運転するというコンセプトは、好奇心旺盛な新時代のセレブの心をぎゅっと掴んだのだ。
事実、乗ってみると独特の解釈がなされたレイスが持つ〈ロールス・ロイス〉味は唯一無二。現在は〈ビー・エム・ダブリュー〉傘下に入る同社だが、個性はオリジナルから微塵も失っていない。レイス、とはスコットランド語で幽霊とか生霊、という意味を持つけれど、そのシニカルな表現がピッタリとハマるような、独特にフワッとした浮遊感を持つ乗り心地なのだ。
写真はレイス ブラックバッジ
サーキットのような平滑、かつ厳しいコーナリング角度を持つようなシーンで乗ると、そのフワフワとしたサスペンションフィールが、コーナリング中でも保持されて、クルマでありながらクルマではないような、気がしてくる。「あれ? 今握っているのはクルーザーの舵輪だったかな?」とも思えるくらいだ。Gは一体、どこにいってしまったんだろう? な~んて具合。
さらに非日常感を掻き立てるのが、超ド級のゴージャスなインテリアの数々。レイスはそれまで最上級のファントムだけに許されていた車内プラネタリウムこと天井の“スターライト・ヘッドライナー”を採用した。光ファイバーをパンチングレザーの内側に配した光の演出のロマンチックなこと! これは、どんなカタブツの心をもとろけさせるに違いない。
そんなレイス、やはりデータ的にもやっぱり「売れている」のだ。2019年の〈ロールス・ロイス〉新車販売台数は創業116年で最高台数を記録。前年比25%アップを叩き出した。むろん、〈ロールス・ロイス〉初のSUVである“カリナン”が牽引しているところも大きいが、レイスの需要や、それに完全オーダーメイドのビスポークも注文が途切れないのだという。
これらグローバルな需要に応えるため、本社のあるグッドウッド工場にさらに大規模な投資を行ったという。一生一度は〈ロールス・ロイス〉でビスポーク? う〜ん、羨ましい!
★DATA 〈ロールス・ロイス〉レイス
●全長×全幅×全高:5280×1945×1505mm
●車両重量:2430kg
●ホイールベース:3110mm
●エンジン:6.6ℓV型12気筒ツインターボ
●最高出力:465kW(632PS)/5600rpm
●最大トルク:820Nm/1500~5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:後輪駆動
●税込み価格:3711万円