ゴールドウォッチはなにかと華美な印象が強く、一定の成功を収め、時計の遍歴を重ねたミドルエイジの“アガリ時計”といったイメージもあるかもしれない。けれども、それはもはや今は昔。近年、ゴールドウォッチはあらゆる年齢層のデイリーシーンにそつなく溶け込む、スマートな普遍性を増している。
ピアジェ ポロ 79は、まさにそんな昨今のゴールドウォッチの魅力や潮流を体現するモデルだ。蘊蓄は抜きにして、まずは全貌をご覧いただきたい。ケースとブレスレットがシームレスとなった流麗なフォルム。むしろ、全体がブレスレットとなったワンピースのアイテムといった方が適切かもしれない。
その端正な躯体には一律でポリッシュ仕上げのゴロドン装飾(水平の棒)が施され、シンプルながら芸術的な造形美が際立っている。18Kイエローゴールドの輝きが、格別の存在感を発揮している。だが、往年の(トレンドやファッションに関心を抱く若年層が無意識に敬遠する)ギラつくような派手さではない。
1979年当時の広告
しかしながらこのモデルのオリジナルが誕生したのは、1979年。当時勢いを奮っていたSS製の高級スポーツモデル、今で言うところの“ラグスポ”の市場戦線をブレークスルーするかのように〈ピアジェ〉が放った、画期的なゴールドウォッチなのだ。
1979年当時の広告
〈ピアジェ〉は1874年にスイスのラ・コート・オ・フェで創業後、ムーブメントメーカーとして地歩を固めた。時計ブランドとしてスタートするのは1943年からで、数多くの傑作を世に送り出したが、来歴でもっとも特徴的な要素は薄型ムーブメント、ひいては薄型時計のラインナップだ。同社は1957年に厚さわずか2㎜の手巻き式Cal.9Pを開発し、1960年には自動巻きにして2.3㎜厚を実現したCal.12Pを発表。薄型ムーブメントの旗手として時計シーンをリードしてきた。
1979年当時の広告
初代ピアジェ ポロが搭載していたのは、当時世界最薄のクォーツムーブメントCal.7P。1980年代にはさらに薄い1.95㎜厚のCal.8Pを搭載したモデルもラインナップし、先述の手巻き式Cal.9Pを採用したこともあった。つまり、ピアジェ ポロは〈ピアジェ〉のエッセンスを一身に宿したフラッグシップなのだ。
ピアジェ ポロは2016年にリローンチされ、モダンなSS製のモデルなどが各種展開されてきたが、創業150周年、ピアジェ ポロの誕生45周年の節目に、記念碑的な意義を持つ初代がデザイン、素材など当時の意匠を守って復刻となった。
ただ、サイズとムーブメントがモダナイズされている。ケース径は当時より4㎜アップの38㎜に。そしてムーブメントは同社最大の功績とも言える、1960年発表の自動巻き式Cal.12Pの直系であるCal.1200P1が搭載されている。Cal.1200P1は自動巻き上げのローターをムーブメント本体に埋没させることで厚みを抑えるマイクロローター構造を採用し、ケース厚7.45㎜を達成。巻き上げ効率を高めるためマイクロローターにも比重の高い18Kイエローゴールドを採用。サファイアクリスタル製のケースバックからエレガントなメカニズムを眺めることができる。
ケース径38㎜、自動巻き、18KYGケース&ブレス、5気圧防水。予価1060万円。2024年9月発売予定 ※現在店頭予約受付中(ピアジェ コンタクトセンター)
スリムなケースと、フレキシブルな一体型ブレスレットの相乗効果により、一般的には重みのある金無垢モデルながら着用感もすこぶるよい。つまり、実用的。そしてなにより、半世紀近くを経ても色褪せるどころかますますモダンな魅力を開花させているミニマル・デザインは毎日いろいろなシーンで使いたくなるはず。
もちろん値段はそれなりだけど、いつか手にする“アガリ時計”なんて目で見ないで、“現役世代”の段階で思い切って手に入れ、毎日のパートナーにしてしまうのがこのモデルの“正攻法”と言えよう。
●ピアジェ コンタクトセンター
TEL:0120-73-1874