●今月のビジネスセレブ
エトロ ジャパン代表取締役社長兼アジアパシフィック代表取締役
ファビオ・ストラーダ[Fabio Strada]
Profile
1968年、イタリア・ヴェネチア生まれ。ヴェネチア・カフォスカリ大学卒業後、マックスマーラ(イタリア)に入社。そして1998年、マックスマーラ ジャパン、2003年よりジョルジオ アルマーニ ジャパンへ。様々な役職を歴任後、2006年よりエトロ ジャパン 代表取締役社長に就任。2011年よりアジアパシフィック代表取締役も兼任している。
ジラール・ぺルゴ
トラベラー WW.TC フィナンシャル クロノグラフ
●愛用歴/約10年
●購入場所/日本の総代理店
●使用頻度/週に1、2回
ラグジュアリーなオーラを放つホワイトゴールドケースは42.5㎜というほどよいサイズ感。ケースバックはシースルー仕様。
「瞬時に世界の各都市の時間がわかるワールドタイム。現在はこのような状況なので海外へ出張する機会はありませんが、ミラノの本社やイタリアの家族、アメリカに住む友人などに連絡を取る際など、日本にいても必要で便利な機能です」
GIRARD-PERREGAUX[ジラール・ぺルゴ]
トラベラー WW.TC フィナンシャル クロノグラフ
スイスの名門マニュファクチュール〈ジラール・ペルゴ〉の、ワールドタイムとクロノ機能を搭載したコンプリケーション。“World Wide Time Control”を意味するこの“WW.TC”コレクションは現在、ディスコンとなっており、名品として伝説的な存在に。シックなスーツにマッチするエレガンスを漂わせながらも、モダンさも併せ持つ絶妙なデザインがスタイリッシュ。
エトロ ジャパンの代表取締役社長に就任してから15年目となるファビオ・ストラーダ。ファッションを愛し、クルマを愛するイタリアン・ダンディは、腕時計にも確固たる哲学を持つ。
「ただ単に時間を知るためなら、携帯電話で十分用が足りる今。私にとって腕時計は自分のスタイルをつくる大切なアクセントであり、パーソナリティを表現するものです。そう、多くの男性もそう思っているはずですが、女性にとってのジュエリーと同じですね」
はじめて自分の腕時計を手にしたのは6歳のときだった。
「キリスト教の重要な儀式のひとつ、聖餐の際、家族や親戚から時計をプレゼントされることが多く、私もそのタイミングで腕時計を貰いました。もちろん子供のものなので、そんな高価な時計ではありませんでしたが、とても嬉しかったことを覚えています」
現在所有しているのは、この〈ジラール・ペルゴ〉、社会人になってはじめて自分で買った〈カルティエ〉のタンクフランセーズ、そして〈ロレックス〉のデイトナの3本。すべてに思い入れがあるが、最も気に入っているのは、約10年前に入手した〈ジラール・ペルゴ 〉だ。
「この時計との出合いは12年前、〈ジラール・ペルゴ 〉と〈エトロ〉がコラボレートして、東京でファッションショーを開催したときでした。当日、〈ジラール・ペルゴ 〉の日本総代理店であるソーウインド ジャパンの社長が〈エトロ〉の服を着て、私は〈ジラール・ペルゴ〉の時計をお借りしてつけてイベントに臨むことになって、その際着用させていただいたのが、このトラベラー WW.TCフィナンシャル クロノグラフだったのです。とても気に入ったので欲しいと思ったのですが、ワールドタイムとクロノグラフを搭載したコンプリケーション、しかもホワイトゴールドケースなので、なかなかすぐに購入を決意できる価格ではなくて(笑)」
後ろ髪を引かれながら、イベント終了後に返却したという。
「だけど忘れられず、結局その2年後に購入しました。〈ジラール・ペルゴ 〉と〈エトロ〉はとても似ているところがあるんですよ。クオンティティよりクオリティの高さを追求するブランドとしての美学ーーたとえば〈エトロ〉だと、プロダクトの本質である生地自体のクオリティはいっさい妥協しません。一方、〈ジラール・ペルゴ 〉は時計ブランドとしての本質となるムーブメント製作に重きを置いてウォッチメイキングにあたっている。そんな価値観に共鳴しました」
その際、〈ジラール・ペルゴ 〉の他のモデルと迷うこともなかった。
「仕事柄、海外出張がとても多いので、ワールドタイム機能にとても惹かれたんです。また、それまでステンレススティールの時計しか持っていなかったので、ホワイトゴールドの美しいケースというのも大きな魅力でした」
2年越しで思いを貫き、自分のものにしたワールドタイム。実際に使っていく中で、また改めて〈エトロ〉というブランドとの親和性の高さを実感してきた。
「〈ロレックス〉のデイトナも気に入っていて、シーンやコーディネートによって使い分けていますが、〈ジラール・ペルゴ 〉は〈ロレックス〉ほどメジャーではない分、エクスクルーシブ感があって、そこがたまらない。時計というのは誰かにアピールするものではなく、大切なのは自分が満足できるか? ということ。私はムーブメントのメカニズムに詳しいわけではないけれど、肌でその価値を感じることができる時計なんです。そしてそれは、〈エトロ〉の上質なテキスタイルがもたらす感覚と通じます」
クリエイティブ・ディレクターのキーン・エトロによる〈エトロ〉のメンズコレクションは、メイド・イン・イタリーのテーラリングと現代的な美学を融合させた「ニュートラディション」を提唱している。ファビオが愛用するワールドタイムは、そんな「ニュートラディション」なコーディネートにも自然にマッチし、静謐な迫力を添える。
「私はワインやシャンパンが好きなのですが、時々、それらも時計と似ているなと思うことがあるんです。たとえばある夜、ヴーヴ・クリコで乾杯して、次はドン・ペリニヨン、その次はクリスタル……とグラスを重ねていったら、もうその夜は最初のヴーヴ・クリコには戻れません(笑)。それと同じように、これから先にもしまた時計を買うなら、つまりこれ以上のモデルしか考えられないんです。〈オーデマ ピゲ〉か〈パテック フィリップ〉の永久カレンダーかなと漠然と考えていますが(笑)、いつか、なにかとびきりいいことがあったら、その記念に手に入れたいですね」
イタリアの文化を伝えるファッションメゾン
1968年創業のイタリア・ミラノに本社を置くラグジュアリーファッションメゾン。エトロの代名詞は、涙の雫の形をした、生命の樹とよばれる植物がモチーフであるペイズリー。テキスタイルや皮革製品など高品質なアイテムによって世界的メゾンに。近年はクラシカルなイメージとはまた異なるモードなコレクションを展開し、幅広い年代から支持を獲得。大きな企業グループには属さず、創業以来イタリア独自のファミリービジネスを貫き、文化活動にも積極的に取り組んでいる。
雑誌『Safari』1月号 P220~221掲載
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photo : Koki Marueki(BOIL) text : Kayo Okamura