ArtSticker presents ART INTO LIFE
超絶技巧による精緻な絵画の中に、アーティストの意外な意図が!?
現代美術に造詣の深い塚田萌菜美さん(ArtSticker)にナビゲートいただき、アート初心者の方にもわかりやすくアートの見方を解説するこの企画。今回は、学生時代からバスケットボールに夢中だったという完全体育会系の川端健太さんに、作品の制作方法などを伺いました。
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制作に2年を費やした大作。今後この赤ちゃんの成長を追う
塚田(以下T):作品に光沢を出すこと、そして、近作で目元を歪ませることが多いのはなぜですか?
川端(以下K):絵画はその時代の状況を反映するため、今の特徴を捉えることはアーティストとしての重要な役割のひとつ。自分たちは今、ほとんどの情報をスマートフォンなどの液晶画面を通じ、獲得しています。また、オンライン上のやりとりでは、相手は実際に目の前にはいませんが、目を合わせて会話ができます。また、画面をオフにすると、そこには自分を見つめる自分の目が浮かびます。こうした効果についての考察も作品に反映しています。
T:作品で赤ちゃんを描いたのは、どのようなきっかけがあったのでしょう?
K:対象人物の生涯を通して取材し、絵画として残していきたい。ライフワークとしてこちらの赤ちゃんの成長を追っていきます。
T:今後、どんな作品を作りたいですか?
K:もっと大きな絵を描きたいですね。みなさんも、大きなものを見たとき、「衝撃が大きくて言葉が出ない」といった体験はありませんか? そんな体験をしてもらえるような、大きなサイズのものを手掛けたい。また、モノクロで描きつつ、色味を感じるよう な表現に到達したいです。
作品の上から独特のブロック状のシルクスクリーンでツヤを出すことで、いい意味での違和感が生まれる
使用するキャンバスにも様々な下地作りを試行錯誤
ツヤ加工する前の作品。光沢は鉛筆による細部にではなく、全体へ視線誘導する効果を生む
使用する塗料も、成分配分を微調整しながら最善のものを製作している
川端健太
画家。東京藝術大学大学院博士在籍。現代的な視覚体験や感覚、個人の記号化や、インターネットの普及に伴う人とのコミュニケーションの多層化など、人と人との情報伝達を間接的にしていると思われる隔たりについて考え絵画彫刻を制作している。2019年に東京藝術大学大学美術館に収蔵。O氏記念奨学生、クマ財団4期奨学生、佐藤国際文化育英財団奨学生、神山財団奨学生。東京藝術大学美術学部を油画首席、学部総代として卒業。
ArtSticker
塚田萌菜美
アートスペシャリスト。成城大学大学院文学研究科美学・美術史専攻博士課程前期修了。SBIアートオークション株式会社でオークショニア・広報・営業を担当した後、現在はArtStickerを運営する株式会社The Chain Museumにて、キュレーションやアドバイザリーを担当している。
『Urban Safari』Vol.29 P34掲載
photo:Shungo Tanaka(MAETTICO) supervision:Monami Tsukada(ArtSticker) text:Tsuyoshi Hasegawa(TABLE ROCK) composition:Hiroyuki Horikawa