【11選】春の訪れを探しに出かけよう!
まだまだ厳しい冬の寒さが続く日々。けれど、地面の下や木々の内側では、新たな季節の胎動がはじまっている。今回の目的地は、そんな春を告げる花の名所や、春の訪れを祝う祭り。いつもより明るめの服に着替えて、春を探しに旅しよう。
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- 春夏秋冬 季節のトラベラー! vol.10
目覚めのスイッチをオン
寒さが厳しい日々が続いても、2月4日の立春を過ぎれば暦の上ではもう春。ヨーロッパではアーモンドやミモザが、日本では梅やミツマタが開花し、寒々しかった冬景色が一転する。そんな自然界と調和するように、冬の終焉を祝う祭りも世界各地で行われる。なかでも、1日の昼夜の時間がほぼ同じになる春分の日は古来、種まき時期の目安とされ、五穀豊穣を願うことも多い。
こうした花々の開花や伝統的な祭りのおかげで、肌寒い日々の中でも春の訪れを実感できるわけだが、日本にはひときわ激しい春の知らせが存在する。それは春雷。3月から5月頃にかけて寒冷前線の通過によって発生する雷で、俳句では春の季語にもなっている。
実はこの雷、空中放電により大気中の窒素を分解し、雨とともに窒素酸化物となって地上に降り注ぐことによって植物の肥料となるため、めでたい現象とされてきた。また雷鳴に驚いた虫たちが冬眠から目を覚まし、地上に出てくることから“虫出しの雷”の異名を持つ。動植物にとって、まさに冬から春へ切り替わるスイッチの役割を果たしている。
人間は雷に打たれるわけにはいかないが、寒空に咲くピンクや黄色の花々やダイナミックな祭りは、縮こまった冬のカラダから目覚めるきっかけに。ひと足早い春を探しに出かければ、新たな芽吹きのスイッチを入れられそうだ。
スペイン
桜と同様に、海外では春の来訪を告げる花として知られるアーモンド。ソメイヨシノより少し濃いピンク色の花が咲く。写真は、南部アンダルシア地方のアロサイナ村。スペイン産のアーモンドは風味豊かで、なかでも〝マルコナ〞はアーモンドの女王と呼ばれて高値がつく。
日本
伝統園芸文化のひとつ、“しだれ梅”の名木が並ぶ庭園。通常の梅とは異なり、職人の剪定により柳のように仕立てられた枝にびっしりと花がつく。今年は2月17日~3月下旬まで、開花中のみ一般公開予定。園内に広がる甘酸っぱい梅の香りも同時に楽しみたい。
日本
普段は深海に生息するホタルイカだが、春の産卵期になると海面近くまで浮上。海流によって波打ち際に打ち上げられた際に青白く発光し、“ホタルイカの身投げ”と呼ばれる幻想的な光景を作り出す。見頃は例年、3、4月の新月の頃。漁を見学する海上観光も人気だ。
イギリス
地上10㎝ほどの高さに咲く釣鐘型の花で、遠目にはその名のとおり雪景色のよう。雪の中からも顔を出し、欧州に早春を告げる。2月2日の聖燭祭に教会の祭壇に飾る習慣があり、今でも修道院の庭でよく見られる。花びらは可憐だが、球根には強い毒性があるので注意。
ハンガリー
ハンガリー南部の街、モハーチで毎年2月に開催される奇祭。伝統の覆面をしたブショーたちが街を練り歩き、冬を擬人化した藁人形を燃やして春来を祝う。同祭はかつてオスマン帝国の侵攻を撃退した際の逸話を再現し、現代に伝えるユネスコ無形文化遺産でもある。
メキシコ
チチェン・イッツァ遺跡では年に2回(春分・秋分の日)、太陽が傾くと階段上に蛇の胴体のような影が現れ、階段下にある農耕の神ククルカンの頭部と合体する。種まきや収穫時期の目安とする説があるが、詳細は未解明。“新・世界七不思議”のひとつにも数えられている。
クルディスタン地域
ペルシャ語で“新しい日”を意味し、イラン暦の元日(北半球では春分の日)前夜から、儀式で火を焚いたり、焚き火の上を跳んだりして不幸や災難を追い払う。イラン以外のペルシャ語文化圏でも盛大に祝われており、1年の豊穣を願い、家族で麦料理を食べることが多い。
インド
北インドやネパールに起源をもつ、春の訪れを祝う祭り。現代の色粉や色水は化学製品由来がほとんどだが、元来はターメリックやインディゴなど天然色素を使用し、各色とも神聖な色とされていた。開催時期はヒンドゥー暦に基づいて決定。2024年は3月25日に開催予定。
フランス
南仏では毎年1月下旬から2月頃、“冬の太陽”の異名を持つミモザが開花。130㎞にわたって続く見どころは“ミモザ街道”と呼ばれる。この街道沿いのラ・ナープルで開催されるミモザ祭りでは数トンもの花がパレードで披露され、山車の飾りや投げ合いに使われる。2024年は2月18日に開催予定。
スペイン
スペインに春を告げる祭りで、国内3大祭りのひとつ。巨大なものまである張り子人形ファジャや献花のパレード、毎日14時の爆竹ショーなど見どころが多い。ハイライトは最終日の人形焼き。人気投票1位の人形だけ博物館に殿堂入りし、そのほかはすべて焼き払われる。
日本
栃木県茂木町南部の焼森山では、ミツマタが3月から4月にかけて見頃を迎える。その群生地には甘い香りが立ち込め、あまりに幻想的なことから“妖精の森”と呼ばれることも。3つ又に分かれた枝の先に黄色い花を咲かせ、木の皮は和紙の原料として最高品質を誇る。
雑誌『Safari』4月号 P105〜110掲載
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