【レッドウッド国立&州立公園】地球上で最も高い木が支配する北カリフォルニアの静かでストイックな森と海岸
カリフォルニア北部の海岸沿いに鬱蒼とした深い森が広がる。森を支配するのは空に突き出るほかより遥かに高い大樹、レッドウッドだ。プレーリーには雄大なエルク、沖合には巨大なクジラが姿を現す。
- SERIES:
- アメリカ ナショナルパークへの旅! vol.12
- TAGS:
- アメリカ ナショナルパークへ… Stay&Travel
カリフォルニア州
レッドウッド国立&州立公園
深い森には80mを超えるレッドウッドの大木が群生する。雨と霧が多いため、森を構成する脇役は多様なコケやシダだ。トレイルを歩くうちに、おとぎの世界に迷い込んだような錯覚に陥る
カリフォルニアと聞いて、どんな風景を思い描くだろう。さんさんと太陽が降りそそぐビーチと軽快な音楽だろうか。それはLAを中心とする南カリフォルニアのイメージとしては正しい。しかし、サンフランシスコ以北の北カリフォルニアには、全く違う風景が広がる。
南カリフォルニアの木がパームツリーなら、北カリフォルニアのシンボルはレッドウッドだ。鬱蒼とした大木の森はひんやりと涼しく、霧や小雨がよく似合う。近縁種であるセコイアが地上最大の生物なら、レッドウッドは世界最長の高さを誇る。セコイアがシエラネバダ山脈の2000mに棲む一方、レッドウッドは北カリフォルニアの海岸地帯に生きる。似ていて異なる2種の巨樹だ。
西部開拓が西海岸に到達した19世紀、レッドウッドの森は北カリフォルニアを完全に支配していた。しかし、町を作るために美しい木は大規模伐採の犠牲となった。20世紀になり、カリフォルニア州と環境保護団体がレッドウッドを守る活動を起こし、26の州立公園を設立。その最大の成果がレッドウッド国立公園と3つのステートパークが一体となった大きな保護エリアとして結実した。
4つの公園を南北に貫く101号線はレッドウッド・ハイウェイと呼ばれ、深い森が続く。この道をえんえんとドライブするだけでも価値がある。北はオレゴン州とのボーダーで、ここがレッドウッドの北限となる。
バラエティ豊かにデザインされたトレイル歩きも楽しい。5月にはピンクのしゃくなげ、秋は落葉樹の紅葉が森を彩る。また、公園北部のプレーリー・クリーク・レッドウッドはエルクの生息地。秋の繁殖期に遭遇率が高くなる。
海岸は静かなビーチや砂丘が広がり、高台にはホエールウォッチングの好ポイントがある。最盛期は12~4月だ。
雄大な体格のルーズベルト・エルク。大きな角は迫力満点だ。繁殖期を迎える初秋に姿を見るチャンスが高くなる
幻想的な世界を作る!
旅のはじまりはビジターセンター
レッドウッド国立&州立公園は、3つの州立公園(SP)と一体になって運営されている。SPは北からジェデダイア・スミス・レッドウッドSP、デルノルト・コーストSP、プレーリー・クリーク・レッドウッドSP。入園料無料という点も、ほかの国立公園と異なる。まず、ビジターセンターで無料のマップを手に入れるのがセオリーだ。
キャンピングカーで海を眺める至福時間!
パークは約80㎞の長い海岸を有している。その間に大きな街はなく、ビーチ、クリフ(崖)、ラグーン(洲)が静かに連なっている。南カリフォルニアとは異なる、自然だけを楽しむ人たちが集まってくる。海岸沿いにはオーバーナイトのステイができるキャンプサイトもある。北カリフォルニアのストイックな海を見ながら、一晩を過ごすのもいいだろう。
地球上で最も高い木レッドウッド!
地球上で最も高い木、それがレッドウッドだ。高さの記録は115.55mとされパーク内には80m以上の個体も多い。樹齢1500年を超える偉大な木もある。北カリフォルニアの海岸沿いのみに生息するのも特徴。開拓期に多くの木が伐採され、サンフランシスコはじめ多くの街がレッドウッドで作られた。現在は国立公園を中心に保護され個体を増やしている。
迫力満点のホエールウォッチング!
カリフォルニア州の沖合は寒流が流れている。その流れに乗って多くのクジラやイルカがアラスカ沖のベーリング海からバハカリフォルニアにかけて子育ての旅をする。レッドウッド国立&州立公園にはホエールウォッチングの絶好のポイントが点在する。特にクラマス川河口のオーバールックは目撃率が高い。12月から4月は巨大なシロナガスクジラを見るチャンスだ。回遊するコクジラも見られる。双眼鏡を忘れずに持っていこう。
草原を埋めつくす美しい花の絨毯!
クラマス川近くの草原ではルピナスの花の群生が見られる。ルピナスは砂地や斜面など、ほかの植物が嫌うところに生きるため一面の群生となる。また、人工的な焼き畑を行った2年後にスーパーブルームが起こることがわかっている。近年では1999年と2007年に起こった。見ごろは5月半ばから6月と短いが、紫、青、白の花の絨毯は一見の価値あり。ルピナスの草原はウサギ、鳥、小動物のサンクチュアリでもある。
電話:+1-707-464-6101
URL:https://www.nps.gov/redw
開園:年中無休
入場料:無料
国立公園指定:1968年10月2日
面積:約534㎢
旅の準備
サンフランシスコから530㎞と遠い。余裕があれば北カリフォルニアのほかの見どころとセットに。レンタカーでの移動が必須なうえ、宿泊施設も限られている。
旅のヒント
見どころが海岸沿いと内陸部に分かれている。地図をしっかりとチェックして、事前にルートを検討しておこう。レストランや売店、ガソリンスタンドも少ない。
注意点
気温は1年を通じて5~15度と涼しい。雨や霧も多いため、ジャケット、レインウエアが必要。森のトレイルは初心者向けでもしっかりしたシューズを準備。
ベストシーズン
夏は道やパーキングが混雑するので春秋がおすすめ。5月から6月上旬はピンクのしゃくなげが森を彩る。秋の紅葉も美しい。ホエールウォッチングは12~4月。
行き方
サンフランシスコ、ポートランドからはいずれも約530㎞、6~7時間のドライブ。最寄りの町、クレセント・シティには飛行機の便がある。
旅に関するオススメ記事はコチラ!
◆壮大な景色がすぐ目の前! 眺めのよいホテル!
◆海リゾートが呼んでいる!
◆映画を巡る旅に出よう!
◆クルマで“オーベルジュ”へ出かけよう!
雑誌『Safari』5月号 P244~247掲載
“アメリカ ナショナルパークへの旅”の記事をもっと読みたい人はコチラ!
●『Safari Online』のTikTokがスタート!
こちらからアクセスしてみて!
text : Shintaro Makino photo by AFLO