愛する家族のおかげで新しいチャレンジができる
サーフィンをはじめ、モーターサイクル、スケートボードなど趣味の延長でプロフェッションを極めるスコッティ・ストップニック。プロサーファーでありながら、モーターサイクルの分野でも名を馳せ、自身のクルーでありブランド〈サイクルゾンビーズ〉のリーダー格として活躍。今回は、そんな彼の半生を紹介しよう。
●今月のサーファー
スコッティ・ストップニック[SCOTTY STOPNIK]
多くのサーファーがそうであるように、スコッティもまた幼少の頃から海に通い、サーフィンをはじめたひとりだった。はじめはキッズ用のボードに乗って練習をし、徐々にロングボードやミッドレングス、ショートなどオールマイティに乗りこなすようになったという。
「サーフィンをはじめたのは6歳頃かな。それまでは近所の友人とスケボーで遊び、横ノリの面白さを知ったよ。そのせいかパドルアウトしてすぐにボードに立てた。サーフィンのコツはわりと早く掴んだね」
スコッティが波乗りをはじめたのと同時期、弟のターキーやタイラー、いとこのチェイスらも波乗りをはじめ、気がつけばサーフィンにどっぷりのめりこんでいた。
「学校から帰ってくると、波があれば海へ行って陽が暮れるまで波乗りし、波がなければ近所でスケボーや、BMXなどの自転車を力尽きるまで乗りまわしていたよ」
ハンティントンの近くで育ったスコッティ。この一帯にはサーフスポットが多くあるが、なかでもボルサ・チカビーチは昔からよく通っているホームポイント。波乗りの後は海の目の前のパーキングでスケボーを楽しんだそう。クルマの免許を取った16歳以降は、弟やいとこ含め、仲間たちとよりよい波を求めて遠出もするように。そんな、波乗りに夢中の10代を過ごしたスコッティ。当時は大会にも出場しほかのサーファーと競うことも楽しんだ。しかし、現在はフリーサーファーとして波乗りそのものを楽しむというスタンスに転向。今では、多くのサーフブランドやアパレルブランドはもちろん、ヘアワックスブランドや、アウトドアブランドなど、多岐にわたるブランドのアンバサダーとして活躍している。
とはいえ、スコッティのサーフスタイルが変化したわけではない。彼のライディングは昔と変わらずキレがよくアバンギャルド。たとえば、メローなイメージのロングボードだが、予想外のタイミングで大胆なボトムターンを仕掛けたり、ワイプアウトする際のアクションにも華がある。そして、そんな自由なスタイルはモーターサイクルにまたがっているときも同じ。彼が時折披露する、バイクのシート部分に両脚で立ちサーフボードのように乗りこなす独特のアクションは、水の中でなくとも“サーフィン”を楽しむという、既成概念にとらわれないフリーダムな彼のマインドを象徴しているといえるだろう。
いまや中堅としてカリスマ度を増してきたスコッティ。それでもスポンサー主催のトリップは最低でも年に2~3回はあり、過密なスケジュールをこなしているという。
プロサーファーとして長年活躍しているスコッティだが、彼を語るうえでバイクも外せない重要なファクターだ。モーターサイクル好きが高じて、彼の父(通称、ビッグスコット)を中心にスコッティ、そして彼が幼少期から一緒に波乗りへ行っていた次男のターキー、三男のタイラー、いとこのチェイスを中心に構成されたのが、〈サイクルゾンビーズ〉だ。
ビッグファミリーで構成されたモーターサイクル集団であるが、そもそも〈サイクルゾンビーズ〉とは“古いモーターサイクルを廃車状態から蘇らせる”という意味。いまやリビルドしたオリジナルのモーターサイクルにまたがり仲間とツーリングするだけでなく、販売も行っている。現在スコッティの自宅近くには大きなガレージが設けられ、大量のバイクを収納するショールームのようになっている。そもそもスコッティがバイクにまたがりはじめたのは10代の頃。バイクマニアでビルダーとしても名高い父の影響だったという。自然とメカニックやビルドのスキルを身につけていき、父を筆頭に家族で〈サイクルゾンビーズ〉をはじめるに至ったのだ。
「スワップミートで安く手に入れたヴィンテージやユーズドのパーツを集めてリビルドしているんだ。タイムレスなアイテムを組み合わせてクールなスタイルに仕上がったときは、静かに興奮するね」
今では多くの顧客を抱え、日本からもわざわざオーダーしに来るマニアがいるほど。いつの間にかオリジナルの服も人気に火がつき、日本でも一部セレクトなどで購入可能。趣味からはじまった〈サイクルゾンビーズ〉が大きなムーブメントになったのも、ひとえにスコッティの“好き”を突き詰める力にあるかもしれない。
最近赤ちゃんが生まれ、3女1男の父になったスコッティ。待望の男の子に家族全員新たな興奮に満ちていた。かつてはスコッティのマニアックなこだわりが随所にちりばめられていた家の内装もリフォームされ、まるでショールームのようにすっきりとしていた。
「家族がどんどん増えているからね、大きなスペースが必要になったんだ。ここなら食事をしながら、リビングで遊んでいる子供たちの様子もチェックできるし、家族連れのゲストも招いてちょっとしたパーティも可能だよ」
すっかり父としての威厳を放っているスコッティだが、忙しい日々は変わらない。朝は家族と朝食をとった後に、波チェック。波がよければ、近くの海でサーフィンをして昼前には帰宅。そこから自宅近くのガレージに向かい〈サイクルゾンビーズ〉の仕事に精を出す。モーターサイクルのメンテナンスやクライアントとの打ち合わせ、それにオリジナルの在庫チェックからデザインまで行う。実は、父ビッグスコットもここでメカニックとして働いているので、案件によっては父子で相談しながら進めることもあるのだとか。
「自宅に戻れば最愛の妻リンジーと子供たちが迎えてくれるのがなによりの幸せ。みんなで夕食をとってその日の出来事を話し、いろんな話題を家族で分かち合う時間が心の糧になるんだ。それが、サーフィンやモーターサイクルを突き詰め、仲間との絆を深める原動力でもある」
そう笑顔で語るスコッティ。いつの間にか素敵な父親として、また次世代のサーファーやライダーに影響を与えるリーダーとして、カリスマ性が一段と高まったように思えた。
ホームポイントはココ!
ボルサ・チカ[BOLSA CHICA]
ハンティントンビーチの海岸沿いにあり、ボルサ・チカ生態保護区にほど近い。3マイルほど続くビーチブレイクにレイドバックした空気感でロングボーダーや初心者に人気だが、サイズによってはショートボードも楽しめる
雑誌『Safari』7月号 P220・221掲載
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